[東京 26日 ロイター] - MS&ADインシュアランスグループホールディングス (T:8725)の新社長に25日付で就任した原典之氏は、ロイターのインタビューで、新型コロナの影響で経済の不確実性が高まる中、コスト削減で収益力を高めていくと述べた。在宅勤務の普及で、サイバーセキュリティ保険の販売が急増した。原氏は新たなビジネスの開拓に意欲を示した。
<サイバー保険、2割増>
12日に実施したインタビューで、原氏は収益力の向上を課題に挙げた。向こう2年間で国内で200億円、海外で100億円、計300億円の事業費を削減する方針を示した。
MS&ADは、連結当期純利益に異常危険準備金等の繰入額や非連結グループ会社の持分利益を加え、のれんの償却額などの特殊要因を除いた「グループ修正利益」を経営指標の1つとしている。
新型コロナの影響で、20年度のグループ修正利益は前年度比22.8%減の1800億円と予想。主に海外で発生保険金等が増加することで約200億円、資産運用利益の減少で約600億円の下押しを見込む。
一方、大企業から中小企業までサイバーセキュリティへの意識が高まったことで、傘下の三井住友海上とあいおいニッセイ同和が提供するサイバー保険の販売は4―5月に前年比20%増となった。原氏は「世の中の環境変化に応じて補償を適切に提供することによって、新たなビジネスにつなげていく」と語った。
<M&Aは「中身」見極め>
新型コロナの影響で新規事業の展開は抑制的に行うが、MS&ADは海外事業比率をグループ修正利益の50%まで引き上げることを将来の目標としている。21年度末の海外比率は27%の予想。
原氏は「アジアの成長を取り込んで収益力をさらに高めていきたい」と述べた。17年のシンガポールの損保大手・ファーストキャピタル買収など、アジアで地歩を固めてきた。オーガニックな成長に加え、M&A(企業の合併と買収)も視野に入れる。
ただ、新興国株安で「買い時と言えば買い時だが、こういう時に出てくる案件は財務的に傷んでいるものもあるのでよく見極める必要がある」と述べた。
原氏は1955年、長野県生まれ。78年に東京大学経済学部を卒業、大正海上火災保険(現三井住友海上火災保険)に入社。2016年4月に三井住友海上社長。ホールディングスの社長就任後も三井住友海上の社長を兼務する。
(和田崇彦) OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20200625T153658+0000