■業績動向
(1) 2015年3月期の実績
○損益状況
コニシ (TOKYO:4956)の2015年3月期の業績は、売上高115,788百万円(前期比2.6%増)、営業利益5,312百万円(同18.0%減)、経常利益5,464百万円(同18.5%減)、当期純利益3,045百万円(同18.6%減)となった。
売上高は新規子会社(矢沢化学工業、近畿鉄筋コンクリート)が加わったことで、前期比で増収となったが、実質ベースではマイナスであり計画比では0.2%減となった。
営業利益以下は前期比で18%超の減益となったが、すでに中間決算発表時に下方修正を行っており、この時の予想数字は上回った。
言い換えれば、上半期は厳しい結果であったが下半期は予想を上回る結果であったと言える。
営業利益は前期比で1,163百万円減少したが、前期比でのマイナス要因としては価格増減による影響が561百万円、販管費の増加113百万円、原材料価格の変動406百万円、工場経費の増加203百万円等があったが、プラス要因としては、新規連結子会社の寄与521百万円があった。
セグメント(事業)別売上高は、ボンド事業56,227百万円(前期比2.1%増)、化成品事業49,169百万円(同0.4%増)、その他事業10,391百万円(同17.5%増)となった。
営業利益はボンド事業4,303百万円(同18.6%減)、化成品事業383百万円(同29.4%減)、その他事業617百万円(同3.7%減)となり、すべての部門で増収・減益となった。
各事業の詳細は以下のようであった。
▼ボンド事業 ボンド事業の各向け先別状況は以下のとおりであった。
◇住関連用:売上高19,851百万円(前期比5.0%減) 消費税導入後の反動が予想以上に長引いたことから前期比マイナスとなった。
用途別では現場施工用が17,398百万円(同5.2%減)、建築資材用が2,453百万円(同3.5%減)となった。
また子会社のサンライズMSIの住関連売上高は6,323百万円(同4.1%減)となった。
すべての用途別で前期比マイナスとなったが、住宅着工そのものが10%近い減少となっていることを考慮すれば、健闘した結果とも言えるだろう。
◇産業資材用:売上高6,067百万円(同3.8%減) 主な製品はパネル用途向けウレタン系接着剤、自動車関連産業向け離型剤、産業用ホットメルト系接着剤などだが、国内の自動車生産が停滞したこともあり前期比では減収となった。
◇土木建築用:売上高11,672百万円(同1.3%減) 道路やトンネル、橋梁など社会インフラの補修・補強工事が増えたことなどにより土木用は1,977百万円(同5.0%増)と堅調であったが、建設用が11,672百万円(同1.3%減)とやや不振であった。
東京オリンピック関連の工事などが活況であることから、前期比で増収を計画していたが、やや減収となってしまった。
ただし、第4四半期にかけては受注が増加傾向にあったことから、2016年3月期は回復が期待できそうだ。
◇一般家庭用:売上高6,426百万円(同1.4%減) 全体としては前期比で減収となったが、製品によっては伸びているものもあり、「結果としては悪くない」と会社は述べている。
特に手芸や裁縫に使われる「ボンド裁ほう上手」が予想以上に好調だったようで、同社にとっては女性をターゲットにした製品であると同時に今までのホームセンターとは異なるルート(手芸店等)で販売される製品であるため、今後の動向が注目される。
◇矢沢化学工業:売上高2,759百万円(比較なし) 2015年3月期から連結対象となった新規子会社だが、今回は変則13ヶ月決算分が寄与している。
主力製品は住宅の壁紙用接着剤であるため、すべてが住関連用となる。
矢沢化学工業は壁紙用接着剤市場で約30%のシェアを持っており、ヤヨイ化学(シェア70%)と市場を二分している。
但し矢沢化学工業の今までの主たる市場は関東圏であり、関西以西は殆ど手付かずであったが、同社グループに加わったことで今後は全国展開が可能となり、さらなる成長が期待出来そうだ。
▼化成品事業 コニシ単独の化成品事業売上高は37,116百万円(同1.2%減)となった。
向け先別では、化学工業向けは7,239百万円(同5.1%増)となったが、これは比較的大きな案件を獲得したことによるが、反対に電子・電機向けは他社に案件を奪われたために5,351百万円(同7.1%減)となった。
自動車向けは15,459百万円(同0.1%増)とほぼ前年並みを維持したが、住設関連は住宅市場全般の影響を受けて2,340百万円(同7.6%減)となった。
主要子会社の丸安産業の売上高は11,419百万円(同3.9%増)と比較的好調であった。
医薬中間体関係の受注があったことから化成品が2,354百万円(同12.7%増)となり、大手コンデンサーメーカー(村田製作所 (TOKYO:6981)、ニチコン (TOKYO:6996)等)向けが順調であったことから電材も3,287百万円(同18.0%増)と好調に推移した。
一方で液晶関連の影響で薄膜が3,838百万円(同5.6%減)と不振であり、化学品は1,728百万円(同0.3%減)とほぼ前年並みを確保した。
