[ロンドン/香港 29日 ロイター] - 中国湖北省武漢市で発生した新型コロナウイルスによる肺炎は、中国国内で猛烈に感染が広がり、いまや国外にも波及し、ホテル、航空会社から製造業までさまざまな企業活動に深刻な影響が出ている。企業は、災害等で事業を停止せざるを得なくなることをあらかじめ想定して保険をかけている。しかし、伝染病は一般に保険の補償対象外となっており、新型肺炎による機会損失、コスト負担は格段に大きくなる恐れがあると専門家は指摘する。
感染拡大を受け、航空会社の中国路線の運休、中国店舗の休業などが相次いでいる。
ある国際法律事務所の香港駐在弁護士(保険セクター担当)は、保険会社は主に旅行関連、ホテル、イベント会社から大量の保険金支払い請求を受けると予想する。一部大企業は、伝染病も補償する保険に入っているが、「標準的な保険」は、伝染病を補償対象外にして保険料を抑えているのがほとんどだという。
各国の保険は大体、地震や飛行機の墜落などのリスクはカバーしているが、大きな損失を避けるために船舶輸送に関する保険などはあまり取り扱わない。
重症急性呼吸器症候群(SARS)やエボラ出血熱、ジカ熱などの感染拡大をみた保険会社は伝染病リスクの補償に一段と慎重になっている(業界関係者)という。
ミラー・インシュランスのリスクファイナンス・ノンスタンダード・ソリューション部門の責任者であるリチャード・コイル氏は「多くの航空会社やホテルが顧客への払い戻しに動いている」と述べ、十分な保険の補償がなく、これらの会社は金銭的損失を負担することになると指摘した。
ロイズ・オブ・ロンドン[SOLYD.UL]加盟会社などが提供するイベント中止などのための保険は、通常型は伝染病が補償対象外(保険引受業者)という。
企業は、不測の事態で事業活動を一時停止したことによる収入の減少をカバーする保険に入っている。しかし、このような保険も伝染病は補償の対象外(訂正)になっていると保険業界関係者らは指摘する。
ミュンヘン再保険 (DE:MUVGn)の広報担当は「アジアのレジャー関連業界はすでに影響を受けている顕著な事例だ。伝染病の流行は対象外というのが一般的な市場慣行だ」と話した。
ミュンヘン再保険など一部保険会社は、伝染病流行をカバーする特殊な保険商品を開発している。しかし、そういう保険に加入する企業は多くないと業界関係者は指摘する。
*本文8段落目の「補償の対象になっている」を「補償の対象外になっている」に訂正しました。