[北京 25日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は25日に発表した年次金融安定報告で、金融リスクを解決し、外的な衝撃が引き起こす「異常な」市場変動に起因するリスクに対応する必要があるとの見解を示した。
人民銀は、金融市場が世界的な通商を巡る状況、および世界的な流動性を巡る先行き不透明性に極めて敏感になっているとし、影響が部門を超えて波及しないよう、株式、債券、外為市場に対するリアルタイムの監督を強化する方針を示した。
その上で、債券のデフォルト(不履行)が継続する恐れがあるとし、こうしたデフォルトがシステミックなリスクに発展しないよう対応する必要があると指摘。証券市場における規制違反に対する罰則を厳格化する方針も示した。
中国の習近平国家主席は今年1月、甚大な影響をもたらす想定外の事態を意味する「ブラックスワン(黒い白鳥)」に警戒するとともに、顕著であるにもかかわらず看過されているリスクを指す「灰色のサイ」を回避する必要があるとの認識を表明。人民銀は、政府がこうしたリスクに対する日々の監督のほか、リスクアセスメントを強化し、経済に対する下向き圧力が増大する中、危機管理計画を策定したとした。
人民銀は家計債務の増大についても警告。家計債務の対国内総生産(GDP)比率は2018末時点で60.4%に上昇したとし、一部地域、および低所得層に対するリスクになっていると指摘した。
このほか、穏健な金融政策と積極的な財政政策の維持を表明。将来的な政策については、景気支援に向け信用の供給を増大させると同時に、経済成長とリスク回避の微妙なバランスを取っていく方針を示した。
人民銀は、全体的には「金融リスクは緩やかに低減している」としながらも、「リスクは過去数年間に急速に増大したため、多くのリスクが残存している」と指摘。短期的な潜在リスクの解消は困難との見方を示した。
人民銀は銀行部門に関する年次見直し(18年末時点)で、中国の金融機関4379社のうち13.5%を「高リスク」に指定。この大部分が農村部の金融機関、もしくは中小規模の金融機関だった。
中国銀行 (SS:601988)、中国農業銀行 (SS:601288)、中国工商銀行(ICBC) (SS:601398)、 中国建設銀行 (SS:601939)の大手4行については、総損失吸収力(TLAC)基準を満たすために比較的大きな圧力にさらされているとの見解を示し、基準達成の支援に向け他の政府機関と調整を行っていく方針を示した。