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焦点:非公式金融網「ハワラ」、欧州密航あっせんで利用急拡大

発行済 2021-12-11 08:24
更新済 2021-12-11 08:28
© Reuters.  12月7日、欧州への移民の間で「ハワラ」と呼ばれる非公式金融決済ネットワークの利用が増え続けている。写真は11月27日、仏ダンケルクの海岸付近でキャンプするクルド移民の

[ダンケルク(フランス) 7日 ロイター] - イラク・クルド自治区出身のカイワン・フセインさん(26)はベラルーシ国境から欧州連合(EU)域内に入った後、ドイツに到着した11月23日、ワッツアップを通じて故郷の兄弟にたった一言「OK」というメッセージだけを送信した。

これはフセインさんから家族に対して、出身地のランヤにいる仲介人に預けている3500ドルを密航あっせん者に支払うのを許可する合図だった。

フセインさんはこのメッセージを発信した後、フランス北部から英国に向かう旅程の一時中断を余儀なくされた。ドイツ東部のゲルリッツで警察が身柄を拘束し、数日間移民センターに拘置されたからだ。

ただ、そのおかげでフセインさんは命拾いしたことになる。そのまま移動を続けていれば、タイミングや位置から考えると11月24日に英仏海峡で転覆した密航者のボートに乗船していたと思われるという。

11月28日朝にフランスの海岸地帯に着いたフセインさんは、ここでまた「OK」と発信し、家族に350ユーロ(約400ドル)の新たな支払いを促した。自身が寝泊まりしているダンケルク郊外の仮設収容施設のテントで翌日、明らかにした。

こうしたフセインさんの体験は、欧州移民の間で「ハワラ」と呼ばれる非公式金融決済ネットワークの利用が増え続けているという話と一致する。

この決済システムは、簡単に足がつく書類手続きがなく、密航あっせん者らは当局の監視を逃れ、国境をまたぐ資金のやり取りをせずに済む。移民希望者にとっても、多額の現金を持ち運ぶ必要がなく、詐欺や盗難のリスクも低下するメリットがある。

ハワラは、信頼できる仲介人のネットワークが銀行システム以外で決済を行う仕組みで、その起源は何世紀も前にさかのぼる。5年ほど前にはバルカン諸国経由の移民にしばしば使われてきたが、現在は欧州中部から英国を目指す人々に広く利用されていることが、ロイターがフランス北部で聞いた20人の移民希望者の話で分かった。彼らは全員がハワラを使ったと語り、これが欧州への密航代金支払い手段の主流になったとみている。

フセインさんがフランス到着時に所持していた現金は、たった50ユーロ(57ドル)だけ。「(もっと多く)現金を持っていたなら、警察に没収されたかもしれない」と口にした。ハワラを使うことで、自らが到着を知らせて家族に密航あっせん者宛て支払いを許可するまでは、ランヤの仲介人が責任をもって資金を預かり続けていた。フセインさんによると、もし、目的地にたどり着けなければ、仲介人から家族にお金が戻ってくるので、一定の保証が提供されるという。

今後、フセインさんは最終目的地の英国に着いた時点で、同じような方法であっせん者側に代金を支払う計画だ。複数の移民に取材したところでは、英仏海峡をボートで渡る「費用」は、最大で約3500ユーロが現在の相場だという。

ジュネーブに拠点を置く民間調査団体、グローバル・イニシアチブ・アゲンスト・トランスナショナル・オーガナイズド・クライムのチューズデー・レイタノ副所長は、影の銀行(シャドーバンキング)は何であれ、当局が金融取引を通じて密航あっせん者の行動を追跡することを不可能にすると指摘する。

以前なら、密航組織は通常、フランス国内で現金のやり取りをしていた。レイタノ氏は「金融面の捜査は(密航に関する)捜査で柱の1つだが、ハワラはその柱を奪い取っている」と嘆いた。

欧州刑事警察機構(ユーロポール)の広報担当者は、ハワラ自体は非合法でないものの、犯罪集団がマネーロンダリング(資金洗浄)に悪用しかねないと懸念を示した。欧州司法機構(ユーロジャスト)で密航や密輸の取り締まりに従事しているフィリッポ・スピエツィア氏は、ハワラが英仏海峡などの密航の代金決済手段として使われる事例が非常に多いと述べた。

レイタノ氏によると、密航の金銭取引の仲介者を訴追できるケースは非常にまれで、司法当局は訴追にこぎつけるために、資金のやり取りが違法行為に利用されたと仲介人が知っていたことを立証しなければならない。

<唯一の選択肢>

英国放送協会(BBC)の集計に基づくと、今年これまでにフランスから海を渡って英国に入ってきた移民は、前年の約3倍に膨れ上がっている。英内務省はこの数字についてコメントを拒否したが、英政府の発表では今年に入って2万人余りの入国を阻止したという。

一部の英国移民希望者は、最近になってようやく密航代金の決済手段をハワラに切り替えたもようだ。フセインさんと同じ収容施設で暮らし、やはりイラク・クルド人自治区出身のダワン・マフムードさん(30)は3カ月前、フランスに初めてやってきた際に、密航あっせん者に2000ドル余りをだまし取られた。マフムードさんはロイターに、当時前金で支払ったと明かした。それ以降、二度と同じ目にあわないよう、故郷の仲介人を利用し、英国に無事着いた後で家族に支払いを指示する形にしているという。

ハワラを通じた決済は、ある場所にいる仲介人がお金を預かった上で、違う都市や国にいる別の仲介人に連絡してこれまでに受け取った金額を報告することで機能する。実際には現金が国境間を行き交わないケースが多く、一種の信用制度に基づいている。仲介人はサービスの手数料を請求するが、通常の国際送金などより費用が安いとみなされている。

フセインさんの場合、故郷を離れたのは政治腐敗と就職の難しさが理由だ。ハワラは現地で送金方法として普通に利用されていたので、移民のための当然の選択肢と受け止めた。それでも、密航あっせん者にこれほど多額の支払いをしなければならないことには不快感を隠さない。「彼らは濡れ手にアワで多くのお金を持っていく。だが、われわれほぼ全員にとって、ほかに道はない」と語った。

(Layli Foroudi記者)

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