[フランクフルト 29日 ロイター] - 欧州連合(EU)統計局が29日発表した9月のユーロ圏消費者物価指数(HICP)上昇率(速報値)は前年同月比4.3%と、8月の5.2%から低下し、2021年10月以来の低水準となった。
欧州中央銀行(ECB)による利上げが物価上昇の抑制に成功していることを示唆した。
ECBが注視する食品・エネルギー・アルコール・たばこを除くインフレ率は5.3%から4.5%に低下。20年8月以来の大幅縮小となった。
全てのカテゴリーで伸びが鈍化。エネルギー価格は5カ月連続で下落した。
今回の統計を受け、ECBは十分な規模の利上げを実施したとの見方を強める可能性が高い。
S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスの欧州経済担当トップ、Diego Iscaro氏は「ベース効果がインフレ率急低下の主因だが、基調インフレ圧力も弱まっている」と指摘。
「今回の統計は、金利が現在の引き締め局面のピークに達した可能性が高いとの見方を強める内容だ」と述べた。
急激な利上げを受けて、一部の指標はユーロ圏が景気後退に陥る可能性を示唆している。
ドイツ連邦統計庁が29日発表した8月の小売売上高指数は前月比1.2%低下。9月の独失業者数(季節調整済み)は前月比1万人増だった。
ECBは現時点では、インフレ率低下に伴う実質賃金増加などを理由に来年の景気回復予想を堅持している。
ただ、ナティクシスのエコノミスト、Dirk Schumacher氏によると、ECBの見通しは、中国経済など外部環境がこれ以上大幅に悪化せず、投資が底堅く推移することを前提にしている。
同氏は「過去の事例と比べてはるかに急激な利上げが行われており、過去のケースをモデルにすると誤りを招く恐れがある」と述べた。