▼その他事業 その他事業の売上高は10,391百万円(同17.5%増)と好調に推移し、初めて売上高10,000百万円超となった。
特に主力である工事請負事業の売上高は、既存分だけでも8,235百万円(同10.6%)と続伸したが、これに新規連結子会社である近畿鉄筋コンクリート分(1,367百万円)を加えた総額は9,602百万円となり、部門に占める割合は92.4%となった。
この工事請負事業の売上高は2003年3月期には僅か3,000百万円ほどであったが、過去12年間で3倍以上となった。
目立たない部門ではあるが、同社の隠れた成長分野になっている。
前述のように同社が行う工事請負事業は、道路、鉄道、橋梁などの「社会インフラ」の補修・補強工事を「接着剤を使った工法」で行うものだが、現在の日本の社会インフラの環境(補修や修理が多く必要)や同社の競争力を考慮すれば、今後さらに大きく伸びる分野であるのは確かだろう。
会社側でも近い将来、同事業を「その他事業」の一部ではなく独立した一つのセグメントとして開示することを検討しているようだ。
塗料製造子会社のミクニペイント(株)を売却したことから、残りは化学品データベース事業だが、こちらの売上高も789百万円(同9.0%増)と好調であった。
○財務状況 2015年3月期末の財務状況は、前期末比で現預金の減少108百万円、売掛債権の増加239百万円、棚卸資産の増加266百万円等から、流動資産は502百万円増加し60,810百万円となった。
有形固定資産の増加2,143百万円、投資その他資産の増加1,828百万円等から、固定資産は前期末比で3,840百万円増し25,309百万円となった。
その結果、総資産は86,119百万円(前期末比4,341百万円増)となった。
負債合計は、仕入債務の増加93百万円、短期借入金の減少178百万円、退職給付にかかる負債の減少703百万円等から、35,442百万円(同748百万円減)となった。
また純資産合計は主に当期純利益の計上等から、50,677百万円(同5,090百万円増)となった。
○キャッシュフローの状況 営業活動によるキャッシュフローは4,057百万円の収入であったが、主に税金等調整前当期純利益の計上5,285百万円、減価償却費1,658百万円、売上債権の増加による支出127百万円等による。
投資活動によるキャッシュフローは3,324百万円の支出であったが、これは、主に有形固定資産の取得による支出3,105百万円等による。
財務活動によるキャッシュフローは878百万円の支出であったが、主に配当金の支払い611百万円による。
以上から2015年3月期の現金及び現金同等物は118百万円減少し、期末残高は14,650百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
売上高は新規子会社(矢沢化学工業、近畿鉄筋コンクリート)が加わったことで、前期比で増収となったが、実質ベースではマイナスであり計画比では0.2%減となった。
営業利益以下は前期比で18%超の減益となったが、すでに中間決算発表時に下方修正を行っており、この時の予想数字は上回った。
言い換えれば、上半期は厳しい結果であったが下半期は予想を上回る結果であったと言える。
営業利益は前期比で1,163百万円減少したが、前期比でのマイナス要因としては価格増減による影響が561百万円、販管費の増加113百万円、原材料価格の変動406百万円、工場経費の増加203百万円等があったが、プラス要因としては、新規連結子会社の寄与521百万円があった。
セグメント(事業)別売上高は、ボンド事業56,227百万円(前期比2.1%増)、化成品事業49,169百万円(同0.4%増)、その他事業10,391百万円(同17.5%増)となった。
営業利益はボンド事業4,303百万円(同18.6%減)、化成品事業383百万円(同29.4%減)、その他事業617百万円(同3.7%減)となり、すべての部門で増収・減益となった。
各事業の詳細は以下のようであった。
▼ボンド事業 ボンド事業の各向け先別状況は以下のとおりであった。
◇住関連用:売上高19,851百万円(前期比5.0%減) 消費税導入後の反動が予想以上に長引いたことから前期比マイナスとなった。
用途別では現場施工用が17,398百万円(同5.2%減)、建築資材用が2,453百万円(同3.5%減)となった。
また子会社のサンライズMSIの住関連売上高は6,323百万円(同4.1%減)となった。
すべての用途別で前期比マイナスとなったが、住宅着工そのものが10%近い減少となっていることを考慮すれば、健闘した結果とも言えるだろう。
◇産業資材用:売上高6,067百万円(同3.8%減) 主な製品はパネル用途向けウレタン系接着剤、自動車関連産業向け離型剤、産業用ホットメルト系接着剤などだが、国内の自動車生産が停滞したこともあり前期比では減収となった。
◇土木建築用:売上高11,672百万円(同1.3%減) 道路やトンネル、橋梁など社会インフラの補修・補強工事が増えたことなどにより土木用は1,977百万円(同5.0%増)と堅調であったが、建設用が11,672百万円(同1.3%減)とやや不振であった。
