[ワシントン 13日 ロイター] - 世界銀行は13日に公表した報告書で、気候変動対策を早急に講じない場合、海面上昇や水不足、作物の生産性の低下によって2050年までに2億1600万人が自国内での移住を余儀なくされる可能性があると指摘した。
この報告書「大きなうねり2.0」は、気候変動が六つの地域に与える影響をモデル化。気候変動による移住を迫られる「ホットスポット」が30年にも出現し、50年までに激化し、世界で最も貧しい地域への打撃が最大になると結論付けた。
報告書によると、国内移民を余儀なくされるうち8600万人がサハラ砂漠以南のアフリカが占め、1900万人が北アフリカ、4000万人は南アジア、4900万人は東アジア・太平洋地域になると予想した。
このような人の移動は、離れる地域と受け入れる地域の両方に著しいストレスを与え、都市と市街地に負担をかけ、開発による成果を危うくするとした。
例えば、海面上昇はコメの生産、養殖、漁業を脅かし、ベトナムの海抜が低い地域のメコンデルタは移住を迫られるホットスポットになる恐れがある。しかし、それらの人々の移住先となる可能性が高い紅河デルタや中央海岸地域は、激しい嵐などの脅威に直面している。
世銀は、紛争や新型コロナのパンデミック(世界的大流行)によって引き起こされたような健康・経済上の危機は、状況をさらに悪化させる可能性があると指摘。また、今回の報告書は高所得国の大部分や、中東諸国、島しょ国を対象としておらず、他国への移住を含んでいないため、気候変動による移住者数ははるかに多くなる可能性がある。
報告書の筆者は、今回の調査結果は温室効果ガスを削減し、開発格差を解消し、生態系の回復のために今すぐ行動するように地域や各国の政府、国際社会への緊急の呼び掛けと捉えるべきだと訴えた。そうすれば、移住者数を80%減らして4400万人に抑えられる可能性があるとした。