◇以下は、FISCO監修の投資情報誌『FISCO 株・企業報 2018年春号 −仮想通貨とサイバーセキュリティ 』(4月28日発売)の特集『株式会社テリロジーに聞く「サイバーセキュリティの変遷と未来」』の一部である。
全7回に分けて配信する。
2018年初に発生したコインチェック事件など、サイバー空間でのビジネスが伸びる一方で、必然的に増えるサイバー犯罪。
様々な法人や行政にデジタル世界でのセキュリティを提供し続けてきた、株式会社テリロジーの宮村信男取締役に、サイバーセキュリティの今をうかがった。
■サイバーセキュリティを提供していく中で、外部からの接続を許容するか隔絶するかの考え方がありますが、これから許容と隔絶はどのように進むとお考えですか?
ネットワークに接続されていないことを私たちは「エアギャップ」、つまり間には空気しかないからエアギャップというのですが、セキュリティを優先して「エアギャップ」を選択するという考え方もあります。
この点については各業界、それぞれの事業者が置かれている競争環境が方向性を決めていくと思います。
各企業は世の中のニーズに応えようと熾烈な競争を展開している訳です。
顧客ニーズがより高い利便性を求めるのであれば、IoTのような技術を駆使した新たなサービスの需要が高まっていくでしょう。
そうなれば否応なしにすべてが接続される世界になるのは間違いありません。
たとえば自動車産業においては新興のテスラモーターズはITの活用、ネットとの融合に積極的です。
テスラがネットワーク化されたインフラを前提に様々な新しい利便性の高いサービスを展開し、そしてそれが消費者に受け入れられるのであれば、結局他社も追随するのではないでしょうか。
それぞれの会社ごとに考えはあるでしょうが、最終的には業界のリーディングカンパニー、あるいは既存勢力を駆逐する新興勢力が方向性を定めるのだと思います。
つまり「外部からの接続を許容するか隔絶するか」についてはセキュリティ技術の観点で決まるのではなく、世の中の流れが決めていくということです。
そして今の状況を見る限り、隔絶を選択することは限りなく難しい。
なお「エアギャップ」の安全性ですが、物理的に離れていても内部犯罪があれば情報は簡単に漏れてしまいますし、残念ながら世の中には会社に不満を持っている人が多数いますので、物理的に切れているから安全と単純に言い切れるものではありません。
人間系の問題こそが本質的な課題であり、セキュリティを技術の面だけで語っても足りないと思います。
攻撃してくる人も人間ですし、守る側も人間ですから、そもそも人間に対する洞察といったものが、これからのセキュリティ対策では重要と考えています。
■セキュリティ対策へのAIの影響はどのように出てくるのでしょうか?
セキュリティ業界としては、今後のテーマとして脅威情報とAIが重要になるということは、ここ数年来ずっといわれてきています。
AIがセキュリティ業界に与える影響はいろいろと考えられますが、現実的なところでは、人の判断を支援することにAIを使うのが現実的かと思います。
全てがAIで出来てしまうというのは少し行き過ぎた議論でしょう。
私たちが日々入手する様々な情報はもう人間が処理できる量をはるかに超えており、人間がすべてを見るということは不可能なのですが、一方で人間が最終的にジャッジをするということにはやはり価値があって、そのジャッジを正しいものとするためにいかに事前に情報量を絞り込むことこそが重要です。
たとえば1000の情報があって、そこに様々な相関関係があって、1000×1000のケースを見るとなると、人間ではもう無理だと思います。
そういった部分は AIに任せて、ある程度学習したAIがフィルタリングしてくれた情報を人間が見て、対処するようになれば、現時点では理想的な形ではないでしょうか。
AIがセキュリティ技術に与える影響は大きなものがあると思いますが、おそらくですが、攻撃者側もAIを活用してきます。
結局は同じ武器で撃ち合うことになるので、キリがない。
最後はその技術を用いる人間が大切で、その訓練が重要になってきます。
(つづく~テリロジー社 宮村信男取締役インタビューvol.7日本のセキュリティ対策に必要なこと【フィスコ 株・企業報】)~)
【宮村信男Profile】
2002年に米国南カリフォルニア大学にてMBA取得。
2004~2007年、シスコシステムズ合同会社インダストリーソリューションマネージャー。
米国本社直轄のプロジェクトとして、製造業の工場ネットワークシステムのIP化を推進。
2007年より株式会社テリロジーにて、自社開発製品の立ち上げ及び海外市場の開拓や、証券取引所、外資系証券会社向けHFTアルゴリズムトレーディングモニタリングビジネスのアジア展開などを手がけている。
また、2008年6月には、株式会社テリロジーの取締役に就任する。
2016年からは、サイバースレットインテリジェンスビジネスの立ち上げ・展開に携わるほか、ネットワークインフラ構築事業からサイバーセキュリティ対策への事業ポートフォリオの転換を推進。
2017年には、株式会社テリロジー取締役執行役員副社長に就任し、2018年4月からは、株式会社テリロジーワークス代表取締役社長兼任となる。
全7回に分けて配信する。
2018年初に発生したコインチェック事件など、サイバー空間でのビジネスが伸びる一方で、必然的に増えるサイバー犯罪。
様々な法人や行政にデジタル世界でのセキュリティを提供し続けてきた、株式会社テリロジーの宮村信男取締役に、サイバーセキュリティの今をうかがった。
■サイバーセキュリティを提供していく中で、外部からの接続を許容するか隔絶するかの考え方がありますが、これから許容と隔絶はどのように進むとお考えですか?
