[東京 10日 ロイター] -
ANAホールディングス (T:9202)は10日、4月1日付の社長交代に伴う会見を開き、片野坂真哉社長は、この時期に交代する理由について、新型コロナウイルスは収束していないものの「確実に2022年度の黒字化は実現していけると判断した」などと述べた。後任には芝田浩二専務執行役員が昇格する。
片野坂氏は社長就任直後の5年は国際線の路線網拡大や大型貨物機の導入、格安航空会社(LCC)ピーチとバニラエアの統合などを進めてきたが、残り2年は「コロナとの戦いに没頭した」。雇用は維持しながら事業規模を小さくして生き残りを図り、航空事業と両輪をなす非航空事業の育成に向けてコロナ後のビジネスモデルにも道筋をつけた。第3・四半期(昨年10─12月期)決算では8四半期ぶりの営業黒字も実現した。
非航空事業としては、アプリでの仮想空間旅行や分身ロボットの事業、ドローンや空飛ぶ車などのプロジェクトも進行中で、芝田氏はこれらの新事業も手掛けている。
芝田氏について片野坂氏は「コロナ禍を戦う戦略を共有し、安心して引き継げる」などと述べ、創業70周年の今年、経営陣の新陳代謝を図り「持続的な成長につなげたい」と話した。
芝田氏は、自らの課題を「一刻も早く業績を回復させ、持続的な成長軌道を描くこと」と説明。例年であれば来年度の予算も固まる時期だが、「足元の需要が読みづらい。あとひと月かけて需要動向を見極め策定したい」と述べた。この2年でコスト削減が進んでおり、損益分岐点も下がっているため「昨年第3・四半期程度の旅客需要が回復できれば、一定程度の(最終)黒字も見込める」と話した。
早ければ22年度にも運航開始を計画しているLCCの第3ブランドに関しては「当初予定より若干(開始が)遅れると思うが、将来的な役割は不変。近々もう少し状況や戦略を案内できる機会がある」と述べた。芝田氏はアライアンス室長を長年勤めた経験もあり、「1社で世界のネットワークを築くのは困難。そのためにはパートナーを増やし、必要なら出資もした。そういう思いで事業を拡大していきたい」と語った。
片野坂氏は芝田氏について、根拠を持って異なる意見を進言できる「肝が据わっているところ」や豊富な海外経験も評価した。芝田氏は英語や中国語が堪能で英ロンドン駐在経験もあり、海外出張は「1000回くらい」(芝田氏)。物事を進めるには、互いの理解を深めて率直な対話ができるキーワード「互尊」とコミュニケーションが重要だと述べた。
(白木真紀 編集:田中志保)