[東京 18日 ロイター] - 成田国際空港(千葉県成田市)の田村明比古社長はロイターのインタビューに応じ、水際対策の大幅緩和と円安で入国者数が増加傾向にあるとする一方、新型コロナウイルス前の水準に戻るまでにはなお時間がかかるとの見通しを示した。訪日客の中で最大の割合を占めていた中国人の動向が鍵で、同国の出国規制が緩和される必要があるとした。
同社が運営する成田空港は国際線旅客数が日本最大。田村社長によると、コロナ流行前の2019年比で2割程度だった入国者数は今月11日以降、およそ3割まで戻ってきた(同社調べ)。政府は同日から入国者数の上限を撤廃、外国人の個人旅行を受け入れ、対象国・地域からの短期滞在者ビザ免除を再開した。
政府は32年ぶりの安値水準まで下落した円相場も追い風に訪日外国人の呼び込みを狙うが、成田の国際線利用者数はコロナ流行前の水準には程遠い。田村社長は「日本だけが開いても駄目で、中国が変わらないと駄目だ」と語った。
コロナ前は成田空港を利用した訪日外国人の約2割を中国人が占めていたが、中国では実質的に行動が制限されるゼロコロナ政策が続いている。観光庁によると、19年の訪日中国人は過去最高の950万人超で、訪問客全体の約3割を占めた。
国際航空運送協会(IATA)の予測では、世界の旅行者数は19年比で24年に103%とコロナ前を超えるが、アジア太平洋地域に限ると97%にとどまり、コロナ前を超えるのは25年となる見込み。アジア太平洋では中国で制限が緩和されておらず回復が遅れるとみているためだ。
成田では11日以降、空港内の物販・飲食店が徐々に再開しているものの、約260ある店舗の半数近くがまだ休業のまま。航空・旅行業界は全国規模で離職者が出ており、人手不足が「非常に大きなダメージ」(田村社長)となっている。空港側も店舗に旅客需要予測を提供したり、賃料の支払い猶予などの支援を続けているが、労働力を確保できるようになるまでには時間がかかると田村社長はみている。
田村社長はまた、成田はこれまで「日本人が海外旅行に行くための空港」だったが、今後は外国人の旅行者や乗り継ぎ客に対応した店舗を充実させる必要があると話した。長期的には3つのターミナルを1つに集約し、利便性を高めることも重要だとも語った。
*インタビューは14日に実施しました。
*システムの都合で写真を差し替え再送します。