[北京 5日 ロイター] - 中国の全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が5日、北京で開幕した。李克強首相は政治活動報告を行い、2022年の国内総生産(GDP)成長率目標について、昨年を下回る5.5%前後に設定すると述べた。
世界第2位の中国経済は昨年に8.1%成長し、6%以上としていた政府目標を上回った。
しかし経済は減速し始め、中国人民銀行(中央銀行)は利下げを開始、地方政府はインフラ投資を加速し、財政省はさらに減税する方針を示している。
新型コロナウイルスの流行が断続的に起こっており、今年の全人代の会期は、これまでで最も短い6日半となる予定。
李首相は「変化する国内外の情勢を包括的に分析した結果、わが国は今年さらに多くのリスクと試練に直面するとみられ、それを克服する取り組みを続けていかなくてはならない」とし「今年は経済的安定を最優先事項とし、安定を確保しつつ前進を図る必要がある」と述べた。
「世界経済は回復のけん引役を欠き、コモディティー(商品)価格は高止まりし振れやすい。これら全てが外部環境をますます不安定、深刻、不確実にしている」と指摘した。
活動報告は穀物など主要農産品の供給を確実にすると表明したが、唐仁健農業相は国内の小麦の生育が過去最悪の状況になる可能性があるとした。
李首相は、輸出の安定した伸びを維持するのが難しくなっており、エネルギーや原材料の供給は依然不十分と指摘した。
22年の財政赤字目標はGDP比約2.8%。昨年の目標は3.2%前後だった。
消費者物価指数(CPI)の目標は、昨年と同じ3%前後とした。
地方政府特別債の発行枠は3兆6500億元(5780億ドル)に設定し、昨年から変わらずだった。
中国銀行の主任研究委員、Zong Liang氏は中国政府が示した成長率目標について「達成はやや難しい可能性があり、達成のためにいくつかの措置が必要になる」とした。
ピンポイント・アセット・マネジメントのチーフエコノミスト、Zhiwei Zhang氏は、不動産市場低迷やコロナ禍という悪影響を打ち消すのにどの程度インフラ投資が伸びるかは不透明と述べた。「李首相は目標達成には多大な努力を要すると述べ、困難さを認めた。昨年はそのような発言はなかった」と指摘した。
政治活動報告は、昨年の電力危機を踏まえ、家庭や企業への電力供給を万全にすると表明したほか、新型コロナのワクチンや治療薬の研究開発の加速する方針を示した。
また公平な競争を確保する政策をさらに実行し、独占・寡占企業に一段と厳しい措置を取るとした。
<国外のリスク>
李首相は、広域経済圏構想「一帯一路」の下で海外に投資するのと並行して「国外のリスク」への対策をしなければならないと述べた。対外投資と協力を推進していた昨年からトーンが変化した。
ウクライナ情勢への言及はなかったが、混乱によるサプライチェーン(供給網)や物価への影響が目先の見通しに影を落とす。
ピンポイント・アセット・マネジメントのZhang氏は、李首相の慎重な姿勢は潜在的な地政学リスクを反映すると指摘。「ウクライナ危機と西側諸国のロシアへの制裁はそうしたリスクを明白にした」と述べた。
中国は、台湾問題や南シナ海での米軍の活動など安全保障面でも試練に直面する。
22年の国防予算は前年比7.1%増の1兆4500億元(2294億7000万ドル)。昨年の計画(6.8%)や今年の経済成長目標(5.5%前後)を上回った。
李首相は、台湾は中国の一部という「一つの中国」政策を堅持し、「台湾海峡を挟んだ関係の平和的発展と中国の統一を推進する」と強調。「台湾独立を求めるいかなる分離主義的な活動のほか、外国の干渉にも断固として反対する」と述べた。
<雇用>
中央財経大学金融学院(北京)の著名な経済学者、郭田勇教授はロイターの取材に対し、5%成長の達成は極めて重要と指摘。「下回れば雇用創出に影響が出かねない」と述べた。
今年の都市部雇用創出目標は少なくとも1100万人。昨年と同じだった。
劉昆財政相は、財政赤字の対GDP比率目標が引き下げられたことについて、財政の持続可能性を維持する上で重要な措置であり、将来のリスクや試練のために政策発動余地を温存するのに役立つと述べた。