Max A. Cherney
[ラスベガス 12日 ロイター] - 生成AI(人工知能)ブームはハイテク業界を席巻し、米ラスベガスで開催された今年の「テクノロジー見本市(CES)」でも話題をさらうと予想されていた。しかし、出品されたAI機器はそれほど注目を集めず、業界関係者は盛り上がりを見せるにはあと1年はかかるとみる。
ある企業はAIを利用して焼き肉業界を破壊することを目指し、ペットと一緒に遊ぶAI機器を発表する企業もあった。また、機械学習を利用して人々を優れたファイターに変えるボクシンググローブのプロトタイプもデビューした。ところが、2023年に生成AIが生み出したような熱狂に匹敵する機器はほとんどなかったという印象だ。
対話型AI「チャットGPT」発表からまだ1年しかたっていないため、企業は機器の形にする十分な時間がなかったということだろう。
D2Dアドバイザリーのジェイ・ゴールドバーグ最高経営責任者(CEO)は「まだ手探りの状態」と話す。「(AI機器の開発には)シリコンやソフトウエアが必要だが、チャットGPTが発表されてからまだ1年しかたっていない。参入が始まったばかりだ」などと語った。
<来年に期待>
投資家はそろそろ、大々的に宣伝された生成AI分野への何十億ドルもの投資から経済的リターンを期待し始めており、CESでのAI機器の不発は先行きの前途多難さを示すものなのかもしれない。
発生期にあるAI機器の世界では利益は保証されていない。AI機器の新興企業ヒューメインは、スマートフォンに取って代わることを意図した699ドルのAI機器を3月に発売する予定だが、CES初日に組織再編の必要性を理由に従業員10人をレイオフしたと発表した。
AIに意欲を示すセクターの一つが自動車業界で、ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、チャットGPTを組み込んだ音声アシスタント技術を搭載した乗用車を早ければ今年第2・四半期から投入すると発表した。しかし、チャットGPTは事実に基づかない虚偽の情報を生成してしまう「幻覚(ハルシネーション)」を起こすことが知られているため、独高級車メーカーのメルセデス・ベンツは、正確を期すために回答の一部をグーグルのデータと照合するバーチャルアシスタントを発表した。
中国に本社を置くモジエは、スマートフォンに接続するプラスチックレンズ製の拡張現実メガネのデモンストレーションを行った。このメガネには、ユーザーがフレーム上のボタンを押すとチャットGPTが起動、問い合わせへの回答が視野内に表示されるオプションが含まれる。
AI新興企業のラビットは、アマゾン・ドット・コムやアルファベット傘下のグーグルが提供する音声アシストに似た「R1」という機器を発表した。これは「ラージアクションモデル」を使ってアプリを制御するもので1日当たり1万台が売れているという。
アクセンチュアのアナリスト、サイード・アラム氏は、来年のCESまでには企業が開発時間を十分に確保できるため、生成AIの形態を含む多くの機器や製品が出展される可能性が高いと指摘。「生成AIを搭載したハンドヘルド機器が登場しても驚かない」と語った。