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アングル:女性が担うウクライナの新興IT企業、戦後復興の鍵に

発行済 2024-03-28 15:30
更新済 2024-03-28 15:37
© Reuters.  ウクライナでの戦争が、成長する同国のテクノロジー業界で女性に主導権をもたらしつつあることが、複数の起業家や企業、投資家への取材で分かった。写真は「インプット・ソフト」最

Michael Kahn

[プラハ 22日 ロイター] - ウクライナでの戦争が、成長する同国のテクノロジー業界で女性に主導権をもたらしつつあることが、複数の起業家や企業、投資家への取材で分かった。彼女たちはいま、戦争終結後の経済再建に役立つ可能性のある経験や人脈を国外で構築しているという。

ウクライナの技術分野では現在、資金調達や外国での新規顧客の開拓といった重要な役割を担う女性起業家が増えている。メンタルヘルス関連のスタートアップ企業「プレソ・セラピー」を経営するアンナ・リッソワ氏(30)もその1人だ。

ロシアによる侵攻が開始する以前、リッソワ氏の主な仕事はウクライナ国内でのセラピストの雇用だった。だが、今では海外を飛び回って会議に出席してはプレソ・セラピーを売り込み、ポーランドやルーマニアで自社製品の発売を主導している。

「急に役職を変え、代表としての職務を一手に引き受けなければならなくなった。今回の戦争を受けてスタートアップ企業では、管理職に就き、裁量権を持つようになった女性が増えている」とリッソワ氏は話す。

戦時戒厳令に基づいて18歳から60歳までの男性は出国が禁止される中、国内外で女性のハイテク起業家の需要が高まり、活躍の場を広げている。ウクライナで指導的立場にある女性の比率は欧州連合(EU)や国際社会全体の割合よりも高く、彼女らはその存在感を強めているという。

ただ、テクノロジー業界にはいまだ男性主導的風潮が残り、女性起業家はさまざまな偏見に直面することもあるという。また、国外で難民としての生活に適応し、父親がウクライナに残る中での子育てと並行しながら、事業を経営することの難しさを訴える声もある。

過去10年以上にわたりウクライナは、大きな国内市場から資金や顧客を集めるスタートアップ企業を複数抱え、東欧のテクノロジーハブの1つへと急成長を遂げた。

一方で、同セクターにおける女性の数は十分ではなかった。国連開発計画(UNDP)の調査によれば、2017年から22年にかけてウクライナ全体では40%の女性が指導的立場に就いていたのに対し、専門的・科学的・技術的分野の女性管理職は30%ほどにとどまった。

とはいえ、この調査では、ウクライナの女性リーダーの割合がEUの35%、世界全体の29%を上回っているとも示された。

また、EU統計局(ユーロスタット)が行った別の調査によれば、域内の主要ハイテク関連職で女性が占める割合は約17%だという。

技術系分野はウクライナの戦後経済を見通すうえで鍵を握るとみられている。そうした業界を女性が率いることの重要かつ新たな役割について、ロイターはベンチャーキャピタル(VC)やハイテク企業の創業者、業界関係者ら十数人に話を聞いた。

「ハイテク業界での女性のリーダーシップは、ロシアによる全面侵攻後、より顕著にみられるようになった」と政府系ファンド「ウクライナスタートアップ基金(USF)」のディレクター、パブロ・カルタショフ氏は言う。「企業を率いて成長をけん引する女性起業家の急増を目の当たりにしてきた」

カルタショフ氏は、海外での成長を見越す野心的なスタートアップ企業では特にこうした傾向が強いと指摘。ウクライナ国内にとどまった企業の多くはドローンなどの軍事・戦争関連技術に注力している、と述べた。

<ハイテク業界の回復力>

テクノロジー分野の打たれ強さは既に証明されている。リビウ・テック・クラスターが集計した国の統計によると、ウクライナの国内総生産(GDP)は2022年に30%落ち込んだ一方、ハイテク分野の収入は79億7000万ドル(約1兆2000億円)と1%近く増加しており、23年は80億ドルまで増えると予測されている。

ハイテク分野はウクライナのGDPの5%近くを占める。22年に28万5000人だった同分野の専門家の数は、23年には国内外で30万7000人に増加した。こうした専門家の中には、ポルトガルのリスボンを拠点とするデジタル通貨決済プラットフォーム「ギークペイ」の創設者なども含まれている。

2022年2月にウクライナを去った3カ月後にスタートアップ企業を設立したベロニカ・コルシュ氏も、何人もの女性起業家が活躍する姿を目にしてきたと話す。ウクライナ国外の投資家に会う機会が増えたことや、EUや国際団体、ハイテク多国籍企業が資金を拠出した女性対象の起業促進プログラムなども、こうした流れを支えている。

世界経済フォーラムの報告書は、女性の比率が大きい企業の方が収益性が高く、研究開発に使う金額が多く、より環境に配慮していることが研究で明らかになったとし、多くの国際組織がテクノロジー分野全体における女性の機会拡大に取り組んでいると指摘した。

「戦争が始まって以降、起業したり、より重要な役職に就く女性が増えている。投資家と話し、新たな顧客に向けてブランドの発展に貢献できるからだ」とコルシュ氏は言う。「ウクライナに対する関心を維持し、国のハイテク分野が持つ可能性を広く伝えることにもつながる」

多くのIT労働者が国外で最初に目指す場所は、ウクライナに隣接し、同国と長年の商業的・文化的つながりを持つポーランドだ。

助成金やコワーキングスペースの提供といった支援を行う「ポーランド・ウクライナ・スタートアップ・ブリッジ」のミハイロ・ハレツキー氏は、「新たな資金調達ラウンドを主導し、会社の設立や国際的人材・資金の確保につながる経験を積む女性たちの姿を見てきた」と語る。

航空エンジニアのアナスタシア・スミック氏(27)は、難民のハイテクコミュニティーが急拡大しているポーランドのワルシャワで、飛行運転管理ソフトウエア企業「インプット・ソフト」を立ち上げた。スミック氏の製品は現在、米国や中南米、東南アジアで導入されている。

「男性投資家と話すと、なぜあなたが最高経営責任者(CEO)なのかと問われたり、男性のビジネスパートナーがいるなら紹介してほしいと言われることがある」とスミック氏は話し、そうした偏見と闘っていると明かした。

「私の仕事は、投資やグローバル市場での認知度、早い段階で製品を採用してくれる国外の顧客を見いだすことだ。ウクライナの無名スタートアップ企業には容易ではなかった」

スミック氏は、戦争終結後にはウクライナ難民が立ち上げたスタートアップ企業の多くがウクライナに戻り、景気回復に多大な貢献をすると見込んでいる。

「国の再建や復興に参加するために、ウクライナへ帰りたい。できるだけ早くウクライナ上空に民間航空機の姿が戻るのを見るためなら、それがボランティア事業でも構わない」

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