[香港/ロンドン 28日 ロイター] - 英金融大手HSBC (L:HSBA)が発表した第3・四半期決算は税引き前利益が18%減と、予想以上の減益となった。収入の見通しが厳しく、主要財務目標を達成できないと予想。来年初めまでに新たなリストラ策を発表する方針を示した。
米中貿易摩擦、英国の欧州連合(EU)離脱問題、金融緩和の波に加え、収益の大半を稼ぎ出すアジアでは香港の抗議デモが長期化し、業況は悪化している。
第3・四半期の税引き前利益は48億ドル。前年同期は59億ドル、同行がまとめたアナリスト予想は53億ドルだった。
証券会社KBWのアナリストは「全般に悪い内容」としたうえで「ただ、これで経営陣がようやく不振事業に対処する気になったのは良いことだ」と述べた。
就任後初の決算発表となったノエル・クイン暫定最高経営責任者(CEO)は「第3・四半期は厳しい環境の下、特にアジアなど一部の事業がよく持ちこたえた」としながらも、大陸欧州や米国のさえない業績を「受け入れられない」とし「増収率の見通しが悪化していることを踏まえると、従来の計画ではそうした事業の業績を改善できない」と述べた。
HSBCは、来年の有形株主資本利益率(RoTE)目標である11%を達成できないとの見通しを表明。今年上半期に比べ、収入の見通しが「厳しさを増している」と指摘した。
クイン氏にとって最も頭が痛いのが米国リテール(小口金融)事業だ。地元の大手行を相手に苦戦しており、1─9月期で1億8900万ドルの損失を計上した。
アナリストのなかには、米リテール事業の完全撤退を予想する向きもいるが、クイン氏は撤退説を否定した。
低収益の事業から資本を移し、コストベースを調整する方針を示した。
また、複雑な管理職の構造や内部の指揮系統をスリム化してコスト削減を図ると指摘。「こうした対応策により、また収入環境の悪化が続いた場合は、のれん代償却や追加のリストラ費など、19年第4・四半期以降に多額の費用計上が必要になる恐れがある」と述べた。
<香港デモで短中期の視界不良>
稼ぎ頭の香港での抗議デモで、ライバルのスタンダード・チャータード(スタンチャート) (L:STAN)とともに、目先から中期の見通しは不透明だ。
香港政府の陳茂波(ポール・チャン)財政官は27日、約5カ月にわたる反政府デモの影響で香港経済が第3・四半期にリセッション(景気後退)に陥ったと指摘し、2019年の成長率がプラスになる可能性は低いとの見方も示した。[nL3N27D0EI]
HSBCは、「香港の経済見通しを反映させた費用」を含めた信用損失が第3・四半期に4億ドル増えたと説明。ただ、1─9月では香港事業は7%の増収となった。
スティーブンソン最高財務責任者(CFO)は「香港経済は、明らかに米中貿易戦争と抗議デモという2つの要因の影響を受けている」と述べ、特にしわ寄せが及んでいるとみられる小規模事業者の状況を注視していると説明した。
*内容を追加しました。