[ニューヨーク 8日 ロイター] - ニューヨーク外為市場では、通商懸念が再燃したことを受け、ドルが安全資産の円に対して下落した。ただ、米卸売物価が大幅に低下したものの、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が講演で追加利下げを明言しなかったことで、ドルはその他の通貨に対して上昇した。
米国務省はこの日、新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧や虐待などを理由に中国政府や共産党の当局者に対するビザ発給を制限すると発表。ドルへの圧力となった。
米商務省は前日、中国の監視カメラ大手、杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン) (SZ:002415)や公安機関など28団体・企業について、ウイグル族などへの弾圧に関与しているとして事実上の禁輸リストである「エンティティー・リスト」に追加。またトランプ大統領は早期通商合意の可能性は低いと述べた。
米中は10─11日の日程で閣僚級協議を開始する予定。
シリコンバレー銀行のシニア外為トレーダー、ミン・タン氏は、こうした動きについて「いかなる交渉にも良い兆候ではない」とし、市場では警戒の高まりからややリスクオフになったと指摘した。
終盤の取引で、ドルは対円で0.18%安の107.09円。
一方、パウエルFRB議長が追加利下げについて明言しなかったことを受け、主要6通貨に対するドル指数は0.15%上昇した。
キャピタル・エコノミクスの主任米国エコノミスト、ポール・アシュワース氏は「次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)がまだ『数週間先』だと指摘したパウエル氏の発言は、10月利下げが先物市場で織り込まれているほど確定したものではないことを示唆する」と述べた。
この日の指標では、9月の米卸売物価指数(PPI、最終需要向け財・サービス)が前月比0.3%下落し、1月以来の大幅なマイナスとなった。市場予想の0.1%上昇を下回った。前年比での伸びが約3年ぶりの低水準となったことでFRBが今月、今年3回目の利下げに踏み切る公算が大きくなった。
英ポンドは対ユーロ (EURGBP=D3)で1カ月ぶり水準に下落。英国の欧州連合(EU)離脱を巡り双方が決裂間近との報道を受けた。対ドルでは0.56%下落した。
ドル/円 NY終値 107.07/107.10
始値 106.94
高値 107.29
安値 106.82
ユーロ/ドル NY終値 1.0954/1.0958
始値 1.0986
高値 1.0992
安値 1.0942