■業績動向
(1) 2015年3月期の業績
●損益状況
極洋 (TOKYO:1301)の2015年3月期は売上高で218,350百万円(前期比7.9%増)、営業利益で2,460百万円(同15.6%減)、経常利益で2,107百万円(同29.4%減)、当期純利益で2,433百万円(同18.0%減)となった。
同社は既に中間期時点で下方修正を行っていたが、結果はほぼこの修正予想どおりであった。
前期比で減益になった主要因は、水産物市況が高止まりから軟化傾向となったために、主力の水産商事部門が大幅減益になったこと、及び、鰹・鮪事業が赤字となったことだ。
当期純利益の減益幅が経常利益の減益幅より少なかったのは、貸倒引当金(特別損失)として882百万円(前期はゼロ)があったものの、主に特別利益として厚生年金代行返上益3,521百万円(同1,267百万円)を計上したことによる。
各部門別の状況は以下のようであった。
(水産商事事業) 水産商事事業の業績は、セグメント別売上高で111,795百万円(前期比11.3%増)、営業利益で1,888百万円(同38.0%減)となった。
サケ・マスを中心に水産物市況が高止まりしたことから、売上高は前期比で増加となりほぼ予想どおりであったが、利益は予想を大きく下回った。
昨年末からサケの価格が大きく値崩れしたことが主要因だが、特に手持ち在庫を多く抱えていたチリ産の養殖ギンザケの価格が大きく低下したことが利益を圧迫した。
(冷凍食品事業) 冷凍食品事業の業績は、セグメント別売上高で62,744百万円(同11.9%増)、営業利益で409百万円(同222.0%増)と大幅増益となった。
生食商品(寿司種商品、カツオ・マグロを含む)の売上が前期の240億円から258億円へ順調に増加したことに加え、2013年7月に発売した業務用商品「だんどり上手」シリーズが事業所給食向け及び高齢者施設向けに順調に立ち上がったことも増益に寄与した。
また市販品ブランド「シーマルシェ」から2014年1月には家庭用の冷凍食品市場に参入し、取扱い店舗は3,000店に拡大した。
まだ発展途上ではあるが収益性は大きく改善しており、これも増益要因の1つであった。
さらに、カニ風味かまぼこも堅調に推移した。
(常温食品事業) 常温食品事業の業績は、セグメント別売上高で17,478百万円(同1.3%増)、営業利益で306百万円(同565.2%増)と、大幅増益となった。
円安等による原材料高を反映した価格改訂がようやく浸透してきたことから利益率が改善し、さらにコンビニエンスストア向けの海産珍味類が順調に拡大したことなどが増益に寄与した。
また昨年上半期には一部商品の自主回収及びクレーム処理のため商流が一時停滞したが、これを吸収した上での増益は大いに評価されてよいだろう。
(物流サービス事業) 物流サービス事業の業績は、セグメント別売上高で3,148百万円(同3.9%増)、営業利益で148百万円(同465.4%増)となった。
冷蔵倉庫では、2014年8月に開設した城南島事業所が10月から本格的に稼動を開始したこと、及び、畜産品で新規貨物の取扱いが増加したことなどが増収増益に寄与した。
一方で冷蔵運搬船は、円安のプラス効果及び船隊のスリム化に加え、子会社である極洋海運を吸収合併したことで、赤字体質から脱却して黒字体質が定着し、この結果、事業全体で増益となった。
(鰹・鮪事業) 鰹・鮪事業の業績は、セグメント別売上高で22,855百万円(同10.5%減)、営業損失で12百万円(前期は582百万円の利益)と不本意な結果になった。
海外まき網は、水揚げ量が31千トン(前期比1千トン減)、金額が54億円(同6億円減)となった。
さらに魚価(平均単価)も174円/kg(前期188円/kg)と下落したことに加え、コスト(入漁料、燃料費、修繕費等)が上昇したことから採算が大きく悪化した。
これらの結果、同部門の損益は赤字となった。
養殖事業では、前年の稚魚不漁による活け入れ不足から出荷量を調整したが、今後は種苗の新規仕入れルートの開拓及び歩留まりの維持向上が課題になる。
また完全養殖クロマグロの初出荷が2017年に予定されており、中長期的には今後、期待できる分野である。
●財政状況 2015年3月期末の財政状況は以下のようになった。
流動資産は69,860百万円(前期末比6,827百万円増)となったが、主に増収に伴い売上債権が24,616百万円(同223百万円増)、及び棚卸資産が29,463百万円(同3,867百万円増)となったことが要因である。
一方で、固定資産は19,076百万円(同2,210百万円減)となったが、設備投資により有形固定資産である建設仮勘定が増加し、投資その他の資産である投資有価証券が評価益を計上したものの売却により減少して6,369百万円(同3,876百万円減)となったこと及び、貸倒引当金が増加して1,236百万円(同1,233百万円増)となったことが主要因である。