ネットワークに接続されていないことを私たちは「エアギャップ」、つまり間には空気しかないからエアギャップというのですが、セキュリティを優先して「エアギャップ」を選択するという考え方もあります。
この点については各業界、それぞれの事業者が置かれている競争環境が方向性を決めていくと思います。
各企業は世の中のニーズに応えようと熾烈な競争を展開している訳です。
顧客ニーズがより高い利便性を求めるのであれば、IoTのような技術を駆使した新たなサービスの需要が高まっていくでしょう。
そうなれば否応なしにすべてが接続される世界になるのは間違いありません。
たとえば自動車産業においては新興のテスラモーターズはITの活用、ネットとの融合に積極的です。
テスラがネットワーク化されたインフラを前提に様々な新しい利便性の高いサービスを展開し、そしてそれが消費者に受け入れられるのであれば、結局他社も追随するのではないでしょうか。
それぞれの会社ごとに考えはあるでしょうが、最終的には業界のリーディングカンパニー、あるいは既存勢力を駆逐する新興勢力が方向性を定めるのだと思います。
つまり「外部からの接続を許容するか隔絶するか」についてはセキュリティ技術の観点で決まるのではなく、世の中の流れが決めていくということです。
そして今の状況を見る限り、隔絶を選択することは限りなく難しい。
なお「エアギャップ」の安全性ですが、物理的に離れていても内部犯罪があれば情報は簡単に漏れてしまいますし、残念ながら世の中には会社に不満を持っている人が多数いますので、物理的に切れているから安全と単純に言い切れるものではありません。
人間系の問題こそが本質的な課題であり、セキュリティを技術の面だけで語っても足りないと思います。
攻撃してくる人も人間ですし、守る側も人間ですから、そもそも人間に対する洞察といったものが、これからのセキュリティ対策では重要と考えています。
■セキュリティ対策へのAIの影響はどのように出てくるのでしょうか?
セキュリティ業界としては、今後のテーマとして脅威情報とAIが重要になるということは、ここ数年来ずっといわれてきています。
AIがセキュリティ業界に与える影響はいろいろと考えられますが、現実的なところでは、人の判断を支援することにAIを使うのが現実的かと思います。
全てがAIで出来てしまうというのは少し行き過ぎた議論でしょう。
私たちが日々入手する様々な情報はもう人間が処理できる量をはるかに超えており、人間がすべてを見るということは不可能なのですが、一方で人間が最終的にジャッジをするということにはやはり価値があって、そのジャッジを正しいものとするためにいかに事前に情報量を絞り込むことこそが重要です。
たとえば1000の情報があって、そこに様々な相関関係があって、1000×1000のケースを見るとなると、人間ではもう無理だと思います。
そういった部分は AIに任せて、ある程度学習したAIがフィルタリングしてくれた情報を人間が見て、対処するようになれば、現時点では理想的な形ではないでしょうか。
AIがセキュリティ技術に与える影響は大きなものがあると思いますが、おそらくですが、攻撃者側もAIを活用してきます。
結局は同じ武器で撃ち合うことになるので、キリがない。
最後はその技術を用いる人間が大切で、その訓練が重要になってきます。
(つづく~テリロジー社 宮村信男取締役インタビューvol.7日本のセキュリティ対策に必要なこと【フィスコ 株・企業報】)~)
【宮村信男Profile】
2002年に米国南カリフォルニア大学にてMBA取得。
2004~2007年、シスコシステムズ合同会社インダストリーソリューションマネージャー。
米国本社直轄のプロジェクトとして、製造業の工場ネットワークシステムのIP化を推進。
2007年より株式会社テリロジーにて、自社開発製品の立ち上げ及び海外市場の開拓や、証券取引所、外資系証券会社向けHFTアルゴリズムトレーディングモニタリングビジネスのアジア展開などを手がけている。
また、2008年6月には、株式会社テリロジーの取締役に就任する。
2016年からは、サイバースレットインテリジェンスビジネスの立ち上げ・展開に携わるほか、ネットワークインフラ構築事業からサイバーセキュリティ対策への事業ポートフォリオの転換を推進。
2017年には、株式会社テリロジー取締役執行役員副社長に就任し、2018年4月からは、株式会社テリロジーワークス代表取締役社長兼任となる。