■中長期の成長戦略
アクセル (T:6730)は、今後の成長戦略として遊技機器市場での事業規模拡大と合わせて、その他市場への展開により第2、第3の事業の柱を育成することで持続的な成長を目指している。
また、経営指標としては早期にROE10%を回復したい考えだ。
今後の事業戦略については以下のとおり。
1. 遊技機器市場での事業規模拡大
遊技機器市場向けに関しては、グラフィックスLSIの市場シェア拡大に加えて、基板モジュールでの販売拡大、その他周辺LSIの拡充を図ることで機器1台当たり販売単価をアップし、事業規模を拡大していく戦略となっている。
2020年3月期にはグラフィックスLSIの市場シェアで57%(2017年3月期実績45%)、基板モジュール販売比率で46%(2017年3月期実績は0%)を目標としている。
市場シェア拡大戦略の1つとして、顧客のコンテンツ開発の生産性向上に寄与する統合開発支援ツール「DUKE」を「AG6」の投入に合わせて本格的に提供開始し、顧客の囲い込みを進めていく戦略だ。
遊技機器メーカーでは年々増大する開発費用の低減が経営課題の1つとなっているため、「DUKE」の導入が進む可能性は高いと弊社では見ている。
一方、周辺LSIの分野ではメモリモジュールで汎用性に優れる次世代品を開発し、採用機種や顧客数を増やしていくほか、2017年3月期より本格量産を開始した複数パネル搭載機向けの多画面分割用制御LSIの増加が見込まれる(2017年3月期8万個→2018年3月期10万個超)。
また、LEDドライバやセンサーなども高効率な新製品を開発し、販売を拡大していく方針だ。
2. 組込み機器向けグラフィックスLSIの販売拡大
組込み機器向けグラフィックスLSIでは、2017年3月期に量産販売を開始した「AG903」の拡販に注力していく方針となっている。
産業用途での新規顧客開拓を進め、年間販売個数で10万個強を目指していく(2017年3月期の組込み機器向けグラフィックスLSIの販売実績は4.3万個)。
従来品は主に医療機器や計測器、建設機械等のモニタ用途に採用されていたが、「AG903」では高速CPU、大容量RAMを内蔵し従来品よりも大幅に高性能化を実現した製品となっており、従来用途だけでなく車両設備や各種製造設備のモニタ用途、あるいはアミューズメントホール向けで顧客開拓を進めていく方針となっている。
また、営業活動を強化するため、アライアンス先の拡充も進めている。
3. ソフトウェアIP、ミドルウェア製品(AXIP)で新規市場を開拓
同社では今まで蓄積してきた要素技術(画像・音声圧縮、画像拡大、超解像、暗号化技術等)を需要が見込める市場向けにカスタマイズして、ソフトウェアIPやミドルウェア製品としてライセンス販売し、新たな収益柱として育成していく方針を示している。
なお、同社はこれらソフトウェアIPやミドルウェア製品を総称してAXIPと呼んでいる。
AXIPの第1弾としては、2015年2月にムービーミドルウェア「H2MD」の提供を開始している。
「H2MD」の特徴は、複数動画の同時再生や透過レイヤー(動画の重ね合わせ)制御が可能なこと、CPUの負荷が少ないこと等が挙げられる。
2016年5月には、リッチラボ(株)と「H2MD」を利用したスマートデバイス向けの動画広告事業でも協業を開始している。
また、2017年4月には音声圧縮技術を用いたゲームアプリ向けサウンドミドルウェア「C-FA(シーファ)」の提供を開始している。
「C-FA」の特徴は、汎用的な音声コーデックと同等の音質を半分程度のCPU負荷で実現できること、マルチプラットフォームに対応していること、なめらかなループ再生や低遅延再生を可能としていること等が挙げられる。
CPU負荷が半分程度となるため消費電力の低減や消費メモリ量の削減に寄与する技術となる。
同社では、「C-FA」「H2MD」の技術力をゲーム開発者向けにアピールするため、自社でもこれら技術を用いたスマートフォン用ゲームアプリ「夢幻のラビリズ」を開発中で、2017年8月頃の配信開始を予定している。
