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焦点:新型コロナで世界需要減退、日本は自動車輸出「蒸発」で停滞長期化

発行済 2020-04-20 16:39
更新済 2020-04-20 16:45
© Reuters. 焦点:新型コロナで世界需要減退、日本は自動車輸出「蒸発」で停滞長期化

中川泉

[東京 20日 ロイター] - 新型コロナウイルスが日本の輸出に新たな影を落とし始めている。2月に問題となっていた中国工場の停止による供給制約の影響は薄れたが、3月からは欧米での需要減で輸出全体が急減している。世界の需要、特に自動車需要の「蒸発」が日本経済の原動力である外需を萎縮させ、感染拡大が終息してもなお需要の回復には時間がかかるとの見方が広がっており、経済停滞は長期化しそうだ。

<米国自動車市場の打撃>

3月の特徴の一つは、感染拡大をいち早く抑え込んだ中国経済の底打ち感だ。すでに鉱工業生産が回復に転じ始めており、SMBC日興証券の試算によると、3月は季節調整後の前月比で17.7%増と明確に増加。この生産水準が4月以降に継続すれば、4─6月期は 前期比年率50%以上の急増となる見込みという。

日本では、2月の段階ではまだ中国での工場停止などを背景に輸入額が前年比でおよそ14%減と2桁減に落ち込み、生産も在庫でしのいではいたものの前月比で3カ月ぶりに減少に転じていた。

しかし、3月は別の様相が浮き彫りとなっている。輸入の減少幅は半分に縮んだ一方で、輸出は2桁の大幅減となった。輸出はすでに前年比で16カ月連続で減少しているが、3月の減少幅11.7%減は2016年7月以来の落ち込みだ。

その主因は、世界的な自動車需要の蒸発だ。自動車は日本の輸出の2割を占めるが、その最も大きな輸出先である対米輸出は2月の前年比2.6%減から3月には16.5%減に急激に落ち込んだ。欧州連合(EU)向けもアジア向けも同様に、2─3割の減少となっている。

米国では、外出規制やマインド低下で消費の悪化が著しい上、ほとんどの自動車工場が操業停止を余儀なくされ3月は新車販売台数や部品生産が前月比3割程度減少。米国の自動車メーカーの再開時期は19日時点で未定、日系メーカーも4月中の生産停止を決定している。こうしたことが、日本の主力商品である自動車に大きく影響したもようだ。

トランプ米大統領が経済活動再開のガイドラインを示したが、SMBC日興証券の丸山義正・チーフマーケットエコノミストは「多くの州知事は大統領より厳格な基準を示して対抗するだろう」として、現実には米国の経済活動の再開は大統領の見通しよりも先になるとみている。

<需要回復には時間>

農林中金総研の南武志・主席研究員は「3月貿易統計では、中国以外の地域での経済落ち込みが強まった。この影響は4月以降もしばらく続く可能性がある」と指摘する。

バークレイズ・リサーチは、20年の世界経済成長率はマイナス1.6%と予想、日本の実質輸出は前年比21.9%程度減少すると試算している。名目輸出金額は昨年の76兆円から今年は60兆円まで減少し、もし主要国の設備投資や新車販売のが世界景気が後退していた09年なみの落ち込みとなれば、名目輸出金額は25兆円まで減少すると見通している。

輸出の減少は、生産に影響しかねない。鉱工業生産の予測指数では3月は経済産業省の補正後ベースで前月比3.1%と大幅な減少が見込まれている。4月には同7.5%の急反発が予想されているが、企業がこのペースで増産すれば、在庫の積み上がりにつながる可能性もある。

4月ロイター企業調査では、企業は需要回復を慎重にみていることが明らかとなっている。回復時期については6割が見通しが立たないと回答。自動車業界からは「感染拡大が終息しても、需要回復は先のことになりそうだ」といったコメントも寄せられた。

また、世界の中で先行して感染拡大に歯止めがかかってきた中国だが、生産回復だけが先行しているのが実情で、世界需要の蒸発の下では輸出回復は程遠い状況だ。中国税関総署によれば、3月の輸出は前年同月比3.5%減とまだマイナスが続いており、国内消費も冷え込んだまま。中国以外の国についても同様で、感染拡大の終息後も経済はⅤ字回復は容易でないとみられ、日本の輸出の回復も鈍い推移となる可能性が高そうだ。

BNPパリバ証券の河野龍太郎・チーフエコノミストは「世界に先駆け感染拡大と収束を経験した中国は、ウイルスを封じ込めた後の各国経済の先行きを占う指針となるが、3月時点での 内需の回復は極めて緩慢」と指摘。経済活動の本格的な再開と感染拡大のジレンマにより慎重にならざるを得ないのは、各国とも共通の課題だ。このため、世界的な経済回復は当面展望できないというのが、多くのエコノミストの共通した見通しとなっている。

(グラフ作成・編集 田中志保)

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