[東京 12日 ロイター] - 日銀が4月27―28日に開いた金融政策決定会合では、インフレ高進で利上げ局面に入った米国とは対照的に、日本の金融政策上の課題は「インフレの抑制ではなく、依然として低すぎるインフレからの脱却にある」といった指摘が出ていたことが明らかになった。外為市場で円安が急速に進む中、円安の背景には日本と欧米の景況格差もあるとして「為替レートのコントロールを目標にした政策変更は適当でない」との声も上がった。
日銀が12日、決定会合で出された主な意見を公表した。同会合では、大規模な金融緩和の現状維持を賛成多数で決めた。連続指し値オペの運用も明確化し、原則毎営業日、10年物国債金利0.25%での買い入れを実施するとした。
決定会合では、物価と賃金がともに上がる好循環を伴う物価安定目標を持続的・安定的に達成するまでは「淡々粛々と金融緩和を持続すべきだ」といった指摘が出された。この指摘をした委員は、こうした政策スタンスを誤解なく伝えるため「指し値オペの運用の明確化が有効だ」と述べた。
金融緩和の継続を巡っては「従来からある下振れリスクにロシアによるウクライナ侵攻が加わり、さらに情勢が大きく変化する中で、金融政策に変更を加えるのは適当ではない」との声も出た。
<物価高が家計を圧迫、上昇続かずとの声>
日銀が決定会合で取りまとめた「経済・物価情勢の展望」(展望リポート)では、エネルギー価格上昇を反映して2022年度の消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)の見通しがプラス1.9%に引き上げられる一方、新たに公表された24年度のコアCPIはプラス1.1%で2%には届かなかった。
会合では「消費者物価は4月から当分の間は2%程度で推移するものの、家計の予算制約の下で2%を超える上昇は持続しないとみられる」との指摘が出された。
経済の回復は新型コロナウイルス感染症の動向次第だが、今後、行動抑制の間に蓄積した「待機資金」が活用されない中で「中長期の予想インフレ率や賃金上昇率、中長期の成長期待が十分に上がらない場合、物価が下押しされるリスクもまだある」といった声も聞かれた。
見通し期間内に2%目標を達成することが困難な中、目標の位置付けや実現への道筋を整理して丁寧に説明するとともに「金融緩和がさらに長期化するもとで(緩和の)持続性がより重要となっていくことを引き続き意識していく必要がある」との意見も出ていた。
<インフレ基調きわめて低い、円安は「プラス」>
為替円安を巡っては「需給ギャップや失業率ギャップがいまだに大きく、インフレの基調がきわめて低い現状に対しては為替円安がプラスに働く」との指摘も見られた。
財務省の出席者からは「日本銀行には、政府と連携し、ウクライナ情勢や感染症の影響も踏まえ、持続可能な物価安定の実現に向け、適切な金融政策運営を期待する」との発言があった。
(和田崇彦 編集:石田仁志)