［北京 １５日 ロイター］ - 中国国家統計局が１５日に発表した１１月の経済統計によると、鉱工業生産はエネルギー生産増と原材料価格下落に支えられ予想を上回る伸びとなった一方、新型コロナウイルスの新たな感染拡大により小売売上高の伸びは鈍化した。
今回の統計は投資の伸び鈍化とともに、中国が引き続き逆風に直面していることを示しており、政策当局に支援強化を促す内容となった。
上海保銀投資管理（ピンポイント・アセット・マネジメント）のチーフエコノミスト、張智威氏は「１１月の経済は依然としてかなり弱い」と指摘。「国内消費はサービス業に打撃を与える『ゼロ寛容』政策や不動産業の継続的な減速が原因でさらに弱まっている」と述べた。
鉱工業生産は、前年同月比３．８％増加した。伸び率は前月の３．５％から加速し、ロイターがまとめた市場予想の３．６％を上回った。
中国の石炭生産は１１月に過去最高を記録。当局が冬の暖房シーズンに十分なエネルギー供給を確保するために鉱山各社に増産を促したことを受けた。また、原油の一日当たり処理量は１１月に回復した。
小売売上高は３．９％増。予想は４．６％増、１０月は４．９％増だった。
１─１１月の固定資産投資は前年同期比５．２％増加した。予想の５．４％をやや下回り、１─１０月の６．１％増から減速した。
新型コロナ流行から堅調に回復したものの、その後勢いを失いつつある中国経済は２０２２年に向けて複数の課題に直面。不動産分野の低迷のほか、コロナに伴う厳格な制限措置で個人消費が打撃を受けている。
１１月に鉱工業部門の活動は上向いたものの、新型コロナの新たな感染拡大は、オミクロン変異株が世界経済の先行きを脅かす中、政策当局者に新たな問題をもたらしている。
中国の東部・浙江省で新型コロナが流行し、感染防止対策の一環で上場企業少なくとも２０社が操業を停止している。
これとは別に１５日に発表された統計によると、中国の不動産低迷は第４・四半期も続いており、先月の住宅価格、販売、投資、建設は、需要の低迷と開発業者の資金繰り悪化により、マイナスの状態に陥っている。
一部アナリストは、第４・四半期の国内総生産（ＧＤＰ）伸び率が前期の４.９％から減速し、４％を下回ると予想。しかし、通年の成長率は政府目標の６％以上を上回る８％程度になる可能性がある。
中国では、コモディティー（商品）価格の高騰に対する政府の取り締まりと電力不足の緩和により、高まっていた工場出荷時のインフレ率が若干低下した。
＜支援強化の可能性＞
中国は１０日、２２年に経済を安定させ、成長率を合理的な範囲内に維持することに注力するとの公式声明を発表。中国共産党が来年の第２０回党大会に向け、「安定した健全な経済環境」を維持するとした。
中国人民銀行（中央銀行）は、今年２回目となる銀行の預金準備率（ＲＲＲ）引き下げを実施。農村部門や小規模企業を支援するため再貸出金利も引き下げた。
人民銀は１５日、１年物の中期貸出制度（ＭＬＦ）を通じて金融機関に５０００億元（７８５億ドル）を供給した。金利は２．９５％で前回と変わらず、２０カ月連続で据え置いた。
野村の中国担当チーフエコノミスト、陸挺氏は今週、経済への下押し圧力は２２年前半も続くと予想。人民銀はさらに０.５ポイントのＲＲＲ引き下げを行うだろうと付け加えた。
バークレイズは、２２年３月までに公開市場操作、ＭＬＦ、最優遇貸出金利（ローンプライムレート、ＬＰＲ）について、５─１０ベーシスポイントの引き下げが１回行われ、第１・四半期にＲＲＲの引き下げがもう１回行われると予想している。
シティは、中国が２２年にＧＤＰ比３．２％の財政赤字を２１年と同様に維持し、インフラプロジェクトの資金調達のために特別地方債の枠を今年の３兆６５００億元から３兆８０００億元（５９７０億２０００万ドル）に増やすと予想する。
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