[ワシントン 20日 ロイター] - 米商務省が20日発表した9月の住宅着工件数(季節調整済み)は年率換算で前月比1.9%増の141万5000戸だった。住宅市場の大半を占める一戸建て住宅が好調に伸び、全体水準を押し上げた。
金利が過去最低水準にあるほか、在宅勤務や在宅学習のために広い家を求め郊外や人口が少ない地域に人が移っており、住宅市場が米経済の回復をけん引している。市場予想は145万7000戸だった。
第3・四半期国内総生産(GDP)が大幅に回復したとの見方を後押しする内容だった。第2・四半期GDPは少なくとも73年ぶりの大幅な落ち込みを記録した。ただ第3・四半期に景気を押し上げた財政刺激策に充てる資金が枯渇する中、新型コロナウイルスの危機が引き起こした景気後退(リセッション)からの回復には先行き不透明感が漂っている。
PwCのスコット・ヴォーリング氏は「過去最低水準にある住宅ローン金利を活用し、在宅勤務が広がる現在の環境以外では考えられないような地域に初めて住宅を購入する人が増えており、堅調な住宅市場を後押ししているようだ」と述べた。
8月の数字は当初発表の141万6000戸から138万8000戸に下方改定された。
9月は西部と南部、北東部が増加。中西部は減少した。
9月は一戸建て住宅が8.5%増の110万8000戸と、2007年6月以来の高水準となった。一方、月々の変動が激しい集合住宅は16.3%減の30万7000戸だった。
9月の住宅着工件数の前年比は11.1%増。一戸建て住宅の前年比は22.3%増だった。
前日に発表された10月の住宅建設業者指数は過去最高水準に達した。ただ業者は「用地と労働力、木材、その他の主要な建材が不足していることから建設期間が延びており」手ごろな住宅を建設することがますます難しくなっていると話した。
2530万人が失業保険手当てで生活する中でも住宅市場は底堅さを保ってきた。雇用の喪失は、若年層で賃貸住宅に住むことが多い低賃金労働者に偏っている。米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)によると、米国の30年固定住宅ローン金利は平均約2.81%となっている。
先週発表された9月の小売売上高は伸びが加速した。第3・四半期GDPの予想は年率換算で最大35.2%増となっている。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)により失った総生産の約3分の2を取り戻す内容だ。
第2・四半期GDPは31.4%減と、政府が統計を開始した1947年以来の大幅な落ち込みだった。政府の支援金が枯渇したことから、当初10%超えの伸びが予想されていた第4・四半期GDPの予想は最低3%増まで引き下げられている。
オックスフォード・エコノミクスの主任エコノミスト、ナンシー・バンデンフーテン氏は「新型コロナの感染第2波や経済回復の鈍化、軟調な労働市場などが住宅市場に影響を与えているため、第4・四半期の住宅着工ペースは若干の緩和が予想される」と指摘。「ただ、当面は一段の増加サプライズが発生するリスクがある」と語った。
住宅着工許可件数は5.2%増の155万3000戸と07年3月以来の高水準。一戸建て住宅も7.8%増の111万9000戸と07年3月以来の高水準だった。集合住宅が0.9%減の43万4000戸だった。
シティグループのエコノミスト、ベロニカ・クラーク氏は「集合住宅に対し一戸建て住宅が相対的に堅調なことは、住宅需要が人口密度の高い都市の集合住宅から郊外や人口密度の低い地域の一戸建て住宅にシフトしていることを一部反映している可能性がある。この傾向は、足元の住宅価格が底堅く推移する一方、家賃が低下していることと一致している」と述べた。
9月の住宅完成件数は15.3%増の141万3000戸と、07年8月の高水準となった。在庫ギャップ解消には毎月の住宅着工件数と完成件数が150万─160万戸に達する必要があるとされている。建設中の住宅は横ばいの120万9000戸だった。
ネーションワイドのチーフエコノミスト、デービッド・バーソン氏は「今年の住宅着工件数は140万戸程度になるだろう。不況にもかかわらず、着工件数が増加する非常にまれな年になる」とした。
*内容を追加しました。