[6日 ロイター] - 新型コロナウイルスと、その感染症治療薬とワクチン開発に向けた取り組みに関する最新の研究情報の概要を以下にまとめた。
<コロナが脳に直接感染せず損傷与える可能性>
新型コロナウイルスが脳組織に直接侵入することなく損傷を与え得ることが、米国立神経疾患・脳卒中研究所(NINDS)などの共同研究で明らかになった。
医学専門の米誌ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシンに掲載された論文によると、研究チームは新型コロナで死亡した19人の脳について、においを処理する「嗅球」や心拍および呼吸などを制御する「脳幹」といった、同ウイルスで障害が起きやすいとされている領域を中心に調べた。
このうち、14人の患者でこれらの領域の血管が詰まったり、血液が漏出するなどの損傷を受けていたが分かった。ただ、漏出している部位の周辺が免疫反応で炎症を起こしていたにもかかわらず、新型コロナウイルス自体の形跡は見つからなかったという。
論文の共同執筆者であるNINDSのアビンドラ・ナス氏は、文書で「われわれは完全に意表を突かれた」と指摘。脳組織の損傷は脳が新型コロナウイルスに直接感染したためではない可能性があるとし、今後、脳の血管に同ウイルスが与える悪影響について調べるつもりだと続けた。 (https://
<ワクチン接種1回に減らし普及優先を>
米国の3つの研究グループは5日、米医学誌「アナルズ・オブ・インターナル・メディシン」にそれぞれ掲載した論文で、現在米国で供給されている新型コロナウイルスワクチンについて、2回の接種回数を1回に減らせば、有効率が低下しても接種人口を増やすメリットがあると論じた。
エール大学公衆衛生大学院の研究チームは2回の接種で有効率95%を確保するより、1回に減らせばこれより低い有効率で接種人口が拡大するというメリットが得られると指摘。ワシントン大のチームは1回の接種でワクチン普及率を2倍にすれば感染率を押し下げ、早期にコロナを抑制する効果が見込まれるとした。
スタンフォード大のチームは一部の人に対して2回目の接種を遅らせれば、接種人口を何百万人も増やせるとした。
米外交問題評議会のトマス・ボリキー氏は論文に付随する文書で「完璧な結果が見込めなくても、より多くの人を迅速に助けられる方法を取るというのは説得力がある議論だ」と強調。ただ、実際にそのような成果が出るかどうかについては不確実性があるとした。
<NY市の少数人種で「コロナ抜け毛」急増>
米皮膚科学会雑誌に掲載された論文によると、マイノリティー(少数人種)が多いニューヨーク市では休止期脱毛症(TE)患者の割合が昨年8月に2.3%と、新型コロナウイルス流行前の約5倍に急増、コロナに伴うストレスで髪の毛が抜ける人が増えている可能性を示した。
特にコロナの致死率が顕著に高いヒスパニック系が多く住む地域でTE患者の増加が目立ったという。ただ、コロナの悪影響が同様に大きい黒人の間ではTEの増加は見られなかったという。