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アングル:英スナク政権の支持率低迷、経済浮揚は「天の恵み」か

発行済 2024-02-10 08:08
更新済 2024-02-10 08:09
© Reuters.  2月6日、物価上昇率の鈍化、今後の利下げ見通し、そして英経済がある程度前向きの勢いを得つつあるという兆し──。これらは10月か11月に予想される総選挙を前に、支持率低迷

Andy Bruce

[マンチェスター(英イングランド) 6日 ロイター] - 物価上昇率の鈍化、今後の利下げ見通し、そして英経済がある程度前向きの勢いを得つつあるという兆し──。これらは10月か11月に予想される総選挙を前に、支持率低迷に苦しむリシ・スナク首相にとっては「天の恵み」のように思われる。しかし歴史をひも解けば、与党が形勢をばん回できる余地はほとんどないことが分かる。

イングランド銀行(BOE、英中央銀行)は先週、最近まで先進国で最も高かった英国の物価上昇率が今年半ばまでに目標とする2%に落ち着くとの見通しを示した。以前の想定よりも目標到達時期がずっと早まることになる。BOEは、借り入れコストも下がり始めると示唆した。

このBOEの予想が正しければ、インフレ押し下げを実績にして選挙に臨みたかったスナク氏には追い風が吹く。

各種企業調査で成長速度が欧州主要国を上回っている様子がうかがえることも、英経済の先行きが明るくなりつつある表れだ。

5日公表のデータによると、昨年11月まで3カ月間の失業率は3.9%に低下。4月に最低賃金が10%引き上げられ、家庭の光熱費が下がることも、多くの世帯にとって助けになるだろう。

ただし過去の事例を踏まえると、スナク首相にとっての問題は、経済の明るいニュースをもってしても足元の情勢で野党労働党の圧倒的な優位を覆せそうにないという点にある。現在の支持率は、労働党がスナク氏率いる与党保守党を約20ポイントもリードしている。

世論調査会社ユーガブの元社長で、今も調査分析を手がけるピーター・ケルナー氏は「私の感触では、経済状況がほぼどうなろうとも、保守党が有権者の支持を大きく獲得するのは非常に難しい」と話す。

スナク政権が期待するのは、同じ保守党のメージャー政権が2桁の物価上昇率と1990─91年の深刻な景気後退を経験しながら、92年の総選挙で予想外の勝利を収めた展開の再現だ。

当時のジョン・メージャー首相は有権者に対して、政権交代で景気回復を危険にさらさないのが得策だと訴えており、スナク氏も30年後にこの戦略を踏襲している。

それでも今の労働党のキア・スターマー党首は、経済政策の大幅な修正は提示しておらず、スナク氏としては有権者に警鐘を鳴らしにくい。

ケルナー氏は、現状を過去と照らし合わせるなら、トニー・ブレア氏の下で労働党が大勝した97年の方がふさわしいのではないかとみている。

英国はメージャー政権の下で96年から97年序盤まで平均成長率約1%(今なら考えられないほどの急成長)を記録し、消費者物価指数(CPI)の前年比上昇率は選挙の時期までに2%を下回った。

ところが保守党は、20世紀初頭以来の大敗北を喫してしまった。

メージャー氏は首相退任時の演説で、労働党には「第一次大戦以降の新政権にとってこれまでで最も愛情に満ちた経済統計」が引き継がれると述べ、好調な経済をもたらしながら政権を渡さなければならない口惜しさをにじませた。

70年の選挙でも、労働党のハロルド・ウィルソン首相がそれまでに経済を急速に成長させながらも負けるという例がある。

<危機の爪痕>

97年のメージャー氏と70年のウィルソン氏に共通するのは、いずれも歴史的な経済危機の局面で政治のかじ取り役を務めたことだ。

92年9月の「ブラックウェンズデー」で英国は、投機筋の売り攻勢から通貨ポンドを防衛できず、欧州為替相場メカニズム(ERM)からの離脱を余儀なくされ、ウィルソン政権は67年11月に投機売りに見舞われたポンドの切り下げに踏み切った。

どちらの出来事も最終的には英経済にとってプラスに働いたとはいえ、事態が進む過程で有権者は経済的な秩序が失われた感覚に襲われたと言える。

より最近の危機と呼べるのは、2022年9月に当時のリズ・トラス首相が打ち出したいわゆる「ミニ予算」を巡る混乱だ。物価高が進行しているにもかかわらず、財源の裏付けなしの減税で経済を上向かせようとした措置が裏目に出て、債券売りに伴う住宅ローン金利の高騰につながった。

トラス氏から首相の座を引き継いだスナク氏は、自らの政権を経済の安定と財政規律確保の推進役と印象付けようとしてきたが、世論調査では保守党の経済政策運営能力に関する評価は改善していない。

労働党の97年の大勝前後にアドバイザーだったレスリー・バターフィールド氏は、スナク氏とジェレミー・ハント財務相は経済安定化に成功したと認め、景気見通しがある程度持ち直している点は保守党側には好材料になると指摘した。

一方で「しかし依然として過去のつけが影を落としている。(これまでの)金利(上昇)は国民を痛めつけ、インフレは致命的な存在になってきた」と話す。

ハント氏は昨年11月に社会保障費負担の軽減を表明したのに続き、3月6日の春期財政報告では追加的な減税を提案するだろう。これは97年の選挙前と同じ路線だが、結局国民の傷をいやす効果は期待しにくい。

ケルナー氏は「今回は97年の選挙前との類似性が高い。つまり不安や不快な気持ちを解き放つ出来事の記憶が存在し、保守党はそこから正しく立ち直ることは決してできない」と述べた。

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