[東京 24日 ロイター] - 日銀は27―28日の金融政策決定会合で、異次元の金融緩和の継続を決める見通しだ。決定会合で議論する「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の予想をプラス2%台後半に引き上げるものの、23年度は2%に届かない公算。急速に進む円安が実体経済に与える影響を注視する姿勢を示しつつ、コロナ禍からの回復途上にある経済を金融緩和で下支えする方針を改めて示すとみられる。
<経済は回復基調、円安の影響を注視>
日本経済は、供給制約の緩和や消費の回復などで、持ち直しの動きを続けている。
足元では全国旅行支援が始まり、個人消費はサービス消費を中心に回復が見込まれる。9月の日銀短観では全規模・全産業の22年度の設備投資計画が前年度比16.4%増で、9月調査としては1983年以降で最高となるなど、設備投資は堅調。歴史的な円安は、大企業・製造業を中心に企業収益の押し上げ要因になる。
一方、外為市場ではドル高・円安が続き、20日には1ドル=150円台に上昇。翌21日には152円に迫り、政府・日銀は21日の海外市場で円買い介入を実施した。黒田東彦総裁も国会などで、為替の急激かつ一方的な動きは日本経済にとって好ましくないと繰り返し強調している。
日銀は景気が足元で持ち直しており、先行きも回復していくとの見通しを維持するとみられる。ただ、円安が物価高に拍車を掛ければ実質賃金の下押しを通じて個人消費を圧迫するほか、急速な円安進行は企業の設備投資を含む事業計画の不透明感を高めるリスクがあり、影響を注視していく。黒田総裁は24日の参院予算委員会で、実質賃金が低下しているのは「極めて好ましくない状況」と述べ、賃金上昇を伴う形で2%の物価安定目標が達成されるよう最大限の努力をしていきたいと述べている。
<海外経済の下振れリスク>
展望リポートでは、実質国内総生産(GDP)の見通しについて、前回示された22年度の前年度比2.4%増、23年度の2.0%増からともに小幅に下方修正の見通し。世界経済の減速を反映する。
日銀はこれまでも、海外経済の先行きについて不確実性が高いとみてきたが、安達誠司審議委員は19日、富山県金融経済懇談会の挨拶で、米国・欧州・中国といった海外経済の下振れリスクを強調、「金融政策の修正は時期尚早」と述べた。インフレ圧力の鎮静化に向け、米連邦準備理事会(FRB)は急ピッチの利上げを行っている。米経済の動向によっては、日銀が賃金動向を見極める上で重視している来年の春闘にも影響しかねない。日銀は引き続き、海外経済の下振れリスクに警戒感を示すとみられる。
海外金利の上昇圧力が根強い中、日銀は10年物金利0.25%での連続指し値オペを継続するとみられる。現時点で許容上限を引き上げれば、幅広い金利上昇を招き、企業の設備投資や個人の住宅投資など広範にネガティブな影響が及ぶとの声が日銀では多い。
(和田崇彦、木原麗花 編集:石田仁志)