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中部鋼鈑 Research Memo(6):コスト上昇分の価格転嫁が計画達成のカギ(1)

発行済 2024-06-19 13:16
更新済 2024-06-19 13:30
© Reuters.
*13:16JST 中部鋼鈑 Research Memo(6):コスト上昇分の価格転嫁が計画達成のカギ(1) ■今後の見通し

1. 2025年3月期の業績見通し
中部鋼鈑 (TYO:5461)の2025年3月期の連結業績は、売上高68,000百万円(前期比0.3%増)、営業利益9,500百万円(同8.9%減)、経常利益9,100百万円(同11.0%減)、親会社株主に帰属する当期純利益6,100百万円(同14.5%減)を計画しており、売上高は前期並み、各段階利益は減益を見込んでいる。
2025年3月期も第2四半期から第3四半期にかけて電気炉大型設備工事が計画されており、操業休止の影響を受けることから、粗鋼生産量の計画値は51万トンと、2024年3月期実績の56万トンを下回り、販売数量についても2024年3月期並みの53万トンを予想している。
ただし国内厚板市場については、資材価格高騰や人手不足による需要への影響は残るものの、国土強靭化対策による土木建築向け需要が期待できることや、国内のメイン・サプライヤーである高炉メーカー各社が資材や物流等のコスト上昇を根拠に継続的な販売価格の値上げを進めていることから、厚板市況については今後も高値水準で推移すると見込まれており、売上高予想としては比較的確度が高いものと弊社では見ている。
利益面については、主原料である鉄スクラップが2024年3月期から高値水準で推移していることや、エネルギー・諸資材価格の高騰、さらには物流の2024年問題によるコスト上昇といった諸要因から厳しい状況が予想される。
加えて設備除却損等の工事関係費用計上も予定されているため減益との見通しを立てたが、コスト上昇分を適正に販売価格に反映するなどの対応により、利益面での計画達成に懸念はないと弊社では見ている。


なお電気炉大型設備工事は2025年3月期をもって終了するが、新電気炉の稼働が本格化するのは第4四半期以降と同社では見ており、それまでは2024年3月期並みの生産能力の下、事業を継続することになる。


2. 21中期経営計画の振り返りと24中期経営計画の発表
(1) 21中期経営計画の振り返り
2021年に策定した「21中期経営計画」は2024年3月期をもって終了した。
5つの方針として1) 循環型社会への貢献(スクラップリサイクル)、2) 成長戦略の推進、3) 持続可能な基盤整備の推進、4) ESG/SDGs課題に対する取組の強化、5) 中山製鋼所との業務提携の推進を、数値目標として販売数量70万トン、連結経常利益40億円、連結配当性向30%を掲げていた。
各数値目標の結果としては、販売数量は新電気炉設備工事の影響で52万トンと未達に終わったものの、連結経常利益は2022年3月期から2024年3月期の各年度で目標を超過した。
また連結配当性向も各年度において目標を超過し、2024年3月期は35%で着地した。
さらに同社は、2022年12月に東証プライム市場に上場して今後の成長の足掛かりを築いたことや、新電気炉建設により生産量増加と脱炭素化への準備ができたことを中計の成果として挙げている。


(2) 24中期経営計画の概要
2024年5月、2024年度からスタートする3ヶ年の中期経営計画「24中期経営計画」(以下、本中計)を策定した。
本中計では基本方針として以下の3点を挙げ、中山製鋼所との業務提携を活用することにより推進するとしている。


1) 鉄鋼製品(厚板及び鋳片)80万トンの販売
高炉メーカーの構造改革による設備集約に伴い、市場の厚板への供給ニーズが高まることを想定した対応に加え、顧客の脱炭素需要に応えるため、鉄鋼製品の販売量を80万トン(厚板70万トン、スラブ10万トン)まで高めるべく製造・販売両面での体制強化を図る。
製造面では、新電気炉の活用や、4直3交替制の導入による稼働時間の拡大、鋳造能力アップ、スクラップヤードの拡張によるスクラップ在庫の適正量の確保、製品ヤード拡張による出荷能力向上、圧延工程における燃料使用量削減や自動化によるコスト削減などの施策を実施し、生産量の拡大を図る計画である。
販売面では、脱炭素化の動きを受けて、新電気炉で製造するCO2削減効果の高い厚板を、建築分野、特にオフィスビルや工場の柱や梁向けの建材として販売するほか、商社と連携して脱炭素ニーズを補捉し、厚板の需要取り込みを強化する方針である。
建築分野は同社全体での受注比率が低いため、営業担当者と技術担当者からなる「建材営業チーム」を立ち上げ、施主や設計事務所、ゼネコンや鉄骨加工業者に対して営業強化を図る。


2) 脱炭素対応
新電気炉の稼働による省エネルギー効果に加え、再生可能エネルギーの確保等を実施することで脱炭素化を進める。
試算では、2030年度において100万トンの厚板及びスラブを販売した場合の排出CO2量は357千トン-CO2になる見込みだが、脱炭素対応を進め、129千トン-CO2までの圧縮を目指す。
この対策としては、前述の新電気炉の稼働や製造工程での脱炭素化対応に加え、再生可能エネルギー確保やCO2フリー電力の購入といった施策を掲げている。
再生可能エネルギー確保では、「オフサイトPPA」を導入する。
PPAとは太陽光発電の事業者が太陽光発電所を開設して契約先の需要家に対して電気を供給する仕組みだが、オフサイトPPAとは需要家の敷地外に発電所を設置する方式である。
目標として年間13,000MWh相当の発電量の調達を掲げ、第1弾として、中部電力ミライズ(株)との間で中部地方の複数の太陽光発電所から調達する電気の使用に関する合意を結んでおり、年間5,145MWhの発電量を確保する。
これにより年間で2,400トン-CO2の排出削減が可能となる見込みだ。
CO2フリー電力の購入については、電力会社が調達した水力・太陽光発電による電力や、電力会社が市場から入手した非化石証書付きの電力、その他PPA電力などの購入を検討している。
さらに、自社で獲得したCO2削減量を原資として「グリーンスチール」を販売することを検討しており、2026年3月期での販売開始を目指している。
グリーンスチールとは、鉄鋼製造時のCO2排出量を従来製品に比較して大幅に削減した鉄鋼製品で、CO2削減量を個々の鋼材に割り当てることで、それを導入する需要家がCO2削減量を享受することが可能な製品である。


なお21中期経営計画においてもCO2排出量の総量を開示していたが、本中計では総量開示に加え、LCA(ライフサイクルアセスメント:製品の資源採取から廃棄・リサイクルされるまでの一生にわたる環境評価)に沿った製品単位の詳細な環境影響の開示をスタートさせる。


(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)

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