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アングル:地方に偏るプーチン氏の動員、病死者にも招集令状

発行済 2022-09-27 13:23
更新済 2022-09-27 13:27
© Reuters.  9月23日、ロシアのプーチン大統領がウクライナで戦うロシア軍の増強に向けて部分動員令を発した次の日、徴兵担当者がアレクサンドル・ベズドロズニーさんの家を訪問した。写真は

Felix Light

[ロンドン 23日 ロイター] - ロシアのプーチン大統領がウクライナで戦うロシア軍の増強に向けて部分動員令を発した次の日、徴兵担当者がアレクサンドル・ベズドロズニーさんの家を訪問した。彼らが手にしていたのは、軍務に就くよう出頭を命じる招集令状だった。

ところが、当のベズドロズニーさんは、すでに故人だった。

慢性肺炎を患っていたベズドロズニーさんは、コロナ禍が猛威を振るっていた2020年12月、モンゴルのすぐ北に位置する街ランウデの病院で人工呼吸器につながれたまま40歳で亡くなっていた。ロイターの取材に応じたのは、姉のナタリア・セミョノワさんだ。

「弟が死んでから、ようやく国が弟のことを思い出してくれたというのが辛い」 

プロのミュージシャンで、ウランウデの人権活動家でもあるセミョノワさんは、亡き弟に届けられた招集令状についてこう語る。

「弟は兵役免除の対象者で、軍務に就いたことは一度もなかった」

ウランウデが位置するロシア極東ブリヤート共和国は、バイカル湖の南岸を囲む農村中心の地方だ。ここでは今回の動員令で、年齢や軍歴、病歴などに関係なく招集された男性がいることが、地元の住民や人権活動家、さらには地元当局者らの声明から判明している。

ブリヤートの人権活動家は、動員令や戦争自体の重荷が、少数民族が暮らす貧しい地域に偏って押しつけられているとみている。6000キロ離れた首都モスクワで市民の怒りを招くのを回避するためだ。

ロシアでは多数派のスラブ民族の他に何世紀にもわたって数百の民族集団が住んでおり、プーチン大統領は常々、ロシアは多民族国家であり、どの民族出身でもロシアのために戦う兵士は全てが英雄であると強調している。

ショイグ国防相は、21日にプーチン大統領が部分動員令を発した直後に、今回の動員令の対象は全市民ではなく、過去に軍務に就き、戦闘経験や特別な軍事技術を持つ予備役だけだと表明した。

だが、ブリヤート共和国では動員に対する反発があまりにも強かったため、同共和国のアレクセイ・ツィデノフ首長は22日、軍務経験がなかったり、健康上の理由で免除対象となる人は招集されないことを確認する声明を出した。だがツィデノフ氏も、非対象者にも招集令状が出されたケースがあることを認めている。

ツィデノフ氏はテレグラムに、「今朝以降、招集を受けた非対象者70人が集合場所や軍部隊から自宅に戻っている」と投稿。招集令状に誤りがある場合は、「裏付けとなる書類を添えて、集合場所の新兵募集事務所の担当者に伝えるだけでいい」と付け加えた。

この状況について、ウランウデの徴兵当局とモスクワの国防省にコメントを求めたが、回答は得られなかった。

<地方に偏る動員>

動員された人々への法律上の支援を提供する団体「自由ブリヤート基金」のアレクサンドラ・ガルマツァポワ氏は、「ブリヤートでの徴兵は部分的なものではない。誰もが対象になっている」と指摘する。

自由ブリヤート基金には、親族が招集令状を受け取った住民からの支援要請が数百件寄せられている。ガルマツァポワ氏によれば、多くは40歳以上で、徴兵を免除されるべき健康上の問題を抱えているという。

ガルマツァポワ氏の推測では、この地域では部分動員が始まった最初の夜に4000─5000人の住民に招集令状が送られた。同氏によれば、夜のうちに当局者が招集令状を送達した例が多く見られる。

独立系ニュースサイト「ルディ・バイカラ(バイカル湖の人々)」は、ブリヤート共和国の人口97万8000人のうち、6000─7000人が動員されると推定している。

ブリヤート共和国にあるオロンゴイ村は、2010年の時点で人口1700人。住民の1人が匿名を条件にロイターに語ったところでは、この村から106人の男性が徴兵されたという。

ロイターでは、同村やもっと広い地域で招集された実際の人数を確認することはできなかった。

ブリヤート共和国の人口の約3分の1はモンゴル系民族のブリヤート人で、仏教徒が中心だ。ガルマツァポワ氏によれば、この地での大規模な動員は、中央政府を喜ばせたい地方当局の思惑が働いた政治的な選択だという。

「ロシア連邦の中枢は、サンクトペテルブルクやモスクワには手を付けようとしていない。モスクワで徴兵を行えば、中央政府に対する抗議行動が起きる可能性がある」

<高い死傷率>

ロシアの調査報道サイト「iStories」がまとめた戦争の犠牲者に関する公開データによれば、2月24日にウクライナ侵攻が始まって以降のブリヤート共和国と北カフカス・ダゲスタン共和国出身兵士の死者数はそれぞれ259人と277人で、死傷率が最も高くなっている。両共和国ともロシア連邦全体の平均よりも貧しく、またロシア人以外の民族の人口が多い地域だ。

モスクワ出身の戦死者はわずか10人だった。

ロシア国防省は21日、開戦以来約6000人のロシア軍兵士が戦死したと述べたが、戦死者数の地域別の内訳は明らかにしていない。

ガルマツァポワ氏によれば、ブリヤート共和国の住民の中には、国境を越えて隣国モンゴルに逃れようとする人もいた。ロシア国民はビザなしで30日間モンゴルに滞在することができる。22日には人里離れた国境地帯の検問所で出国を待つ長い車列の映像がソーシャルメディアに投稿されたが、ロイターではその真偽を確かめることができなかった。

国内で徴兵を回避する方に賭ける人もいる。

ウランウデの学生ナスチャさん(21)は、彼女の父親に22日に届いた招集令状の画像をロイターに見せてくれた。ジャーナリストの父親は45歳で、これまで近視を理由に軍務に就くことは一度もなかったという。

ナスチャさんの母親はすでに亡く、今は父1人娘1人。父娘は招集令状を無視することに決めた。罰金を科されるリスクはあるが、徴兵免除を勝ち取るため弁護士とも契約した。

「リスクを取ることに決めた。私は父親まで失いたくない」と、ナスチャさんは話した。

(翻訳:エァクレーレン)

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