[モスクワ 10日 ロイター] - ロシア中央銀行は10日、政策金利を11%から9.5%に150ベーシスポイント(bp)引き下げ、ウクライナ侵攻前の水準に戻した。インフレ率が約20年ぶりの高水準から鈍化し、マイナス成長が視野に入っていることから、引き続き利下げ余地を探る方針を示した。
中銀は、ロシアのウクライナ侵攻の余波で、政策金利を9.5%から20%に引き上げたが、その後3回にわたって300bpの利下げを実施。直近の利下げは約2週間前の5月26日だった。
ロイター調査によると、今回の利下げ幅の市場予想は平均100bpだった。
中銀は声明で「今後の会合で主要政策金利引き下げの必要性について検討する」と表明した。
ナビウリナ中銀総裁は「ルーブル高のほか、インフレ期待の低下などを反映し、インフレ率は低下している。これにより、今回の追加利下げが可能になった」と指摘。利下げ幅を100bpとするか、150bpとするかを中心に議論されたと明らかにした。
その上で、中銀はスタグフレーションのリスクを回避すると表明。インフレ圧力のほか、輸入の減少や西側諸国の制裁措置を巡る不確実性など、広範なリスクが存在しているとしながらも、「制裁の影響は懸念されたほど深刻ではない」とし、ロシアが制裁措置の影響を完全に受けたというのは尚早との考えを示した。
今回の利下げで政策金利は年間インフレ率を大幅に下回った。中銀によると、6月3日時点のインフレ率は17.0%だった。
中銀はインフレ率が2024年に目標の4%に低下することを期待すると表明している。
中銀は今年の消費者物価(CPI)上昇率の予想を14─17%に修正。従来予想は18─23%だった。「現在のインフレ率は中銀の4月の予想をかなり下回っている」とした。
第2・四半期の経済活動の落ち込みが予想ほどではないかったとも指摘。通年のマイナス成長幅は4月時点の見通しほどではない可能性があるとした。
金利の発表を受けてルーブルは上げ幅を拡大し、1ドル=56.25ルーブルと、5月25日以来の高値を付けた。発表前は57.70ルーブル付近。3月には121.53ルーブルと、過去最安値を付けていた。
ルネッサンス・キャピタルのチーフエコノミスト、ソフィア・ドネツ氏は、声明の文言を踏まえると、今後の利下げはより緩やかで慎重なペースになる可能性が高いと指摘。年末までに8%へ引き下げられると予想した。
アルファ・キャピタルのポートフォリオマネージャー、エフゲーニー・ゾルニスト氏は、金利が侵攻前の水準に戻されたことには象徴的な意味合いがあると指摘。今後は利下げペースは鈍化するとし、主要金利は年末までに8─9%になるとの見方を示した。
シナラ・インベストメントバンクのチーフエコノミスト、セルゲイ・コニギン氏は「追加利下げ余地は限られている」とし、年末時点の主要金利は8%と予想した。
中銀の次回決定会合は7月22日。