[東京 4日 ロイター] - 金融庁の中島淳一長官は4日、ロイターのインタビューに応じ、グリーンボンドなどESG関連債の客観性を担保するための認証制度について、国際的に通用する水準を目指して構築する方針を表明した。地方銀行の経営統合については各行の経営判断とする一方、経営基盤強化に向けて時間軸を持って取り組むべきだと述べた。
中島氏は企画市場局長、総合政策局長を経て今年7月に金融庁長官に就任した。デジタル通貨のうち、国際的に規制論が高まっているステーブルコイン(既存の通貨の裏付けがある仮想通貨)については、マネーロンダリング(資金洗浄)対策や利用者保護などの観点から、国内規制のあり方を検討していくと述べた。ブロックチェーン上で発行され、一部で価格が高騰している非代替性トークン(NFT)については、デジタル通貨とは距離があると話し、現時点で金融規制にはなじまないとの考えを示した。
<ESG関連債の認証制度、重点課題に>
金融庁の有識者会議は今年6月の報告書で、ESG関連債の適格性を客観的に認証する枠組みの構築を提案した。中島長官はインタビューで、こうした債券の発行時に日本と欧州連合(EU)双方の評価機関の認証を取得するケースがスタンダードになっている現状に対し「日本である程度認証することによって、機関投資家などが投資をしていく流れにしていきたい」と語り、認証制度の構築を7月に始まった新事務年度の重点課題の1つに据えると話した。
ESG関連投信については「顧客保護の観点から、投資銘柄の選定基準も含めて丁寧に説明することが必要だ」と指摘。金融庁としては幅広く調査・分析を行い、資産運用会社、販売会社に対するモニタリングを進めていくと述べた。
<地銀の経営基盤強化、「時間軸を持って」>
人口減少や低金利の持続で、地方銀行の収益環境は厳しさを増している。政府・日銀は昨年来、地方銀行の経営統合を後押しする多様な制度を打ち出したほか、金融庁は業務範囲や出資規制を見直した。中島長官は「金融機関の合併統合については、あくまで個々の金融機関の経営判断に属する」とする一方、「地域金融機関は必要に応じて様々な施策を活用しながら、時間軸をもってそれぞれに必要な経営基盤強化を着実に進めていくべきだ」と話した。
<NFT、金融規制になじまず>
中島長官は暗号資産の制度作りに関わってきた。ステーブルコインについて、7月に設置したデジタル・分散型金融に関する研究会で議論されるとの見通しを示し、国内規制に当たっては「マネロン対策や国際的な要請、利用者利便、イノベーションと利用者保護のバランスといった観点で検討していく」と述べた。
NFTについては、デジタルアート作品やプロスポーツ選手の写真などがブロックチェーン上でやり取りされている現状を踏まえると「デジタル通貨とは少なくとも今の時点では距離がある」と述べた。
*内容を追加しました。