
基太村真司
[東京 28日 ロイター] - ドル/円
<ドル/円の予想変動率、再び過去最低>
27日海外市場の取引で、ドルは一時109.61円まで上昇。半年ぶり高値をつけた。米経済指標の好調ぶりを受けて米金利が上昇し、ドルを押し上げたほか、それを好感した株高が円の売り圧力につながった。
しかし、半年ぶり高値更新による高揚感は、市場にほとんどない。年初来の値幅は104.10─112.40円と上下わずか8.30円。変動相場制移行後に初めて10円を割り込んだ昨年を、さらに下回っているためだ。
ドルが直近高値を更新するのと同時に、通貨オプション市場ではドル/円の予想変動率(インプライド・ボラティリティー)3カ月物が4月の水準を下抜け、過去最低水準へ到達した。参加者の多くが「どうせドル/円はレンジ」(FX会社幹部)と、半年ぶり高値を冷ややかな目で見ていることが分かる。
<ドルは堅調でもドル/円が動かぬ理由>
世界的な低金利で主要通貨の値動きが鈍っているとはいえ、ドル/円の不動ぶりは突出している。G7通貨とスイスフラン、アジアで人気の豪ドルとNZドル、欧州のノルウェークローネ、スウェーデンクローナ、デンマーククローネを含めた10通貨の年初来対ドル変動率は、最も大きいのがスウェーデンクローナのマイナス7.5%。最も小さいのが円で、ほぼゼロ%にとどまる。
ドルそのものは堅調だ。10年物国債金利がギリシャも上回る1.7%台という「高金利通貨」として世界から資金を集め、主要通貨に対する総合的なドルの値動きを示すドル指数 (DXY)は現在、年初来で2%程度上昇している。
その堅調なドルに引けを取らないほど円が上昇しているために、ドル/円という通貨ペアが動かなくなっているのが現状だ。
円が買われているのは、リスクオフの買いだけではない。例えばドルの独歩高が進む際は、円より流動性の高いユーロや英ポンドなどへ売りが集中する。ドル高とユーロ安が値動きを主導することになり、ユーロ/ドルとユーロ/円がともに下落。結果的にドル高でもドル/円は横ばいが続く、という仕組みもある。
<キャリー取引、調達通貨はユーロに>
市場でもう1つ、ドル/円の値動きが鈍い一因として話題となっているのは、キャリー取引に使われる調達通貨としての円の需要が減退していることだ。
各国の金融緩和でマネーがあふれるグローバル市場では、株や債券などいずれの市場でもボラティリティーが低下している。低金利で低変動率となれば、投資家の選択肢は低金利通貨で資金を調達、少しでも金利の高い通貨で一定期間保有し、値幅取りより金利収入を狙う、キャリー取引に傾きがちとなる。
長らく低金利政策を続けてきた日本円はこれまで、調達通貨の代表格だった。「グレート・モデレーション」と呼ばれたリーマン・ショック発生前の2007年、10年金利が7%近かった豪ドルが対円 (AUDJPY=)で100円を超えていたのは、その典型だ。
しかし、世界的な低金利は、その状況に変化を及ぼしている。低金利が当面続くこと、いつでも持ち高を解消できる高い流動性、突発的な政策変更リスクが小さいことなど、調達通貨に必要な条件を備える候補が、他にも出てきたためだ。
その筆頭がユーロ。欧州中央銀行(ECB)は9月に利下げや量的緩和(QE)の再開など、包括的な追加金融緩和策の導入を決定した。新総裁に就任したラガルド氏も「金融政策は引き続き経済を支援する」と明言するなど、継続的な低金利政策を前面に掲げている。
結果として市場では「海外投資家がキャリー取引を試みる際、あまり馴染みのない日本円より、もし使えるならと身近なユーロを調達する機会が増えてきた」(外銀幹部)という。ユーロの総合的な値動きを示すユーロ指数 (=EUR)は、2年半ぶり水準へ下落している。
JPモルガン・チェース銀行の市場調査本部長、佐々木融氏は「もともとドルも円も広義の調達通貨だったが、2000年を過ぎた頃から、円金利の極端な低さに注目が集まって円の売買が活発となり、ドルを上回る動きを見せることが多くなった」と振り返る。そのうえで「ECBがマイナス金利を採用した16年以降、短期的なキャリートレードの調達通貨は、円よりユーロの方が適格となった」と指摘。円相場の振幅を抑制していると解説している。
(編集:青山敦子)
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