東京オリンピック関連の工事などが活況であることから、前期比で増収を計画していたが、やや減収となってしまった。
ただし、第4四半期にかけては受注が増加傾向にあったことから、2016年3月期は回復が期待できそうだ。
◇一般家庭用:売上高6,426百万円(同1.4%減) 全体としては前期比で減収となったが、製品によっては伸びているものもあり、「結果としては悪くない」と会社は述べている。
特に手芸や裁縫に使われる「ボンド裁ほう上手」が予想以上に好調だったようで、同社にとっては女性をターゲットにした製品であると同時に今までのホームセンターとは異なるルート(手芸店等)で販売される製品であるため、今後の動向が注目される。
◇矢沢化学工業:売上高2,759百万円(比較なし) 2015年3月期から連結対象となった新規子会社だが、今回は変則13ヶ月決算分が寄与している。
主力製品は住宅の壁紙用接着剤であるため、すべてが住関連用となる。
矢沢化学工業は壁紙用接着剤市場で約30%のシェアを持っており、ヤヨイ化学(シェア70%)と市場を二分している。
但し矢沢化学工業の今までの主たる市場は関東圏であり、関西以西は殆ど手付かずであったが、同社グループに加わったことで今後は全国展開が可能となり、さらなる成長が期待出来そうだ。
▼化成品事業 コニシ単独の化成品事業売上高は37,116百万円(同1.2%減)となった。
向け先別では、化学工業向けは7,239百万円(同5.1%増)となったが、これは比較的大きな案件を獲得したことによるが、反対に電子・電機向けは他社に案件を奪われたために5,351百万円(同7.1%減)となった。
自動車向けは15,459百万円(同0.1%増)とほぼ前年並みを維持したが、住設関連は住宅市場全般の影響を受けて2,340百万円(同7.6%減)となった。
主要子会社の丸安産業の売上高は11,419百万円(同3.9%増)と比較的好調であった。
医薬中間体関係の受注があったことから化成品が2,354百万円(同12.7%増)となり、大手コンデンサーメーカー(村田製作所 (TOKYO:6981)、ニチコン (TOKYO:6996)等)向けが順調であったことから電材も3,287百万円(同18.0%増)と好調に推移した。
一方で液晶関連の影響で薄膜が3,838百万円(同5.6%減)と不振であり、化学品は1,728百万円(同0.3%減)とほぼ前年並みを確保した。
▼その他事業 その他事業の売上高は10,391百万円(同17.5%増)と好調に推移し、初めて売上高10,000百万円超となった。
特に主力である工事請負事業の売上高は、既存分だけでも8,235百万円(同10.6%)と続伸したが、これに新規連結子会社である近畿鉄筋コンクリート分(1,367百万円)を加えた総額は9,602百万円となり、部門に占める割合は92.4%となった。
この工事請負事業の売上高は2003年3月期には僅か3,000百万円ほどであったが、過去12年間で3倍以上となった。
目立たない部門ではあるが、同社の隠れた成長分野になっている。
前述のように同社が行う工事請負事業は、道路、鉄道、橋梁などの「社会インフラ」の補修・補強工事を「接着剤を使った工法」で行うものだが、現在の日本の社会インフラの環境(補修や修理が多く必要)や同社の競争力を考慮すれば、今後さらに大きく伸びる分野であるのは確かだろう。
会社側でも近い将来、同事業を「その他事業」の一部ではなく独立した一つのセグメントとして開示することを検討しているようだ。
塗料製造子会社のミクニペイント(株)を売却したことから、残りは化学品データベース事業だが、こちらの売上高も789百万円(同9.0%増)と好調であった。
○財務状況 2015年3月期末の財務状況は、前期末比で現預金の減少108百万円、売掛債権の増加239百万円、棚卸資産の増加266百万円等から、流動資産は502百万円増加し60,810百万円となった。
有形固定資産の増加2,143百万円、投資その他資産の増加1,828百万円等から、固定資産は前期末比で3,840百万円増し25,309百万円となった。
その結果、総資産は86,119百万円(前期末比4,341百万円増)となった。
負債合計は、仕入債務の増加93百万円、短期借入金の減少178百万円、退職給付にかかる負債の減少703百万円等から、35,442百万円(同748百万円減)となった。
また純資産合計は主に当期純利益の計上等から、50,677百万円(同5,090百万円増)となった。
○キャッシュフローの状況 営業活動によるキャッシュフローは4,057百万円の収入であったが、主に税金等調整前当期純利益の計上5,285百万円、減価償却費1,658百万円、売上債権の増加による支出127百万円等による。
投資活動によるキャッシュフローは3,324百万円の支出であったが、これは、主に有形固定資産の取得による支出3,105百万円等による。
財務活動によるキャッシュフローは878百万円の支出であったが、主に配当金の支払い611百万円による。
以上から2015年3月期の現金及び現金同等物は118百万円減少し、期末残高は14,650百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)