Md. Tahmid Zami
[ダッカ 18日 トムソン・ロイター財団] - ファルザナ・アクテル・イシャさん(24)は、貧しい農村部の家庭に住宅用太陽光発電ソリューションを提供する再生可能エネルギー技術企業、SOLシェアで生産監督として働いている。
彼女が就職した2014年当時、バングラデシュの太陽光発電部門は需要の低迷という困難に直面しており、多くの同僚が転職していった。
しかし、バングラデシュの再生可能エネルギー業界は長年にわたる停滞の末、最近は安価な太陽光発電の登場によって力強く回復。今後数年間で3000ないし4000件の新たなグリーン雇用を生み出すと期待されている。
産業用・商業用を含む屋上太陽光発電プロジェクトだけでも、2023年に増えた発電能力は過去最高の42メガワット(MW)に達した。
さらに、地上設置型で電力系統に接続する大規模ソーラー・プロジェクトが現在約10件稼働しており、両タイプ合わせて新たに3000MW以上の発電能力が承認済み、もしくは承認の最終段階にある。
<価格下落で再生エネルギーが急増>
バングラデシュでは、化石燃料に比べた太陽光発電の費用対効果が高まるにつれて、再生可能エネルギー部門が急拡大すると専門家は予測している。
同国はドル準備が減少して石油と天然ガスの輸入代金支払いに苦慮しており、燃料価格の上昇が経済を圧迫している。
政府は2023年、エネルギー危機に対処するため、石炭火力発電を3倍に増やすという手段に出たが、専門家は再生可能エネルギーの方が長期的な解決策になると言う。
バングラデシュのユナイテッド国際大学(UIU)でエネルギー研究センター長を務めるShahriar Ahmed Chowdhury氏はトムソン・ロイター財団の取材に対し、太陽光発電設備の急増は、国内外からの新規投資家の市場参入によるもので、プロジェクトの平均規模も拡大していると述べた。
地上設置型プロジェクトは発電能力が大きく、電源ミックスに占める太陽光発電の割合をより大きく押し上げる、と同氏は予想。一方、屋上設置型プロジェクトは設置費用が安く、国内各地にある100の経済特区で建設中の新工場で急成長を遂げる見通しだと言う。
ブルームバーグNEFが公表した23年の報告書によると、バングラデシュの公益事業規模のプロジェクトでは、太陽光発電のコストが現在、1メガワット時(MWh)当たり97―135ドルで、石炭火力発電の110―150ドル/MWh、天然ガス火力発電の88―116ドル/MWhと十分競合できる水準になっている。
報告書は、25年までには太陽光発電が同国で最も安価なエネルギー源になるとの見通しを示した。
太陽光発電に移行することの経済的優位性は、企業や政府にとってますます明白になってきている。
エネルギー経済・財務分析研究所(IEEFA)が先月公表したリポートによると、バングラデシュの産業、商業ビル、その他の事業所が、現状の161MWを上回る2000MW相当の屋上太陽光発電設備を設置した場合、政府は年間523億タカ(4億7700万ドル)ないし1103億2000万タカ(10億ドル)を節約できるとみられる。発電のために重油や軽油などの高価な燃料を輸入する必要がなくなるためだ。
重要な問題として、バングラデシュでどれだけの太陽光発電が可能かについて、信頼できる厳密な試算は存在しない。
IEEFAの首席エネルギーアナリスト、シャヒカル・アラム氏は「バングラデシュの屋上太陽光発電の潜在能力を正しく評価することは、このセクターに必要な投資を理解するために不可欠だ」と言う。
<雇用拡大の潜在性>
太陽光発電が大幅に拡大すれば、エンジニア、技術者、プロジェクトマネージャー、作業員にとって、何千もの新たなグリーン雇用が生まれるかもしれない。
UIUのChowdhury氏は、1MWの太陽光発電プロジェクトは、住宅部門で26.6人、商業プロジェクトで10.1人、公益事業規模の太陽光発電で2.1人の雇用を生み出せると述べた。
ダッカを拠点とするセンター・フォー・ポリシー・ダイアログによる昨年の調査では、再生可能エネルギーは2030年までに約1万3800人の雇用を創出する可能性がある。政府が非常に積極的なエネルギー転換を進めた場合、その数は3万7000人以上に達する見通しだという。
大企業はグリーンエネルギーへの投資に動いているため、数年の経験を持つエンジニアや技術者のような熟練した人材は現在、高い需要がある。
太陽光プロジェクトのマネジャーを務める経験豊富なエンジニア、SMイムラン・ハサン氏は「以前は就職先を探さなければならなかったが、今では企業やヘッドハンティング会社の方から私たちに声をかけてくれるようになった」と語る。
技術の進歩に合わせ、より高度なスキルへと人材の需要も変化している。
<より高度なスキル>
UIUのChowdhury氏は、大規模な太陽光発電プロジェクトには、より高度なエンジニアリングや技術的スキルを持つ労働者が必要な一方、低スキルの労働者には、太陽光発電所のメンテナンスや警備の仕事があると言う。
「最終的に、この産業の雇用総数は増加し、成長するにつれて以前の水準を上回る可能性がある」と同氏は語った。
熟練労働者に対する需要の高まりにより、関連する技術を身につけたイシャさんのような若い女性にも、新たな門戸が開かれるかもしれない。
イシャさんは、自身が働くSOLシェアには女性だけの生産チームがあり、スキルを持つ女性が太陽光部門で輝けることを示すお手本だと語る。
イシャさんは女性の同僚たちに対し、高い技術的課題に挑むよう指導しており、それは徐々に実を結びつつあるという。
「最近では技術開発という大仕事を含め、技術系の仕事に興味を示す女性も増えている」とイシャさんは話した。