今週最大の焦点は、日米の金融政策となろう。ドラギECBは21日、新興国経済の減速が域内経済に及ぼすリスク(デフレリスクの高まり)を警戒し「3月に動く」可能性を示唆してきた。黒田日銀が28-29日に開催される日銀金融政策決定会合で追加緩和に踏み切れば、日欧緩和強化を背景にグローバル市場のリスクセンチメントは短期的に著しく改善されよう。
では、日銀は動くのか?
昨年12月の異次元緩和「補完措置」導入でその可能性は一時後退したものの、年明け以降の市場の混乱とドラギECBによる緩和強化観測が急浮上してきた状況を考えるならば、その可能性が再び高まってきたことは既に指摘済み。事実、黒田総裁は23日、今後の金融政策について「2%の物価目標達成に必要ならば躊躇なく調整する用意がある」と、スイスで開かれた世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)で記者団に述べた。この発言が出たわずか1週間前、15日の参院予算委員会では「物価の基調は着実に改善している」とし、追加緩和については「現時点でその考えはない」と強気の姿勢を崩していなかった点を考えるならば、ここ1週間あまりで黒田日銀内でより警戒されたのはドラギECBの動向だった可能性が高い。現下の海外リスクに対してECBが動き日銀がゼロ回答となれば、異次元緩和の整合性に対する疑問符が付くと同時にその優位性までが急速に後退することで「株安・円高」の逆回転リスクを自ら高めてしまう可能性があるからだ。
また、今年度の補正予算(総額3兆3213億円)成立というタイミングも日銀とっては好都合だろう。何故なら、過去2回の金融緩和の生命線は「意外性」にあった。しかし、今回は既に追加緩和について示唆しており、それには期待でない。しかし、構造改革の起爆剤として期待されている環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への対策、中小企業支援策そして子育てや介護の支援を盛り込んだ補正予算と同時の追加緩和ならば、総合的な経済対策として市場から一定の評価を得ることが出来るだろう。
ただ、その持続性については、このレポートで指摘し続けてきたようにアベノミクス第3の矢である「成長戦略」の推進が必要不可欠であり、この点に関する進展が見られない限りは、海外リスクに翻弄される状況が継続しよう。