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アングル:日常への回帰急ぐ世界、取り残される「コロナ孤児」

発行済 2023-06-19 19:01
更新済 2023-06-19 19:09
© Reuters.  英医学誌ランセットが2022年に行った調査によれば、親もしくは扶養者の少なくとも一方を新型コロナで失った子どもは、1050─1240万人に達すると推定されている。悲しみ

Lin Taylor

[14日 トムソン・ロイター財団] - インドネシアで新型コロナウイルスの第2波がピークに達していたとき、ラナさんは8歳だった。最初に父親、続いて母親が感染した。2人は快復せず、2021年6月、数時間の間隔でこの世を去った。

それから2年、ラナさんは今も西ジャワ州の実家で暮らし、学校に通っている。23歳の姉が家計を支えるために衣料品工場で長時間働きながら、ラナさんの面倒を見ている。

「両親がいなくなってから、もっぱら私が家族を支えている。容易なことではない」とラナさんの姉は言う。プライバシー保護のため、自身は匿名を、妹についても仮名で掲載することを希望している。

姉はトムソン・ロイター財団の取材に対し「妹を1人で残していくときには、いつもとても心配している」とメールに記した。

英医学誌ランセットが2022年に行った調査によれば、親もしくは扶養者の少なくとも一方を新型コロナで失った子どもは、1050─1240万人に達すると推定されている。悲しみもさることながら、一家の主たる稼ぎ手を失ったことで貧困に苦しんでいる例も多い。

「扶養者を失うことは、稼ぎ手を失うことも意味している。家計という点では悪循環であり、最貧困層が最も打撃を受けている」と語るのは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンの臨床心理学者、ロレーヌ・シェール教授。同教授はコロナによる孤児に関するグローバルな研究グループにも所属している。

インドネシアを含め、コロナ禍による大きな打撃を被った国の中には、「コロナ孤児」のための支援を実施している例もある。しかし研究者や子どものための慈善団体は、世界がコロナ禍の影から脱し、緊急支援が縮小される今、孤児たちが取り残されているのではないかと懸念している。

オックスフォード大学のコンピューター科学者、セス・フラックスマン准教授は、「私たちは自分たちの生活を前に進め、ニューノーマルの日常へと戻りつつある。だが扶養者を失った子どもたちは元には戻れない」と語る。同准教授は、コロナ禍による死亡統計のデータを用いて孤児の数を推定する作業に貢献した。

世界保健機構(WHO)は5月、コロナ禍による3年に及ぶグローバル緊急事態の終了を宣言し、新型コロナによる包括的でリアルタイムの死亡統計も更新されなくなった。それとともに、研究者らが孤児の数を正確に試算することも困難になっている。

フラックスマン准教授に協力したインペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者ジュリエット・アンウィン氏は、このままでは、将来的に多くの孤児が把握されないままとなり、専門的な支援サービスもさらに後退することになりかねない、と語る。

<親を失った子どもたち>

2019年末に確認されて以来、パンデミックは全世界で690万人以上の命を奪った。だが、慈善団体や研究者らによれば、取り残された子どもたちのメンタルヘルスや経済的支援は十分ではないという。

親を失ってしまった子どもは、メンタルヘルスの問題に悩まされる、学校をやめてしまうといったリスクが高くなり、薬物乱用や性的搾取の犠牲になる可能性も増える、とシェール教授は指摘する。

ペルーやブラジルのように死者が多かった非富裕国の中には、新型コロナで親を失った子どもを支援するために、保護者に経済的支援を提供した国もある。大きな打撃を受けたコロンビアでも、同様の法案が議会に提案されている。

インドネシアでは、約34万1000人の子どもが保護者の少なくとも一方をコロナ禍のために失っている。これはインドに次いで世界で2番目に大きな数字だ。当局と慈善団体「セーブ・ザ・チルドレン」は、パンデミックのあいだ、孤児のための資金支援とカウンセリングを提供していた。

だが、ラナさんの姉によれば、そうした支援も昨年には終了してしまい、自分たちで何とかしていくしかなくなった。

「長期的に見れば、支援は足りていない」と彼女は言う。

「セーブ・ザ・チルドレン」の広報担当者デウィ・スリ・スマナ氏は、孤児となった子どもの養育責任が、子どものニーズに応じる準備ができていない親戚に委ねられてしまうことが多い、と指摘する。

「子どもは、特に両親ともに失った場合には、深い悲しみを味わっている。罪悪感を抱く子もいれば、親の死に目に会うことができなかったことで怒りを感じる子もいる」とスマナ氏は言う。

「だが、そうした子どもたちの面倒を見ている親族のことも忘れてはならない。特に彼らが貧しい暮らしをしている場合には」

<「コロナ世代」の子どもたち>

世界の「コロナ孤児」の多くは、貧困率の高い国にいる。インペリアル・カレッジ・ロンドンのデータによれば、南アジアと東南アジアでは約270万人、アフリカでは219万人の子どもが、コロナ禍により少なくとも片方の親を失っている。

だが、慈善団体や子どもの権利の擁護団体は、富裕国であっても、政治の関心が別の部分に移ってしまったため、「コロナ孤児」は不安定な将来に直面していると言う。

英国の孤児支援慈善団体「ウィンストンズ・ウィッシュ」のサービス担当ディレクター、レティツィア・パーナ氏は、「私たちが、コロナにより親を奪われた子どもを完全に見失っていないと願いたい」と言う。

パーナ氏は、政府による支援が乏しいため、孤児支援の慈善団体がそのギャップを埋めているものの、悲しみに立ち向かおうとする若者が増える中で、その需要は増大し続けている、と語る。

それでも、前出のシェール教授によれば、少額の支援金やカウンセラーによる定期的な訪問、あるいは同じ境遇の子どもたちのネットワークに参加するだけでも、孤児となった子どもの将来にとっては大きな差が生まれるという。

インペリアル・カレッジ・ロンドンのデータによれば、インドでは200万人以上の子どもがコロナ禍により孤児になったとされる。インドで最も人口の多いウッタルプラデシュ州では2021年、地元当局と国連児童基金、さらにはメンタルヘルスの問題に取り組む「マインド・パイパー」の提携により、現金給付とカウンセリングによるプログラムが開始された。

プログラムを主導するUNICEFの社会政策専門家ピウシュ・アントニー氏は、このプログラムでは、子どもや親族がトラウマや悲しみに対処することを助け、学校教育からのドロップアウトや児童労働、低年齢での結婚を防ぐために継続的な経済支援を行ったと語る。

このプログラムは、孤児500人を含む1万人の恵まれない子どもたちを支援することを目標に掲げ、昨年12月に終了したものの、州政府は子どもたちが18歳に達するまで支援を続けるとしている。

アントニー氏によれば、両親を失って同プログラムの支援を受けた少女は、あきらめざるをえないと考えていた夢を実現し、現在、大学で工学を学んでいるという。

「亡くなった親は二度と帰ってこない」とアントニー氏。

「だが、この種の介入を通じて、少なくともこの世代の子どものために、本来なら回避できる長期的な影響が出ないようにすることはできると信じている」

(翻訳:エァクレーレン)

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