[東京 16日 ロイター] - 9月ロイター企業調査によると、新型コロナウイルス感染症による事業への影響は、75%の企業が依然としてマイナスと回答した。ワクチン接種が進み、一部の国では経済が正常化しつつあるものの、影響を脱したとは言い難い状況が続いている。ただ、マイナスの影響があるとした企業も、そのうち80%が来年度内に終息するとみている。
コロナ後の経済活動においては、ライフスタイル・消費行動や需要構造の変化、デジタル化の促進、カーボンニュートラルに向けた動きなどが注目されている。
調査期間は9月1日から9月10日まで。発送社数は503社、回答社数は261社だった。
足元でのコロナの事業への影響については「マイナスの影響」が31%、「ややマイナスの影響」が44%となった。東南アジアでの感染拡大により、部品の流通が滞るなど、サプライチェーンに大きな影響を与えている。
国内では、都市部での緊急事態宣言が続いており、外食や旅行業で厳しい状況に変化はない。「ワクチン接種が進んでも変異株の発生もあり、短期で終息することはない」(サービス)と先行き悲観的な見方も出ている。一方では、食品や小売り業界において「内食需要の増加により販売量が増加」というプラス面の指摘もあった。
こうしたマイナスの影響が終息する時期については「今年度中」が21%、「来年度上期」が20%、「来年度中」が39%と見方が分かれたものの、合計すると、来年度中に終息とみる割合が80%となった。
日本経済についても、コロナ禍前に戻る時期として、来年度内とする回答が53%と半数を超えた。ただ、回答には「希望であり正直分からない」(小売り)という指摘もあり、確信を持って先行きを見ることができる状況には至っていない。
さらには「コロナ禍前の経済状況には戻らない」(輸送用機器)、「変異株とのいたちごっこが繰り返され、根本的な終息にはしばらく時間がかかると思われる」(窯業)といった意見もあり、24年度以降という回答も16%にのぼった。
コロナ禍で進んだテレワークなど行動様式の変化は、ポストコロナにおける企業の事業戦略に影響を与えそうだ。また、政府が成長戦略と位置付けるカーボンニュートラルは「関連した新しいビジネス、プロジェクトへの参入に注力したい」(窯業)、「事業発展の機会となり得るので注力している」(機械)との声が複数出ており、ビジネスチャンスと捉えられている。
一方では「新たなビジネス領域として仕掛けてくる勢力に日本は完全に立ち遅れている」(輸送用機器)、「サービス産業がリベンジ消費に耐えるだけの体力がないと、V字回復ができない」(化学)など、すでにコロナ後の日本経済への懸念も出ている。
(清水律子 グラフィック作成:照井裕子 編集:橋本浩)