米中間貿易戦争は熱を増すばかりで、投資家は今週も安心できそうにない状況だ。
5月17日、トランプ米大統領が中国通信機器大手ファーウェイとその関連会社をブラックリストに追加し米国企業との取引を禁止したことから、緊張が更に高まった。
今後数週間の市場の方向性は不明瞭であることが予想される一方で、小売大手企業の重要な決算報告が控えている。以下が特に注目すべき3銘柄だ。
1.ターゲット
米大規模小売業のターゲット(NYSE:TGT)は、2-4月期決算を22日の寄付き前に発表する。競合のウォルマート(NYSE:WMT)の業績が好調であったため、同社決算への期待も高まっている。
昨年のEPS1.22ドルに対し、予想EPSは1.43ドルで、予想売上高は175億ドルとみられている。3月に同社は、年間EPSが5.75~6.05ドルの間で、年間売上高は1桁台前半から中盤の成長をする予測を発表している。
同社は、数百店舗のリモデリング、新しいプライベートブランドの導入、オンラインチャネルの改善などの改革が功を奏してきている。2018年の各四半期売上高の前年比成長は高く、過去5年間で毎年25%以上のオンライン売上高の成長を見せている。
高い利益予測にも関わらず、米中貿易戦争による消費状況の悪化と懸念される売上総利益率の悪化によって同社株は上値が重い状況である。5月17日の同社株終値は70.89ドルで、年初来7%以上の上昇となっている。
2. ベスト・バイ
ベスト・バイ(NYSE:BBY)も23日の寄付き前に2-4月期期決算の報告が予想され、注目の小売銘柄となっている。
ベスト・バイ株は今年に入って大幅上昇を見せており、年初来30%高以上となっている。サービス事業の拡大と、ドアロック等のスマートホーム機器、ゲーム・ウェアラブルデバイスと連動するカメラ等の展開を進めていることが背景にある。
ベスト・バイ最大のサプライヤーであるアップル(NASDAQ:AAPL)が今年の売上高に関して減速の見込みと、米中間の報復関税による電子機器のコスト高の見立てが示され、株価には売り圧力がかかる可能性がある。
2-4月期決算は、昨年のEPS0.82ドルに対し予想EPSが0.87ドルとなっている。予想売上高は昨年と変化がなく、91億ドルとなっている。
3. テスラ (TSLA)
テスラ(NASDAQ:TSLA)は先週の報道による大幅安に引き続き、投資家が安心できない状況が続きそうだ。イーロン・マスク氏がこのままでは10ヶ月で収支がマイナスになるという見通しを示し会社支出の「徹底的な」コスト削減を呼びかけたことや、米運輸安全委員会(NTSB)が同社の運転支援システム「オートパイロット」の安全性を問題視したことを背景に、テスラ株は5月17日7.6%安となった。
ブルームバーグ報道によると、イーロン・マスク氏は従業員向けのメールで、新たにCFOに就任したザック・カークホーン氏と共に「文字通りすべての支払い」を精査し、一切の支出の無駄がないか確認すると述べた。
4月24日の1ー3月期決算報告ではモデル3セダンの需要が減少し、同社はキャッシュフロー不足に直面していることが見て取れる。また、自動車出荷台数の31%減を報告しており、現預金の10億ドル近くを失っている。
5月17日に2年半ぶりの安値を記録したもうひとつの背景として、米運輸安全委員会が3月に起こったテスラ車の死亡事故では同社の運転支援システムに問題があったと指摘したことが挙げられる。3月の事故はモデル3によりフロリダのデルレイビーチにて発生したが、このような事故は米国で3度目となる。
同社の成長プランにも悪影響を及ぼし、同社株に売り圧力がかかることも予想される。またマスク氏は先月、2020年までにロボタクシーが100万台出回る構想を発表している。