[ロンドン 17日 ロイター] - 英国立統計局(ONS)が17日発表した統計によると、7月の国内就業者数が前月から18万2000人増加し、新型コロナウイルス禍前の水準に近づいた。また、給与の伸びも過去最高を記録した。
就業者数は2890万人で、新型コロナ感染が拡大する前の2020年3月の水準を20万1000人下回っている。
4月─6月の英失業率は4.7%に低下し、昨年6─8月以来の水準となった。ロイターがまとめたエコノミスト予想は4.8%だった。
今回の指標は、全体的に経済がパンデミック(世界的大流行)から脱却し、当初の懸念より長期的な打撃が小さいとの見方を強めるとみられる。
インベステックのエコノミスト、エリー・ヘンダーソン氏は「全体としては、労働市場が急ピッチで改善していることが再び明らかになった」とした上で「最新データでは、一時帰休者は6月時点でまだ190万人いる。9月の雇用助成金制度の終了に労働市場がどう反応するかが、本当の試練となる」と述べた。
JPモルガンは、今回の統計が良好な内容になったことを受けて、イングランド銀行(英中央銀行)の利上げ開始時期の予想を6カ月前倒しし、2022年第2・四半期とした。これは金融市場の予想とほぼ一致している。
16日公表のロイター調査では、利上げ開始時期は2023年以降との予想されていた。
KPMGのチーフエコノミスト、ヤエル・セルフィン氏は、「コロナ関連の規制が緩和されたことで経済が加速し、労働市場は予想を上回る結果になった」と話した。
ONSによると、週当たりの総労働時間はパンデミック以降初めて10億時間を超え、一時帰休対策の終了前に懸念されていた解雇の急増は見られなかった。
コロナ対策の雇用助成金は昨年5月のピーク時には890万件の雇用に支給されていたが、今年6月末には190万件まで減少した。
スナク財務相は「まだ増減はあるかもしれないが、データは明るい内容だ」と指摘。現在は、給与を得ている雇用者が昨年3月以降で最も多く、一時帰休者も助成金制度の開始以来で最も少ないとした。
5─7月の求人件数は95万3000人と過去最高を記録し、新型コロナ禍前の水準を16万8000人上回った。新型コロナのロックダウン(都市封鎖)解除に伴い経済活動が再開される中、雇用主の多くは人材確保に苦慮していると述べている。
また、4─6月の平均週給は前年比8.8%増となり、20年前の統計開始以来最高となった。ただ、上振れの要因はコロナの影響とされている。
ONSは、実質的な賃金総額の伸び率を前年比4.9-6.3%と推定しているが、複数の不透明要因があると指摘している。
パンセオン・マクロエコノミクスのエコノミスト、サミュエル・トゥームズ氏は、雇用助成金制度の終了後に、賃金が伸び悩む可能性が高いとの見方を示した。