[東京 26日 ロイター] - 官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)は26日、半導体素材大手のJSRを約1兆円で買収すると発表した。半導体の重要性が世界的に高まる中、微細化に欠かせない技術を持つ同社を非上場化し、中長期的な成長を後押しする。競争力はありながら各企業の規模が小さい日本の半導体素材業界の再編につなげたい考え。
JICは完全子会社のJICキャピタルを通じ、6月15日付で新会社を設立。新会社が1株4350円でJSR株を買い付ける。同買い付け額を提案した6月16日の前日終値を28.77%、26日終値を10.57%上回る水準。買収総額は9039億円を見込む。JSRは株主にTOBへの応募を推奨した。
JICは各国の競争当局の手続きを経て、12月下旬のTOB開始を目指す。TOBによりJSRは上場廃止となる見込み。JICは決済資金をみずほ銀行と政策投資銀行から借り入れる。
JSRが手掛けるフォトレジスト(感光材)は、半導体の性能を左右する微細化技術に重要な材料で、同社はトップメーカーとして世界シェア3割を握る。祖業の合成ゴム事業を売却する一方、米国の競合を買収するなどして経営資源を集中してきた。
JSRとJIC両社の発表資料によると、海外の大手材料メーカーが大型の合併・買収で競争力を高める中、JSRは昨年11月中旬、成長に向けた資本政策についてJICに協議を打診。非上場化で短期的な業績に左右されない体制へ移行し、構造改革や業界再編を進めることで両社は認識を共有したという。
会見したJSRのエリック・ジョンソン社長はJICを選んだ理由について「業界再編に対するコミットメントを共有している」と説明。半導体材料業界は「プレイヤーの数が多く、それぞれが投資し、重複している」とした上で、「規模の拡大が不可欠」と述べた。企業価値を高め、5─7年後の再上場を目指すとした。
ロイターのインタビューに応じたJICキャピタルの池内省五社長は、JSR経営陣と初めて会ったときのことを振り返り、「半導体素材産業は海外の大手と伍していけない状態になるという危機感が非常に強かった。業界再編を本気で進めたいという思いが強烈に伝わってきた」と語った。国内産業の国際競争力を高めることが自分たちの使命とした上で、「JSRの経営陣の考えがドンピシャだった」と述べた。
JSRの株主である投資会社、バリューアクト・キャピタルは、JICによる株式公開買い付けを歓迎するとの声明を発表。「JSR取締役会の推奨に従い、支援する」としている。
フォトレジストは日本勢が市場を独占しており、信越化学工業や東京応化工業などもシェアが高い。SBI証券の澤砥正美シニアアナリストは「日本のメーカーが世界シェアを持っているが、事業規模はそれほど大きいわけではない。市場規模も小さいニッチな市場で、これ以上のシェアは拡大しづらい」と述べ、変化の必要性を指摘する。
経済安全保障の重要性が高まる中、JICを所管する経済産業省は半導体を戦略物資と定め、業界を資金面で支援している。線幅2ナノの次世代半導体の量産を目指して昨年発足したラピダス(東京都千代田区)や、台湾積体電路製造(TSMC)が熊本県に計画している新工場などに補助金を投じてきた。
経産省は、2030年に日本で半導体を生産する企業の売上高を現在の約3倍の15兆円に引き上げる目標を掲げている。
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