米国株式市場は再び困難な局面を迎えている。S&P 500とナスダック総合指数はともに3週続落、ダウ平均株価は5週続落となっている。
主な元凶は長引く米中貿易戦争であると指摘されている。一方で、主要な市場テクニカル分析は違うストーリーを物語っている。
昨年末から続く上昇相場であったが、値動きの勢いや方向性を指し示すインジケーターであるRSIは4月下旬の時点で買われすぎを示し、その後下落していった。
米国株式は4月下旬以降では軟調であることが窺える。
5月24日終値を見ても、大きな反騰はまだ期待できなさそうだ。
熟練した投資家はトレンドもいずれは利食いすることを知っているだろう。その点、RSIはトレンドを観測する上で良好なインジケーターであると言える。
S&P 500のRSIは4月30日に73.5%となった。
ナスダックのRSIは4月29日に76%となった。
RSIが70%を超えたら要注意だ。75%を超えるとすでに高値に近いサインでありあり、80%以上になると強い売りシグナルとなる。
また30%以下になると安値を付けるサインで、その後の反騰が示唆される。
実際にS&P 500とナスダックのRSIは5月13日までに約30%まで下がり、米国株は強い売り相場となった。ただし、決定的な安値は付けなかった。
5月24日の終値ではS&P 500、ナスダック、ダウのRSIが軒並み40%台となった。
RSIのようなテクニカル指標は、今日のアルゴリズム取引における重要な要素となっている。
アルゴリズム取引では多くのパラメータを元に、人間には不可能な情報処理を行い売買をしている。
RSIのようなモメンタム指標が、アルゴリズム取引のエントリートリガーとなることがあるため、フラッシュクラッシュが引き起こされることがある。
ここ数年でコンピュータ上での取引が多くなったことで、4月末のように大幅に値を下げることは繰り返し起こってきた。
12月にウォールストリートジャーナルが記したところでは、年末時点で総取引のうち85%がコンピュータアルゴリズムを経由して行われていたという。
トランプ氏が2016年の大統領選に勝利してから、米国、日本、ブラジル、インドの株式市場は軒並み40%以上上昇した。
RSIは優秀な指標ではあるが、完璧とは言えない。高値や安値に近いをことを指し示せるが、具体的にいつ転機を迎えるかまでは分からない。
2018年秋からの暴落がこの事実を示しているだろう。
トランプ大統領によるFRB批判、インフレやその他の逆風にも関わらず、昨年夏まで順調に市場は上昇していた。
しかし8月から9月にかけてナスダック、S&P 500、ダウのRSIは買われすぎのシグナルを示し始めた。
株価は下がり始め、10月中旬に世界同時株安を引き起こした。
ダウは四半期で12%近く下落した。S&P 500や独DAXは14%、ナスダックや日経平均に至っては17%の下落となった。
そして12月24日のセルオフは米国市場のクリスマスイブ史上最大の下げ相場を招いた。
しかしこの下落によって、S&P 500、ナスダックのRSIは売られすぎを示しており買いシグナルを示唆していた。
12月24日におけるS&P 500のRSIは19%となっており、これは2008年のリーマンショック以来の低水準だった。
これ以上の買いシグナルはめったにない。そして確かに12月26日には上げ相場が始まったのだった。