[北京 8日 ロイター] - 中国を訪問中のイエレン米財務長官は8日会見し、政府の補助金を受けた安価な中国製品の流入で新たな産業が壊滅的な打撃を受けることを米国は認めないと表明、10年前にも鉄鋼産業で同じことがあったと述べた。
イエレン氏は、中国製品の大量流入で米製造業で約200万の雇用が失われた2000年代初頭の「中国ショック」の再来をバイデン大統領は許さないと述べた。
「これは以前にも起きたことだ。10年前にも中国政府の大規模な支援により、原価割れの中国製鉄鋼製品が世界の市場にあふれ、米国など世界中の産業が壊滅的な打撃を受けた」と指摘。「バイデン大統領と私はそのような現実を二度と受け入れないと明言している」と述べた。
4日間にわたる中国当局者との会談について、米国の利益を促進するものだったと指摘。会談では中国の内需低迷に懸念を示したほか、電気自動車(EV)、バッテリー、太陽光産業などへの「大規模な政府支援」に支えられた過剰投資にも懸念を表明したと述べた。
人為的に安価に設定された中国製品が世界の市場にあふれた場合「米国など外国企業の存続に疑問符が付く」との認識も示した。
過剰生産能力問題は、それを扱う新設のフォーラムで解決策を模索するが、合意達成には時間が必要だと指摘した。
<中国は個人消費促進を>
イエレン氏は、余剰生産能力に対する米国の懸念は、欧州の同盟国や日本のほか、メキシコ、フィリピンなどの新興国にも共有されていると述べた。
短期的な解決策としては、中国が個人消費を下支えし、供給サイドへの投資による成長モデルからの転換が考えられると述べた。
同氏は中国訪問中、この問題を李強首相と協議。藍仏安財政相、人民銀行(中央銀行)の潘功勝総裁、劉鶴前副首相とも会談した。
一連の会談後、イエレン氏はCNBCに、対中国貿易規制を中国のマクロ経済環境のことほど考えていないと語ったが、関税の可能性は排除しないと改めて述べた。
米財務省当局者によると、米中は金融安定を巡る問題で協力を深めている。大手銀行の破綻に対処する演習を最近実施したのに続き、金融ショックの模擬演習をさらに2回予定しているという。
<中国は一蹴>
中国で3月に開催された全国人民代表大会(全人代)は、製造業の過剰生産能力を抑える措置を取る方針を示した。
しかし、米欧が最近、中国の過剰生産能力が他国に及ぼすリスクを指摘することには反発している。
新華社によると、李強氏は「(米国は)経済・貿易問題を政治や安全保障の問題にすることを慎む」べきだと主張。「市場原理やグローバルな観点から」生産能力の問題を扱うべきだと述べた。
中国の王文濤商務相も7日、同国の「過剰生産能力」に対する米国や欧州の批判には根拠がないと一蹴した。