この結果、総資産は88,937百万円(同4,618百万円増)となった。
負債合計は、短期借入金の増加1,786百万円、コマーシャルペーパーの増加3,000百万円などがあったが、退職給付にかかる負債が3,771百万円減少したことなどから、結果として、65,867百万円(同1,479百万円増)となった。
純資産は、利益剰余金の増加及びその他の包括利益累計額の増加(その他有価証券評価差額金の増加及び退職給付にかかる調整累計額の減少)等により、23,069百万円(同3,139百万円増)となった。
この結果、自己資本比率は25.5%(前期末比2.1ポイント増)となった。
●キャッシュ・フローの状況 2015年3月期のキャッシュ・フローは以下のようであった。
営業活動によるキャッシュ・フローは2,340百万円のマイナス(前期は1,910百万円のプラス)となった。
税金等調整前当期純利益が4,769百万円増加し、また、(キャッシュ・フローへのプラスの調整額である)減価償却費が1,396百万円増加したが、(キャッシュ・フローへのマイナスの調整額である)厚生年金基金代行返上益が3,521百万円増加し、在庫管理を今後の課題として掲げているように、棚卸資産4,226百万円の増加が大きく影響した。
投資活動によるキャッシュ・フローは762百万円のマイナスの増加(前期は1,900百万円のマイナス)となった。
主に固定資産の取得による支出2,757百万円(同1,190百万円の支出)及び貸付金回収額による収入265百万円(同1,052百万円)という減少要因があったが、投資有価証券の取得による支出14百万円(同801百万円)、投資有価証券の売却による収入2,580百万円(同33百万円)というプラス要因が上回った。
財務活動によるキャッシュ・フローは3,698百万円のプラス(前期は512百万円のマイナス)となった。
主な増減要因としては短期借入金及びコマーシャルペーパー等による収入3,474百万円(前期は6,431百万円の支出)という増加要因及び、新株予約権付社債の発行による収入の減少(前期は2,988百万円の収入から当期はゼロ)、長期借入による収入1,672百万円(前期は4,600百万円)という減少要因があった。
この結果、現金及び現金同等物は683百万円増加し、期末の同残高は4,070百万円となった。
●株主還元 前期と同じ1株当たり5円の期末配当(配当性向21.6%)を行う。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
同社は既に中間期時点で下方修正を行っていたが、結果はほぼこの修正予想どおりであった。
前期比で減益になった主要因は、水産物市況が高止まりから軟化傾向となったために、主力の水産商事部門が大幅減益になったこと、及び、鰹・鮪事業が赤字となったことだ。
当期純利益の減益幅が経常利益の減益幅より少なかったのは、貸倒引当金(特別損失)として882百万円(前期はゼロ)があったものの、主に特別利益として厚生年金代行返上益3,521百万円(同1,267百万円)を計上したことによる。
各部門別の状況は以下のようであった。
(水産商事事業) 水産商事事業の業績は、セグメント別売上高で111,795百万円(前期比11.3%増)、営業利益で1,888百万円(同38.0%減)となった。
サケ・マスを中心に水産物市況が高止まりしたことから、売上高は前期比で増加となりほぼ予想どおりであったが、利益は予想を大きく下回った。
昨年末からサケの価格が大きく値崩れしたことが主要因だが、特に手持ち在庫を多く抱えていたチリ産の養殖ギンザケの価格が大きく低下したことが利益を圧迫した。
(冷凍食品事業) 冷凍食品事業の業績は、セグメント別売上高で62,744百万円(同11.9%増)、営業利益で409百万円(同222.0%増)と大幅増益となった。
生食商品(寿司種商品、カツオ・マグロを含む)の売上が前期の240億円から258億円へ順調に増加したことに加え、2013年7月に発売した業務用商品「だんどり上手」シリーズが事業所給食向け及び高齢者施設向けに順調に立ち上がったことも増益に寄与した。
また市販品ブランド「シーマルシェ」から2014年1月には家庭用の冷凍食品市場に参入し、取扱い店舗は3,000店に拡大した。
まだ発展途上ではあるが収益性は大きく改善しており、これも増益要因の1つであった。
さらに、カニ風味かまぼこも堅調に推移した。
(常温食品事業) 常温食品事業の業績は、セグメント別売上高で17,478百万円(同1.3%増)、営業利益で306百万円(同565.2%増)と、大幅増益となった。
円安等による原材料高を反映した価格改訂がようやく浸透してきたことから利益率が改善し、さらにコンビニエンスストア向けの海産珍味類が順調に拡大したことなどが増益に寄与した。
