[東京 3日 ロイター] - 岸田文雄首相は3日の記者会見で、原油価格高騰に対する緊急対策を取りまとめ、4日に公表することを明らかにした。燃油価格の激変を緩和するために実施している元売り各社への補助金支給を大幅に拡充することなどを盛り込む。極東ロシアの石油・天然ガス開発事業「サハリン1」への政府の対応については国益を意識しつつ、状況をしっかり把握した上で方針を決めていくと述べた。
<ガソリン価格抑制補助金、25円へ引き上げ>
ウクライナ情勢の緊迫化やOPECプラスの追加増産見送りなどを受け、米WTI原油先物は一時1バレル116ドル半ばに上昇。2008年9月以来13年半ぶりの高値を付けている。
政府の緊急対策では、一般予備費のうち3600億円強を活用する。元売り各社への補助金上限を現在の1リットル当たり5円から25円に引き上げるほか、漁業者や施設園芸農家に対する重油価格高騰分の補填を拡充する。タクシー事業者に対するLPガス価格高騰分の補填も行う。
国際商品市況を巡っては、穀物価格などの上昇による影響も懸念される。岸田首相は、輸入に依存する原材料について様々な対策を考えていかなければならないと指摘。それぞれの分野でどのような影響が想定され、どのような対応考えられるのか、各担当大臣に検討するように指示したいと述べた。
<サハリン1への対応、状況を把握して判断>
ロシア軍のウクライナ侵攻を受け、欧米企業がサハリンの資源事業からの撤退を表明している。「サハリン1」は、日本の官民で作るサハリン石油ガス開発が3割の権益を保有しており、今後の政府の対応が注目されている。
岸田首相は、ロシアへの経済制裁は国際社会と連携して取り組んでいるが、エネルギーの安定供給と安全保障は最大限守るべき国益の一つとして対応していかなければならないと強調。状況をしっかり把握した上で日本としての方針を決めていきたいと語った。
<ロシアによるウクライナ侵略、改めて厳しく非難>
岸田首相は、ロシアによるウクライナ侵略は明白な国際法違反の暴挙だとし、改めて厳しく非難。力による一方的な現状変更を許さないことは、東アジアの安全保障環境が急速に厳しさを増す中、日本の外交・安全保障にとっても極めて重要だと語った。
主要7カ国(G7)をはじめとする国際社会とともにロシアに強い制裁措置をとっており、この日、ロシアの財閥のオリガルヒなどの資産凍結を決めた。この後、午後11時から日米豪印の首脳テレビ会議に出席し、ウクライナ情勢への対応で意見交換することも明らかにした。
<まん延防止、18都道府県延長 水際対策は緩和>
岸田首相は、今月6日を期限としている31都道府県の「まん延防止等重点措置」に関し、13県で期限通り解除する一方、18都道府県で21日まで延長する方針を示した。水際対策については今月14日から1日あたりの入国者数の上限を7000人とし、現在の5000人から引き上げることも表明した。
重点措置を解除するのは福島、新潟、長野、三重、和歌山、岡山、広島、高知、福岡、佐賀、長崎、宮崎、鹿児島の13県。それ以外の北海道、青森、茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、静岡、石川、愛知、岐阜、京都、大阪、兵庫、香川、熊本の18都道府県は延長する。4日に正式に決める。
今年度末を期限としていた実質無利子・無担保融資については、中小企業の資金繰りや事業継続を支援するため6月末まで延長するとともに、事業者の返済負担を軽減するため15年の融資期間を20年に延長する。
(杉山健太郎)