[東京 1日 ロイター] - 日銀の若田部昌澄副総裁は1日、岡山県金融経済懇談会後の記者会見で、現時点では追加緩和の蓋然性は「それほど高くない」と話した。金融緩和と政府の対策が相まって、経済の下振れリスクや資源高に伴う交易所得の流出に効果が発揮されることに期待感を示した。
若田部副総裁は懇談会のあいさつで、資源高でも経済対策の効果などで景気回復が続くとする一方、経済への下振れリスクが顕在化すれば「躊躇(ちゅうちょ)なく必要な追加的措置を講じることも排除すべきではない」と語っていた。
若田部副総裁は会見で「政府との連携は十分図られている」と述べた。大部分の値段があまり上がらない「低インフレ」に対しては金融緩和の継続で対応し、エネルギー関連や食料品の値上がりには財政政策が対応すべきと改めて指摘した。
<コアCPIの2%超え、重要なのは期間ではない>
若田部副総裁はあいさつで、消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の2%超えが「半年から1年程度しか続かないのであれば、2%の物価目標が持続的・安定的に達成されたとは言えない」と述べた。
会見では、コアCPIの2%超えがどのくらいの期間続けば持続的・安定的なのか、予め決め打ちするのは適切ではなく、価格の分布や物価の基調、サービス価格と密接な賃金の動向、中長期の予想インフレ率などのデータを丁寧に見ていく必要があると話した。その上で、コストプッシュの物価上昇が賃金や中長期の予想インフレ率の上昇につながるか「やや難しいところだ」と述べた。
市場では、中国政府のゼロコロナ政策に伴う中国景気の下振れ懸念がくすぶっている。若田部副総裁は中国景気の動向をリスク要因と認識しているものの、「メインシナリオを覆すほど深刻なものとは考えていない」と語った。
<懇談会、為替の安定に要望も>
若田部副総裁によると、懇談会では出席者から「為替の安定には一層の目配りをお願いしたい」との要望が出ていたという。
若田部副総裁は「急激に為替が変動すると、企業が事業計画を立てる上で不確実性が増すので望ましくない」と指摘する一方、金融政策の目的は物価の安定であり「為替レートを目標として何か政策を発動することは望ましいことではない」とした。
長期金利の許容変動幅拡大については「事実上、金利を上げることにつながる」と述べ、企画局担当の内田真一理事が5月に許容変動幅拡大は「事実上、利上げすること」と発言したことに歩調を合わせた。
(和田崇彦)