[フランクフルト 10日 ロイター] - 欧州中央銀行(ECB)は10日、新型コロナウイルスの感染第2波に対応しユーロ圏経済を支援するため、追加の金融緩和策を打ち出した。
パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)の全体的な規模を1兆8500億ユーロに5000億ユーロ拡大するほか、期間を2022年3月まで9カ月間延長する。政府や企業の借り入れコストを過去最低水準で維持することが狙い。
償還を迎えた緊急購入債券の再投資を23年末まで1年延長することも決定。貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の期間も1年間延長し2022年6月までとした。期間3年のオペを追加的に3回実施し、このうち少なくとも1回を21年12月に実施するとした。今年春に導入した担保条件の緩和も22年6月まで延長する。
声明で「パンデミックの動向やワクチンの供給時期など不確実性は依然として高い」と指摘。「中期的なインフレ見通しに影響を与える可能性から為替レートの動向も引き続き注視していく」とした。
中銀預金金利はマイナス0.50%、主要政策金利は0.00%で据え置いた。金利据え置きは予想通り。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、「入手されたデータ、およびECBスタッフ予想で、パンデミック(世界的大流行)で経済が短期的に一段と大きな影響を受け、インフレが当初の予想より長期的に低迷する恐れがあることが示されている」と述べ、回復過程は一様にはならないとの見方を示した。
ECBは今回のスタッフ予想で、21年のユーロ圏の経済成長率を3.9%とし、前回9月の5.0%から下方修正。ただ22年は3.2%から4.2%に上方修正した。
インフレ率については21年は1.0%と、従来見通しを維持。22年については1.1%と、1.3%から下方修正した。23年は1.4%になると予想。ただ2%に近いがこれを下回る水準としているECBの目標にはなお届かない。
ラガルド総裁は、「十分な集団免疫が得られ、21年末までに経済がより正常な状態で機能し始めると期待する根拠はある」とし、「景気回復を大きく進展させ、かつ持続可能にするために、集団免疫が得られるまで、つなぎ的に支援することが重要」と指摘。以前ほどは強くないもののユーロ圏経済に対するリスクはなお下向きに傾いているとし、「不確実性は高い。ECBはあらゆる政策措置を適切に調整していく用意を引き続き整えている」と述べた。
複数の関係筋によると、ラガルド総裁は今回打ち出した措置に「過半数」の支持を確保したものの、決定は全会一致ではなかった。
関係筋によるとPEPPの規模拡大を巡り、一部メンバーが約6000億ユーロを提案した一方、他のメンバーは4000億ユーロに近い額を示し、双方が中間の5000億ユーロで折り合った。9カ月の期間延長については、見解の相違はなかった。
ECBの今回の決定はおおむね予想通り。ただ一部では、これまでに打ち出された危機対応策と比べると矛先が鈍いとの見方も出ている。ピクテ・ウェルスマネジメントのストラテジスト、フレデリック・デュクロゼ氏は「来年に一段と状況が悪化した場合に追加策を実施せずに済むよう、TLTRO関連を含め、ECBはより広範な措置を打ち出すべきだった」と述べた。
*内容を追加しました。