Ritsuko Shimizu
[東京 9日 ロイター] - 日本製鉄の森高弘副会長兼副社長は9日の決算会見で、米鉄鋼大手のUSスチールの買収について「強い意志を持って、できるだけ早いタイミングでクローズするスタンスは何も変わっていない」と述べた。そのうえで、やるべきことは、意図を誠実に訴えていくことだと繰り返した。
USスチールの臨時株主総会では、賛成多数で日鉄による買収が承認された。森副会長は「他の人が買うことは基本はあり得ない」と指摘。反対を続ける全米鉄鋼労働組合(USW)とも、話し合いを続けていけば「必ず一致点が見つかる」とし、追加コミットメントについては「そういうつもりはない」とした。
日鉄は、これまで4―9月期としていた買収完了予定時期を7―12月期に変更した。米国企業結合審査を行っている米国司法省から2次審査の質問を受け取り、これを精査した結果だという。
11月の米大統領選挙までに完了の意向を持っていたが、選挙後になる可能性も出てきたことになる。森副会長は「大統領選挙を越えると政治性がなくなり、落ち着いた議論ができる可能性がある。悪い影響はない」と述べた。
欧州連合(EU)の欧州委員会は「競争上の懸念は生じない」として、日鉄によるUSスチールの買収計画を承認した。一方、米国では、USWが反対を続けているほか、バイデン大統領が「USスチールは完全に米国の企業であり続けるべきだ」と述べるなどし、慎重な姿勢を示している。
今井正社長は、米国で政治問題化していることについて「項目として考えてはいた」としながらも「問題の程度という意味では、当初思っていたよりは大きな問題になっている」と述べた。
森副会長は、この買収はUSスチールを強くすることを企図したものだと強調。「ジョブセキュリティーは懸念ではないし、サプライチェーンの強化にもつながるため、ナショナルセキュリティーでの心配もない。きちんと説明し、理解してもらえれば、間違いなく良い方向に行く。その努力を慌てず騒がず、地道に続けていく」と述べた。
同社の中国事業を問題視するレポートについては、すでに訂正が出されていると指摘。そのうえで「中国では下工程しかやっていないし、数パーセントにしかならない事業。中国事業は、かつてはオポチュニティーだったが、今はリスクが高い」とし「今後については引いていく方向。さらに資源を投入するようなことはしない」と述べた。
同日、6月を目途に劣後シンジケートローン・劣後債で総額2000億円程度(上限 2500億円)の資金調達を予定していると発表した。USスチール買収後をにらみ、財務体質を強靭なものにしていくための施策と説明した。
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