同アプリは無料配信(アプリ内課金あり)だが、市場の反応次第ではパブリッシング事業の可能性についても検討していくことにしている。
その他にも、2017年中に画像圧縮技術や画像拡大、超解像技術を用いた製品を、2018年には暗号化技術を用いた製品をそれぞれ投入する予定となっている。
画像拡大、超解像技術とは、モニタ上に表示される文字や絵などを拡大した時に、通常はジャギー状(ギザギザ状)になってしまう輪郭部分を滑らかで自然な状態に補正する技術となる。
また、暗号化技術についてはグラフィックスLSIと関係のない技術のように見えるが、パチンコ機器のデータ情報は外部に漏れても判別できないようにするため暗号化されており、同社もグラフィックスLSIの開発を進めるうえでその技術を蓄積してきたものと見られる。
これらAXIPのターゲット市場としては、Web広告やゲームアプリのほか車載機器、カラオケ機器、放送・VR機器、セキュリティ分野等となる。
このうち、カラオケ市場向けについては、2017年4月に資本業務提携先であるエスディーテックが、カラオケ店舗の選曲リモコン端末向けに提供するGUI演出用ビデオコーデックライブラリに同社のムービーコーデック技術を使用することを発表している。
選曲リモコン端末上に表示される店舗連動型キャンペーン告知サービスのテスト運用で、動画コンテンツ再生用に利用されるものとなる。
同社では今後も業務提携なども活用しながらAXIP製品の拡販を進めていく方針となっている。
売上規模は2018年3月期で数千万円程度の見込みとまだ小さいが、ライセンス収入となるため売上規模が一定水準を超えれば利益貢献度の大きい事業に育つものと期待される。
同社は、中期的に売上総利益の1割程度を占める事業に育てていく考えだ。
4. 業務提携、M&Aの積極検討
同社は新規事業の育成を加速するために、業務提携やM&Aを積極的に検討していく方針となっている。
前述した通り、エスディーテックにはカラオケ店舗(JOYSOUND直営店)の選曲リモコン端末向けにムービーコーデック技術を供与したほか、同技術についてはエスディーテックの顧客である複数の自動車メーカーでも車載ディスプレイ用での採用検討が進んでおり、今後本格採用が決まれば安定した収益源になるものと期待される。
エスディーテックは、UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)のスペシャリストが集結し2015年6月に設立されたベンチャー企業※で、自動車HMI(ヒューマンインターフェース)関連市場で、デザインエンジニアリングや車載機器向けのソフトウェア製品の開発を中心に展開している。
ベンチャー企業ではあるものの、複数の大手自動車メーカーと開発プロジェクトを進めるなど、技術力では高い評価を得ている企業である。
※創業メンバーが同業の(株)エイチアイからスピンアウトして設立した会社。
また、2016年4月に業務提携を発表したザインエレクトロニクス (T:6769)とは、車載機器や事務機器等向けで両社の知見を生かした共同開発の検討を進めており、2017年から具体的なプロジェクトがスタートした模様だ。
ザインエレクトロニクスは、ディスプレイとCPUの間の送受信部分となる高速インターフェース用LSIに強みを持っており、車載機器や事務機器向けを今後の注力分野としている。
ディスプレイ関連という共通領域ではあるもの同社とはLSIの種類が異なるため競合はせず、シナジーが期待される。
今後の共同開発プロジェクトの動向に注目したい。
そのほか、今後取り組む案件として現在検討中のものには、自動運転関連でのシステムLSI開発の連携がある。
自動運転ソフトウェア開発で著名な開発者との共同研究であり、自動車・車載部品メーカーや大学・行政関係との連携などがテーマとして挙がっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
