[ブリュッセル 22日 ロイター] - 欧州議会のサッソーリ議長は22日、欧州連合(EU)が合意した大規模な新型コロナウイルス対策を安易に承認することはないと述べた。研究費削減の撤回を求めるほか、支援対象を民主的な政策を進める国に絞る姿勢を示した。
サッソーリ議長は、EU首脳が前日に5日間の協議を経て合意に至った7500億ユーロ(8650億ドル)の復興基金を歓迎する一方、関連する1兆1000億ユーロ(1兆2700億ドル)のEU予算の内容を変えたいと述べた。
サッソーリ議長は記者会見で「検討する案は準備ができたが改善したい。とりわけ、正当化できないと判断した経費削減について、解決策を見いだすよう努める」と述べた。
EUが大規模な共通債券を発行するのは初めてで、フランスのマクロン大統領は「歴史的な打開策」と評価した。EU首脳は、温暖化防止対策や研究、域内の留学促進を目的とした「エラスムス計画」に充てる費用を削減することで合意に至った。
EU規制では、欧州議会が合意案を承認しなければならない。承認されれば資金は2021年初めから中頃にかけて各国に行き届く見込みだが、合意を破綻させずに欧州議会がどのように修正するのかは今のところ定かでない。
欧州各国は第二次世界大戦以降最も深刻な景気後退(リセッション)に陥っており、計画を遅らせたくない意向だ。近いうちに資金を提供しなければ復興基金の効果が薄れると主張している。
ただサッソーリ氏は、21ー27年のEU予算について「研究や若者、エラスムスの予算を削減することはできない」と述べ、妥協の姿勢を示さなかった。
EU首脳はまた、ハンガリーやポーランドなど報道の自由や人権に関する民主主義的価値観を尊重していない国に対する資金提供を限定することも協議していたが、こうした国に条件は課さなかった。サッソーリ氏は「民主主義の原則を公言するだけでは納得がいかない」と述べ、こうした国に無条件で貸し出すことを認めないとした。
サッソーリ氏は、復興基金と予算双方に関する議会の最終採決を数カ月中に行うと述べた。