昨日の海外時間の外為市場は方向感の見えない中、直近のドル高を調整する動きが散見された。また、欧州中央銀行(ECB)内で運営方針をめぐる対立があるとの観測記事(ロイター)により欧州中央銀行(ECB)による追加緩和期待が後退したことで、ユーロを買い戻す動きが強まった。ユーロドルは1.2577レベルまで反発。対円&ポンドでもユーロ高優勢の展開となった。
しかし、今回のユーロ反発がドル高調整にサポートされた点を考えるなら、ユーロベアの見通しに変化はない。理由はやはりファンダメンタルズの低迷にある。
欧州委員会は4日、秋季経済見通しを公表した。この中で2015年の成長率を春季(5月)予測時の+1.7%から+1.1%へ下方修正した。国際通貨基金(IMF)が先月公表した世界経済見通しの報告書でも、来年のユーロ圏経済を0.2%下方修正(+1.5%→+1.3%)しているが、これら判断の背景にあるのはドイツ経済の急減速、南欧諸国(フランス、イタリア)の景気低迷だろう。また、景気低迷に伴うディスインフレ傾向も意識されているだろう。実際、後者に関しては上記の秋季経済見通しの中で、2015年の物価上昇率見通しを前年比0.8%と前回の1.2%から引き下げ、2年連続で1%割れとなる予測を示した。2016年見通しも1.5%と目標値の2.0%水準以下で推移する予想を示してきた。域内経済のけん引役であるドイツ経済が、今後外部要因(ロシア・ウクライナ情勢、中国の景気後退)によってさらに進行すれば、ディスインフレ傾向は欧州委員会の予測通り慢性化しよう。それ故、欧州中央銀行(ECB)に対して更なる行動(緩和強化)を求めるマーケットからの圧力が今後増大しよう。
2010年6月安値1.1876と2012年安値1.2042を結んだサポートライン(下図チャート)を下方ブレイクすれば、次の節目水準1.2000に向け下落スピードが加速する展開を想定する。
< Today’s Outlook -イベント前にドル高再燃となるか>
焦点は引き続き米国の経済指標となろう。日本時間22時15分にADP雇用統計 (10月)、24時にISM非製造業景況指数(同月)が発表される。総じて市場予想を上回るならば、イベント前のドル高再燃の可能性が高まろう。18時に発表されるユーロ圏小売売上高(9月)は前月比でマイナスに落ち込む見通しとなっており、米欧指標データでファンダメンタルズ格差が鮮明となれば、ユーロドルは直近安値1.2439レベルを視野にユーロ安/ドル高の展開を想定したい。
尚、アジア時間は11時30分に予定されている黒田東彦日銀総裁の講演が注目される。サプライズ緩和後だけに目新しい内容は乏しいと考えられるが、今後も状況次第で緩和強化に乗り出す姿勢を打ち出せば、海外勢を中心に円売りが加速しよう。
【Technical analysis highlights】
ドル円
レジスタンス
114.22:11月3日高値
113.78:11月4日高値
サポート
112.96:76.40%戻し
112.50:サポートポイント
113.00-114.00を中心レンジと想定。ただ、対円でのドル高調整が限定的である点を考えるなら、114円トライを常に想定しておくべきだろう。一方、下値の焦点は目先113円台の維持が焦点となろう。株式市場で再び調整地合いとなれば113円以下での攻防が予想されるが、直近の好調な米経済指標と日銀の追加緩和を考えるなら、112.50レベルで反発する可能性があろう。
尚、朝方のオーダー状況だが113.80レベルにはオファー、113.00&112.80レベルにはビッドがそれぞれ観測されている。
ユーロドル
レジスタンス
1.2622:10日MA
1.2577:11月4日高値
サポート
1.2439:11月4日安値
1.2400:サポートポイント
ショートカバーが継続する場合、1.26台への再上昇が焦点となろう。テクニカル面では10日MAでの攻防に注視したい。一方、米欧経済指標によりユーロ安/ドル高圧力が強まった場合は、11月4日安値1.2439レベルを視野に入れる展開を想定したい。
尚、朝方のオーダー状況だが1.2600にはオファー、1.2400には厚いビッドとオプションバリアの観測がある。