■要約1. 東京都区部に集中投資、平和不動産のサポートが大きな強み平和不動産リート投資法人 (T:8966)は、平和不動産 (T:8803)グループの投資法人であり、中小規模の事業所数が多く、人口増加傾向も続く東京都区部を中心に、オフィス及びレジデンスに集中的に投資する複合型REITだ。
全国各地の証券取引所やオフィスビルを所有・賃貸し、不動産開発、宅地分譲やマンション分譲、ショッピングセンターなどのデベロッパー事業を幅広く展開する平和不動産の経験とノウハウを最大限に活用できることが、同REITの大きな強みである。
2. 2019年5月期の分配金は7期連続でスポンサー変更後の最高値を更新2019年5月期は、営業収益6,382百万円(前期比2.7%増)、営業利益3,036百万円(同3.2%増)で、期初予想をすべて上回った。
資産入替が大きく寄与したほか、既存物件でも稼働率の上昇、賃料単価の増加によって収益拡大が継続した。
売却益等を除く実力ベースの決算が好調であったことから、分配金を2,425円/口(前期比75円増)とし、7期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した。
分配金支払後の内部留保残高(一時差異等調整積立金残高等)4,607百万円、繰越欠損金残高187百万円を有することが、将来の安定的な分配金支払いを可能にしている。
3. 2019年11月期、2020年5月期も高水準の分配金を予想2019年11月期は、営業収益6,097百万円(前期比4.5%減)、営業利益2,733百万円(同10.0%減)を、2020年5月期は、営業収益6,160百万円(前期比1.0%増)、営業利益2,756百万円(同0.9%増)を予想する。
三田平和ビル(底地)の譲渡益がはく落するものの、順調な収支見通しの改善を見込む。
すなわち、外部成長戦略では、2020年5月期初にHF仙台長町レジデンスの取得を予定する。
内部成長戦略では、オフィス・レジデンスともに、賃料増額改定の進展を見込む。
財務戦略では、引き続き安定した金融環境のもと、低い金利調達コストを見込んでいる。
以上から、2019年11月期の分配金は2,450円(前期比25円増)、2020年5月期も2,450円と、高水準を予想している。
4. 中期目標では分配金2,500円、資産規模2,000億円を目指す中期目標では、分配金2,500円、資産規模2,000億円を目指す。
分配金2,500円は、2020年11月期に達成する計画である。
分配金の目標達成に向けては、資産の入替、賃料増額改定、諸費用の削減等を一つひとつ着実に積み重ねていくことで、継続的かつスピード感を持った分配金成長につなげる。
また、潤沢な内部留保を活用した分配金の増加も期待できる。
一方、資産規模の拡大については、現在は不動産価格が高騰しているため無理に新規取得をせず、入れ替えを中心に優良物件に投資する方針である。
5. 分配金の増加に伴い、投資家の評価も高まると予想する同投資法人の投資口価格は上昇傾向にあり、その結果、2019年7月25日現在のNAV倍率(1口当たり投資口価格/1口当たりNAV)は1.11倍と、オフィス・レジデンス複合型REITの平均水準にまで上昇している。
ただ、入替戦略の推進、賃料増額改定、キャップレートの低下などに伴い含み益は成長を続けており、今後も分配金の増加が持続すると見込まれることから、投資家の評価はさらに切り上がると予想する。
さらに、同投資法人は環境認証の取得にも注力しており、サスティナビリティへの取り組みも投資家の評価が高まる一因と考える。
■Key Points・東京都区部を中心とするオフィス・レジデンス複合型REITで、平和不動産のサポートが大きな強み・2019年5月期は資産入替が大きく貢献して、実力ベースの決算は好調であり、分配金は7期連続でスポンサー変更後の最高値を更新した・2019年11月期、2020年5月期は譲渡益はく落の影響を受けるものの、順調な収支見通しを受けて、高水準の分配金を予想する・中期目標では、運用資産の着実な成長と中長期的な安定収益の確保や潤沢な内部留保の活用により、2020年11月期までに分配金2,500円を目指す。
資産規模は中長期的に2,000億円を目指す・継続的な分配金の増加やサスティナビリティへの取り組み等を背景に、投資家の評価はさらに高まるとみる(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)