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10ドルと高値にある天然ガスは、今後も上昇を続ける可能性

発行済 2022-05-27 07:22
更新済 2020-09-02 15:05

夏が近づく中、天然ガスに関して弱気になるのは適切ではないかもしれない。

ニューヨークのヘンリーハブで取引されている天然ガス先物は、2008年以来初めて9ドルの大台を超え、強気筋がこの夏に期待していた最低10ドルの水準にあと約60セントのところまで迫っている。

天然ガス 日次チャート

ヒューストンに拠点を置く天然ガス市場のコンサルタント会社、Gelber & Associatesのアナリストは、「今後さらに豊富な供給が期待されているにもかかわらず、初夏の暑さと今後猛暑になるリスクによって市場ではすでに天然ガスに対する需要が高く、価格を上昇させている」と顧客に向けた電子メールで述べている。

水曜日のヘンリーハブで取引されている天然ガスは14年ぶりの高値である9.40ドルをつけ、エネルギー情報局が発表する天然ガス貯蔵量の週次データに関心が集まっている。

天然ガス 貯蔵量

出所:Gelber & Associates

Investing.comが集計したアナリストのコンセンサスによると、電力会社は5月20日に終わった週に、発電および冷房用の需要を満たした後、890億立方フィート(89bcf)を貯蔵所に注入した可能性が高いとみている。

これは5月13日までの前週と同じ注入量だが、前年同期の109bcfの注入や5年間(2017~2021年)平均注入量である97bcfを下回る水準である。

アナリストによる注入予測が正確であれば、貯蔵中の天然ガスは1兆821億立方フィート(1.821tcf)に上昇し、5年平均を約14.9%、前年同週を17.2%それぞれ下回ることになる。

ロイター傘下のデータ・プロバイダーであるRefinitivによると、先週の冷房度日(CDDs)は54であり、30年来の平年値である34と比較すると大きな水準である。

CDDは、家庭や企業の冷房需要を見積もるために使われ、1日の平均気温が華氏65度以上となった度数を計測する。

Naturalgasintel.comのレポートによると、今年の夏は米国内の平均気温が高くなると予想されており、需要の高まりがさらに期待されるとのことだ。

「加えて、メンテナンス作業の中、米国の生産量は比較的少ない」と同レポートでは指摘されており、今春の生産量は日量95bcf程度かそれ以下、時には92bcfと、昨冬のピーク時の97bcfにはほど遠い水準で推移していると付け加えた。

Bespoke Weather Servicesは、この状況を独自に調査した。天然ガス生産量の減少が米国の供給を圧迫し、来年冬用の貯蔵天然ガスが少ないまま、現在の注入期を終える可能性があり、このような見通しが市場を下支えしていると述べている。

Bespokeでは、液化天然ガス(LNG)について、「生産量は依然として高水準ではないが、LNGの生産量は13bcf以上増加している」という。

「主なテーマは、この秋に快適な貯蔵水準に達するためには、生産量が大幅に、かつ持続的に増加する必要があるということである。このテーマは今も変わっていない」。

天然ガス利用は活発だが、5月初旬にみられた季節外れの暑さと多量な天然ガス消費の後、冷房需要はここ数日低調だ。

今週、米国国立気象局のデータによると、米国中部は平均以下の最高気温と肌寒い雨に見舞われるという。

水曜日の最高気温は、アッパー・プレインズ、中西部および五大湖地域で華氏50度から70度の範囲であった。また、北東部の主要な天然ガス燃料地域も穏やかな天候が続いている。

さて、このような状況を踏まえ、今後の見通しについて考えたい。

skcharting.comのチーフ・テクニカル・ストラテジストであるSunil Kumar Dixit氏は、「9ドル以上での取引が継続すれば、さらなる上昇目標である9.80ドルや10.30ドルに向けて勢いがつくだろう」と述べている。

「週足と月足のストキャスティックスは、11.00ドル以上の高水準に向けてさらに継続することを強く示唆している。」

天然ガス 代替燃料比較チャート

出所:Gelber & Associates

しかし、ヘンリー・ハブで取引されている天然ガスは今年に入ってからほとんど容赦なく上昇し、水曜日現在で年初来147%値上がりしている。このまま上昇が続けば、消費者や電力会社にとって不都合をきたすかもしれない。Gelber & Associatesのアナリストによれば、このままでは代替燃料への切り替え圧力が強まる可能性があるという。

「価格が中央アパラチア炭と同等の約9.40〜10.20ドル/mmBtuに近づくと(燃焼効率や輸送コストの違いを考慮した場合)、需要者にとって天然ガスはもはや経済的な選択肢ではなくなるかもしれない。」

「これまでを振り返っても、この代替燃料の価格が過去の天然ガス価格の天井となっている。近年、燃料転換能力は大幅に低下しているが、それでも現在の天然ガス価格の上昇を受けて、日量約1bcf程度が代替燃料に流れている。」

代替燃料の需要があれば、天然ガス価格の上昇に一服感が生じるかもしれないが、その後は2桁台を下回らないように強気筋の買いが増加する可能性がある。

今夏に気温が急上昇し、アメリカ人がエアコンの使用量を最大にせざるを得なくなると、市場は2008年につけたピークである13ドル超に達することになるかもしれない。その時、欧州での液化天然ガス生産に不測の事態が発生すれば、相場はさらに上昇する可能性がある。

とはいえ、目先のボラティリティに対する警戒感は強い。天然ガス先物は5月に25%上昇し、4月と3月にみられた28%の値上がり基調を継続しているが、目先の貯蔵量の改善があれば、まだ反転する可能性がある。

チャート分析家のDIxit氏は、9.50ドルの上限を問題なく超えることができなければ、その間に相場が下降する可能性があるという。

「水曜日の値動きは、トレーダーが9.40ドルの上値に躊躇していることを示唆するものであった。」

「週足と月足のストキャスティクスが強い一方で、日足のストキャスティクスの読みは9.40ドルから8.80ドルの間の横ばいでコンソリデーションする可能性があることを示している。」

「8.80ドルを下回ると、8.10ドルから7.60ドルの間に何らかの下降の動きが生じるだろう」と付け加えた。

免責事項:Barani Krishnan氏は、あらゆる市場の分析に多様性を持たせるために、自身の見解以外の様々な見解を用いている。中立性を保つため、時に逆張りの見解や市場の変数を提示する。同氏は執筆しているコモディティおよび証券のポジションを保有していない。

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