■今後の見通し1. 2021年3月期業績見通しフェローテックホールディングス (T:6890)の2021年3月期通期の業績は、売上高85,000百万円(前期比4.1%増)、営業利益6,500百万円(同8.1%増)、経常利益5,500百万円(同29.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,500百万円(同16.0%減)が見込まれている。
今後のコロナ禍や米中間貿易摩擦の状況が不透明であることから期初予想を変えていないが、上半期の業績が予想以上であったことや半導体業界の動向を考えれば上方修正される可能性が高い。
ただし、一部の株式を売却した子会社のステータスによって、予想が再度見直される可能性が高い。
セグメント別売上高は、半導体等装置関連58,754百万円(同11.1%増)、電子デバイス14,565百万円(同8.0%増)、その他11,681百万円(同23.4%減)を予想している。
その他は、引き続き太陽電池関連事業からの徹底の影響が残るため減収が見込まれている。
設備投資額は29,400百万円(前期は33,920百万円)、減価償却費は10,000百万円(前期は7,600百万円)の予想となっている。
2. 主要製品の現況と見通し(1) 半導体ウエーハ2021年3月期は、上期の民生向けパワーデバイスや自動車向け需要の軟化もあり、通期減収の見通しである。
6インチについては足元での需要は堅調に推移、月産42万枚体制を維持する。
8インチは自社での直販体制を強化する。
杭州新工場では顧客認定を推進中で、2021年3月期末は月産10万枚体制で稼働するが、2021年以降は需要に応じた増産体制を構築予定としている。
12インチは2021年3月期第4四半期(10月-12月)に量産を開始する見通し(月産3万枚体制)である。
今後は、第三者割当増資など中国での資金調達を前提に、追加設備投資を検討している。
事業機会・投資機会と財務とのバランスを確保するため、子会社株式の一部譲渡及び第三者割当増資を決定した。
(2) 半導体マテリアル(石英、セラミックス、CVD-SiC、シリコン)石英製品はマテリアル群のなかでも特に順調に売上を伸ばしていく見通しである。
消耗品需要は底堅い予想となっている。
中国の浙江省杭州・常山、江蘇省東台、日本の山形市に工場を配置し、増産体制を構築する。
セラミックスとCVD-SiCは、日本における「材料、加工、コーティング技術」の開発優位性が強みとなっている。
マシナブルセラミックスは、レーザー加工(高付加価値)プローブカード向けを強化しており、ファインセラミックスは需要が旺盛で、中国の浙江省杭州工場で生産能力増強を計画している。
(3) 部品洗浄中国半導体、FPD顧客の新規プロジェクトが相次ぐ景況のため、安徽省銅陵での生産能力増強を予定している。
同市の政府系ファンドも出資先に加わり、今後事業拡大のプロジェクトを目指す。
FTSAは上海科創板市場に上場するための準備を開始している。
(4) サーモモジュール2021年3月期は前期比14.2%増収の見通しである。
5Gの通信機器用途が拡大している(中国5G用通信基地局の設置数見通しは2020年で65万ヶ所、2021年で77万ヶ所、22年で93万ヶ所)ほか、民生用(ウェアラブル)やIoT・家電関連など、社会のデジタル化に伴い用途・需要が拡大している。
また、ロシアのRMT Ltd.,をM&Aで獲得した。
RMTは、サーモモジュールの超小型化(150ミクロン以下)及び多段化に関する技術力と高品質のビスマス・テルル(Bi2Te3)材料開発力を保有しており、比較的大型のサーモモジュールに強い同社と補完し合うことができる。
2020年末までに100%子会社化する予定である。
(5) パワー半導体基板2021年3月期は、産業機器や車載向け需要減なども影響し、前期比10.7%減収の見通しだが、傾向としては世界的な消費電力削減のトレンドの波に乗り、順調に拡大している。
パワー半導体市場は2030年に4.2兆円と予測されており、貿易摩擦の影響などもあり、中国でのシェアが拡大している。
同社の中国子会社はグローバルメーカーからの認定取得数も増加しており、顧客は主に欧州、日本、中国に存在する。
今後、自動車分野でも需要が増加すると予測され、DCB(Direct Copper Bonding)基板に加え、新たにAMB(Active Metal Brazing)基板も投入する。
東台のパワー半導体基板工場は生産能力拡大中で、2022年3月期以降も増収の見通しとなっている。
将来的には、江蘇省東台市の江蘇富楽徳半導体科技有限公司(FTSJ)を上海科創板に上場させることを検討している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)