また昨年上半期には一部商品の自主回収及びクレーム処理のため商流が一時停滞したが、これを吸収した上での増益は大いに評価されてよいだろう。
(物流サービス事業) 物流サービス事業の業績は、セグメント別売上高で3,148百万円(同3.9%増)、営業利益で148百万円(同465.4%増)となった。
冷蔵倉庫では、2014年8月に開設した城南島事業所が10月から本格的に稼動を開始したこと、及び、畜産品で新規貨物の取扱いが増加したことなどが増収増益に寄与した。
一方で冷蔵運搬船は、円安のプラス効果及び船隊のスリム化に加え、子会社である極洋海運を吸収合併したことで、赤字体質から脱却して黒字体質が定着し、この結果、事業全体で増益となった。
(鰹・鮪事業) 鰹・鮪事業の業績は、セグメント別売上高で22,855百万円(同10.5%減)、営業損失で12百万円(前期は582百万円の利益)と不本意な結果になった。
海外まき網は、水揚げ量が31千トン(前期比1千トン減)、金額が54億円(同6億円減)となった。
さらに魚価(平均単価)も174円/kg(前期188円/kg)と下落したことに加え、コスト(入漁料、燃料費、修繕費等)が上昇したことから採算が大きく悪化した。
これらの結果、同部門の損益は赤字となった。
養殖事業では、前年の稚魚不漁による活け入れ不足から出荷量を調整したが、今後は種苗の新規仕入れルートの開拓及び歩留まりの維持向上が課題になる。
また完全養殖クロマグロの初出荷が2017年に予定されており、中長期的には今後、期待できる分野である。
●財政状況 2015年3月期末の財政状況は以下のようになった。
流動資産は69,860百万円(前期末比6,827百万円増)となったが、主に増収に伴い売上債権が24,616百万円(同223百万円増)、及び棚卸資産が29,463百万円(同3,867百万円増)となったことが要因である。
一方で、固定資産は19,076百万円(同2,210百万円減)となったが、設備投資により有形固定資産である建設仮勘定が増加し、投資その他の資産である投資有価証券が評価益を計上したものの売却により減少して6,369百万円(同3,876百万円減)となったこと及び、貸倒引当金が増加して1,236百万円(同1,233百万円増)となったことが主要因である。
この結果、総資産は88,937百万円(同4,618百万円増)となった。
負債合計は、短期借入金の増加1,786百万円、コマーシャルペーパーの増加3,000百万円などがあったが、退職給付にかかる負債が3,771百万円減少したことなどから、結果として、65,867百万円(同1,479百万円増)となった。
純資産は、利益剰余金の増加及びその他の包括利益累計額の増加(その他有価証券評価差額金の増加及び退職給付にかかる調整累計額の減少)等により、23,069百万円(同3,139百万円増)となった。
この結果、自己資本比率は25.5%(前期末比2.1ポイント増)となった。
●キャッシュ・フローの状況 2015年3月期のキャッシュ・フローは以下のようであった。
営業活動によるキャッシュ・フローは2,340百万円のマイナス(前期は1,910百万円のプラス)となった。
税金等調整前当期純利益が4,769百万円増加し、また、(キャッシュ・フローへのプラスの調整額である)減価償却費が1,396百万円増加したが、(キャッシュ・フローへのマイナスの調整額である)厚生年金基金代行返上益が3,521百万円増加し、在庫管理を今後の課題として掲げているように、棚卸資産4,226百万円の増加が大きく影響した。
投資活動によるキャッシュ・フローは762百万円のマイナスの増加(前期は1,900百万円のマイナス)となった。
主に固定資産の取得による支出2,757百万円(同1,190百万円の支出)及び貸付金回収額による収入265百万円(同1,052百万円)という減少要因があったが、投資有価証券の取得による支出14百万円(同801百万円)、投資有価証券の売却による収入2,580百万円(同33百万円)というプラス要因が上回った。
財務活動によるキャッシュ・フローは3,698百万円のプラス(前期は512百万円のマイナス)となった。
主な増減要因としては短期借入金及びコマーシャルペーパー等による収入3,474百万円(前期は6,431百万円の支出)という増加要因及び、新株予約権付社債の発行による収入の減少(前期は2,988百万円の収入から当期はゼロ)、長期借入による収入1,672百万円(前期は4,600百万円)という減少要因があった。
この結果、現金及び現金同等物は683百万円増加し、期末の同残高は4,070百万円となった。
●株主還元 前期と同じ1株当たり5円の期末配当(配当性向21.6%)を行う。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)