アクセル (T:6730)は、今後の成長戦略として遊技機器市場での事業規模拡大と合わせて、その他市場への展開により第2、第3の事業の柱を育成することで持続的な成長を目指している。
また、経営指標としては早期にROE10%を回復したい考えだ。
今後の事業戦略については以下のとおり。
1. 遊技機器市場での事業規模拡大
遊技機器市場向けに関しては、グラフィックスLSIの市場シェア拡大に加えて、基板モジュールでの販売拡大、その他周辺LSIの拡充を図ることで機器1台当たり販売単価をアップし、事業規模を拡大していく戦略となっている。
2020年3月期にはグラフィックスLSIの市場シェアで57%(2017年3月期実績45%)、基板モジュール販売比率で46%(2017年3月期実績は0%)を目標としている。
市場シェア拡大戦略の1つとして、顧客のコンテンツ開発の生産性向上に寄与する統合開発支援ツール「DUKE」を「AG6」の投入に合わせて本格的に提供開始し、顧客の囲い込みを進めていく戦略だ。
遊技機器メーカーでは年々増大する開発費用の低減が経営課題の1つとなっているため、「DUKE」の導入が進む可能性は高いと弊社では見ている。
一方、周辺LSIの分野ではメモリモジュールで汎用性に優れる次世代品を開発し、採用機種や顧客数を増やしていくほか、2017年3月期より本格量産を開始した複数パネル搭載機向けの多画面分割用制御LSIの増加が見込まれる(2017年3月期8万個→2018年3月期10万個超)。
また、LEDドライバやセンサーなども高効率な新製品を開発し、販売を拡大していく方針だ。
2. 組込み機器向けグラフィックスLSIの販売拡大
組込み機器向けグラフィックスLSIでは、2017年3月期に量産販売を開始した「AG903」の拡販に注力していく方針となっている。
産業用途での新規顧客開拓を進め、年間販売個数で10万個強を目指していく(2017年3月期の組込み機器向けグラフィックスLSIの販売実績は4.3万個)。
従来品は主に医療機器や計測器、建設機械等のモニタ用途に採用されていたが、「AG903」では高速CPU、大容量RAMを内蔵し従来品よりも大幅に高性能化を実現した製品となっており、従来用途だけでなく車両設備や各種製造設備のモニタ用途、あるいはアミューズメントホール向けで顧客開拓を進めていく方針となっている。
また、営業活動を強化するため、アライアンス先の拡充も進めている。
3. ソフトウェアIP、ミドルウェア製品(AXIP)で新規市場を開拓
同社では今まで蓄積してきた要素技術(画像・音声圧縮、画像拡大、超解像、暗号化技術等)を需要が見込める市場向けにカスタマイズして、ソフトウェアIPやミドルウェア製品としてライセンス販売し、新たな収益柱として育成していく方針を示している。
なお、同社はこれらソフトウェアIPやミドルウェア製品を総称してAXIPと呼んでいる。
AXIPの第1弾としては、2015年2月にムービーミドルウェア「H2MD」の提供を開始している。
「H2MD」の特徴は、複数動画の同時再生や透過レイヤー(動画の重ね合わせ)制御が可能なこと、CPUの負荷が少ないこと等が挙げられる。
2016年5月には、リッチラボ(株)と「H2MD」を利用したスマートデバイス向けの動画広告事業でも協業を開始している。
また、2017年4月には音声圧縮技術を用いたゲームアプリ向けサウンドミドルウェア「C-FA(シーファ)」の提供を開始している。
「C-FA」の特徴は、汎用的な音声コーデックと同等の音質を半分程度のCPU負荷で実現できること、マルチプラットフォームに対応していること、なめらかなループ再生や低遅延再生を可能としていること等が挙げられる。
CPU負荷が半分程度となるため消費電力の低減や消費メモリ量の削減に寄与する技術となる。
同社では、「C-FA」「H2MD」の技術力をゲーム開発者向けにアピールするため、自社でもこれら技術を用いたスマートフォン用ゲームアプリ「夢幻のラビリズ」を開発中で、2017年8月頃の配信開始を予定している。
