[2日 ロイター] - 国際通貨基金(IMF)は2日、今年のアジアの経済成長率予想を上方修正した。中国の回復がアジアの成長を支える。ただ、根強いインフレや米欧銀行セクターの問題を受けた世界市場の不安定化をリスク要因に挙げた。
今年のアジアの成長率は4.6%とし、昨年10月の予想から0.3%ポイント引き上げた。2022年は3.8%だった。
IMFはアジア太平洋地域の経済見通しで、中国経済の再開がアジアにとって極めて重要になると指摘。アジアへの影響は、投資よりも消費やサービス部門の需要が中心になるとの見方を示した。
「アジア太平洋は今年、世界の主要地域で最もダイナミックになるだろう。中国とインドの明るい見通しが圧倒的なけん引役となる」と指摘。
「世界の他の地域と同様、今年のアジアでは、引き続き内需が最大の成長のけん引役になる見通しだ」と述べた。
中国とインドの成長率はそれぞれ5.2%、5.9%となる見通し。他のアジア地域の成長も今年底入れが見込まれている。
ただ、来年のアジアの成長率予想は0.2%ポイント引き下げ4.4%とした。予想以上に粘着性の高いインフレ、世界の需要鈍化、米欧銀行部門のストレスの影響など先行きのリスク要因を挙げた。
「米欧金融部門のストレスのアジア地域への影響は、これまでのところ相対的に抑制されているが、アジアは金融状況の引き締まりや資産価格の突然の無秩序な変動に依然脆弱だ」としている。
アジアには市場のショックを回避する強力な資本・流動性バッファーがあるが、アジアの非常に負債比率の高い企業・家計部門は借り入れコストの急激な上昇に「かなり」さらされているとも指摘した。
日本と中国を除くアジアの中央銀行に対しては、インフレを抑制するため、タイトな金融政策を維持するよう要請。インフレは力強い内需などを背景に頑強に高止まりする可能性があるとしている。
「インフレを目標未満に抑制できなかった場合のコストは、緩和的な金融状況から生じるメリットを上回る可能性が高い」とし「短期的に引き締めが不十分になれば、高インフレが深く定着することを回避するため、不釣り合いなほどの追加金融引き締めが後日必要になるとみられ、より大幅な収縮の可能性が高まる」としている。
IMFは中国がアジア経済の重要なけん引役になるが、同国の不動産部門がリスク要因であり、同部門の均一な回復を促すため政策対応が必要だと指摘。
会見したIMFアジア太平洋局のトーマス・ヘルブリング副局長は、中国政府による不動産デベロッパーの資金調達規制緩和について、主に大手が恩恵を受けたが、中小デベロッパーが事業を展開している地域ではまだ回復の兆しが見られないと指摘。依然として問題を抱えている体力の弱いデベロッパーの再建を積極的に支援すべきだと述べた。