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米中通貨戦争の行方【フィスコ・コラム】

発行済 2019-08-18 08:58
更新済 2019-08-18 09:00
米中通貨戦争の行方【フィスコ・コラム】

米中貿易摩擦は通貨戦争という新たな局面に入り、仁義なき戦いの様相です。

アメリカのトランプ大統領は来年の再選に向け制裁の手を緩めず、中国側もそれに対抗する構図が続くでしょう。

両国の対立の激化で、円の先行きが見えなくなってきました。

トランプ大統領が対中制裁「第4弾」に言及すると、市場では夏休みムードがいっぺんに吹き飛びました。

その後、人民元の歴史的節目である1ドル=7元台に乗せる元安、さらにアメリカによる中国の「為替操作国」認定と、貿易摩擦はついに通貨戦争に発展。

ドル・円は月初から一時4円も下落し、年初来安値の104円80銭やトランプ政権発足以来の安値である104円56銭が視野に入ってきました。

もっとも、中国はアメリカが定める「為替操作国」の条件を満たしているとは言えず、制裁の発動が疑問視され、当初懸念されたほど影響は広がっていません。

また、中国人民銀行による人民元の基準値は従来に比べれば元安方向ですが、市場の予想内にとどまり、現時点で混乱は回避されています。

しかし、両国とも相手が降参するまで屈しない構えで、当面の間は予断を許す状況になく、円選好地合いが続きそうです。

この通貨戦争は、今後どのように進展するでしょうか。

トランプ大統領が中国を打ち負かそうとするのは来年の再選に向けた動きに他なりません。

さらに言えば、国内の民主党を中核とした反トランプ勢力を一掃するためでもあります。

トランプ政権の対中政策は個人的なエゴに見えますが、欧米にはびこる冷戦構造を前提とした既得権益の打破につながるなら多少は正当化されるかもしれません。

世界金融の総元締めである国際通貨金(IMF)がトランプ政権による「操作国」認定に即座に否定的な見解を示したのは、市場の混乱を抑えるというより覇権争いの一環と見た方が理解できます。

来年11月の大統領選に向け、トランプ政権は中国、あるいは反トランプ勢力に対しさらに圧力を強めるでしょう。

それに対し中国は保有する米国債の売却に踏み切らざるを得ず、両国の対立はこれからが「本番」といえます。

中国の米国債保有残高は、この数カ月間は減少傾向にあるようです。

このまま売却を加速させれば米国債は暴落し、急激なドル安・元高による中国経済へのダメージも想定されます。

その際にはリスク回避の動きで円やスイスフランが大きく買われる見通しです。

しかし、ドルに関しては安全通貨の側面もあり、逃避資金がドルにも流入すれば一方向にドル安に傾くとは限りません。

中国のこれまでの対応を見る限り、習近平国家主席の頭の中にはどうやら撤退という選択肢はなさそうです。

大統領選の時間軸を考慮しながらトランプ政権と反トランプ勢力の瀬踏みを続けるとみられます。

本来なら仲介役になりうるイギリスやドイツも、国内情勢でそれどころではないでしょう。

このまま世界がブラックホールに吸い込まれていくのであれば、円は見えない天井に向かって突き進むかもしれません。

(吉池 威)※あくまでも筆者の個人的な見解であり、弊社の見解を代表するものではありません。

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