[ソウル 18日 ロイター] - 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で米アップル (O:AAPL)の中国生産に支障がでていることが明らかになった。この機会にスマートフォン市場でサムスン電子 (KS:005930)が優位に立つ可能性がある。中国事業を縮小し、生産拠点をベトナムにシフトしていたからだ。
アップルは17日、新型コロナウイルスによる肺炎の流行で中国でのスマホ生産と需要双方が影響を受け、1─3月期の売上高が自社予想に届かない見通しを明らかにした。
新型肺炎が中国で発生する前から、今年の世界スマホ市場は2年連続で縮小すると予想されていた。ただでさえ低迷が見込まれていたところに、新型肺炎が追い打ちをかけた格好だ。
中国では新型肺炎の流行を受け企業や工場は数週間にわたり休業を強いられた。今週になって操業再開の動きが始まったが、本格稼働にはほど遠い状況だ。
中国勢ではすでに小米科技(シャオミ) (HK:1810)が1─3月の販売が落ち込むとの見方を示している。
アップルとともに主要なライバルである華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]はまだ生産上の問題を発表していないが、サムスン関係者やアナリスト、部品業者からは、中国での生産や部品への依存度が高いことから、かなりの痛手を受けているとの声が聞かれる。
サムスンは2009年にベトナムでスマホの生産を開始。以来、安価な人件費や政府の補助金をテコに積極的に生産を拡大し、今やベトナムでの生産は半数を占める。ベトナムでは新型肺炎の流行は限定的なものにとどまっている。
近年、中国事業が縮小していたことも幸いした。昨年、中国での自社生産を終了し、市場シェアはほぼゼロ%となった。アップルなどに比べて店舗閉鎖や需要減少の痛みはほとんどない。
サムスンのサプライチェーンに詳しい筋はロイターに「サムスンは、新型ウィルスの影響克服という点でファーウェイやアップルなどの強力なライバルよりも有利だ。新型ウイルスは中国リスクを露呈した。このリスクを回避できて運がいいと思う」と語った。
別の関係筋も、サムスンは表立って言わないものの、内心ほっとしているはずだと指摘した。
ただ、サムスンのベトナム事業に詳しい関係筋からは、流行が長期化すれば影響は免れないとの指摘もある。多くの部品を中国から調達しているうえ、一部低価格モデルで中国で委託生産しているからだ。
サムスンはロイター向けの声明で「事業への影響を最低限に抑えるべく懸命な努力をしている」と述べた。
サムスンは前週、米サンフランシスコのイベントでスマホの旗艦機種「ギャラクシーS」の新モデルを発表し、折り畳み可能な新スマホも披露した。 サムスンのライバル各社は、新型肺炎の影響で新製品の発表が遅れるとみられている。
調査会社のトレンドフォースは最近、第1・四半期のスマホ生産予想をファーウェイとアップルについてそれぞれ15%、10%引き下げたが、サムスンについては3%の下方修正にとどめた。
(Hyunjoo Jin記者)