同アプリは無料配信(アプリ内課金あり)だが、市場の反応次第ではパブリッシング事業の可能性についても検討していくことにしている。
その他にも、2017年中に画像圧縮技術や画像拡大、超解像技術を用いた製品を、2018年には暗号化技術を用いた製品をそれぞれ投入する予定となっている。
画像拡大、超解像技術とは、モニタ上に表示される文字や絵などを拡大した時に、通常はジャギー状(ギザギザ状)になってしまう輪郭部分を滑らかで自然な状態に補正する技術となる。
また、暗号化技術についてはグラフィックスLSIと関係のない技術のように見えるが、パチンコ機器のデータ情報は外部に漏れても判別できないようにするため暗号化されており、同社もグラフィックスLSIの開発を進めるうえでその技術を蓄積してきたものと見られる。
これらAXIPのターゲット市場としては、Web広告やゲームアプリのほか車載機器、カラオケ機器、放送・VR機器、セキュリティ分野等となる。
このうち、カラオケ市場向けについては、2017年4月に資本業務提携先であるエスディーテックが、カラオケ店舗の選曲リモコン端末向けに提供するGUI演出用ビデオコーデックライブラリに同社のムービーコーデック技術を使用することを発表している。
選曲リモコン端末上に表示される店舗連動型キャンペーン告知サービスのテスト運用で、動画コンテンツ再生用に利用されるものとなる。
同社では今後も業務提携なども活用しながらAXIP製品の拡販を進めていく方針となっている。
売上規模は2018年3月期で数千万円程度の見込みとまだ小さいが、ライセンス収入となるため売上規模が一定水準を超えれば利益貢献度の大きい事業に育つものと期待される。
同社は、中期的に売上総利益の1割程度を占める事業に育てていく考えだ。
4. 業務提携、M&Aの積極検討
同社は新規事業の育成を加速するために、業務提携やM&Aを積極的に検討していく方針となっている。
前述した通り、エスディーテックにはカラオケ店舗(JOYSOUND直営店)の選曲リモコン端末向けにムービーコーデック技術を供与したほか、同技術についてはエスディーテックの顧客である複数の自動車メーカーでも車載ディスプレイ用での採用検討が進んでおり、今後本格採用が決まれば安定した収益源になるものと期待される。
エスディーテックは、UI(ユーザーインターフェース)とUX(ユーザーエクスペリエンス)のスペシャリストが集結し2015年6月に設立されたベンチャー企業※で、自動車HMI(ヒューマンインターフェース)関連市場で、デザインエンジニアリングや車載機器向けのソフトウェア製品の開発を中心に展開している。
ベンチャー企業ではあるものの、複数の大手自動車メーカーと開発プロジェクトを進めるなど、技術力では高い評価を得ている企業である。
※創業メンバーが同業の(株)エイチアイからスピンアウトして設立した会社。
また、2016年4月に業務提携を発表したザインエレクトロニクス (T:6769)とは、車載機器や事務機器等向けで両社の知見を生かした共同開発の検討を進めており、2017年から具体的なプロジェクトがスタートした模様だ。
ザインエレクトロニクスは、ディスプレイとCPUの間の送受信部分となる高速インターフェース用LSIに強みを持っており、車載機器や事務機器向けを今後の注力分野としている。
ディスプレイ関連という共通領域ではあるもの同社とはLSIの種類が異なるため競合はせず、シナジーが期待される。
今後の共同開発プロジェクトの動向に注目したい。
そのほか、今後取り組む案件として現在検討中のものには、自動運転関連でのシステムLSI開発の連携がある。
自動運転ソフトウェア開発で著名な開発者との共同研究であり、自動車・車載部品メーカーや大学・行政関係との連携などがテーマとして挙がっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)